宇陀の高い屋敷にマグロを捕まえる罠をこしらえた。
マグロはこなかったけど、でかい鯨が罠にかかった。
古い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
タチソバのように身の少ないところをたくさん削ってやろう。
若い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
ヒサカキのように、実の多いところをたくさん削ってやろう。
ええい、糞くらえ。これは怒りの言葉。
ああっ、糞くらえ。これは嘲笑い。

歌い手:神武天皇の東遷軍の兵士(たぶん、久米人=大久米命(おおくめのみこと)
出 典:便利な道案内・八咫烏が登場 熊野から大和に進出する神武天皇
章立て:8.神武天皇

神武天皇が日向(現 宮崎県)から東遷を進め、長い年月かけてようやく関西地方に上陸。と思ったら、大阪あたりで敵にやられ、神武の実兄が瀕死の重傷を負うなどボロ負け。熊野方面に回ることを余儀なくされました。

熊野でもフシギ攻撃を受けるなど、苦戦しつつ、ようやく大和に抜ける目処が立った時、ある戦いで、兵士たちが歌った歌がこれです。

特に歌い手は明記されていませんが、前後の流れから見て、神武軍の中核を担っていたと思われる、側近・大久米命が率いる久米人らが歌ったものでしょう。やはり国つ神。

古い妻と新妻を比べて描写するなど、古代の大らかさが現れてはいますが、まとめ方が少し下品なところがあったりします。日の御子、神の兵士にはあまりふさわしくないような。。それもこれも、天つ神ではなく、この時すでに主力が国つ神になっていた表れなのかもしれません。

国つ神が下品、ということではありません、念のため。ただ、奔放だった、とは言えるかも(もちろん、イイ意味で)。

【一言切り取り】
神武天皇「もっと上品にしよぜっ!」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

宇陀の高臺でシギの網を張る。
わたしが待つているシギは懸からないで
思いも寄らないタカが懸かつた。
古妻が食物を乞うたら
ソバノキの實のように少しばかりを削つてやれ。
新しい妻が食物を乞うたら
イチサカキの實のように澤山に削つてやれ。
ええやつつけるぞ。ああよい氣味だ。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【関連キャラ】
大久米命 - 神武の片腕は斜に構えた万能の自信家

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