沖の鳥、鴨がたくさんいる島で、
わたしが添い寝したあなたのことは、
一生忘れないからね~
わたしが添い寝したあなたのことは、
一生忘れないからね~
歌い手:火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))
出 典:竜宮城の嫁が陸に上がって出産、その時、夫は? 山幸彦、父になる
章立て:7.海幸彦と山幸彦
妻で竜宮城の姫トヨタマが、お産のために陸に上がってきました。その時「覗かないでね」と言われながらお産所を覗いてみてびっくり仰天。なんと、トヨタマがワニの姿でお産をしていました。逃げる山幸彦。
覗かれたことに気づいたトヨタマも恥ずかしさや怒りからお産後すぐに、陸と竜宮城が行き来できないよう道を塞ぎ、竜宮城に戻ってしまいます。
しかし山幸彦のことが忘れられないトヨタマは歌を詠み、それを頼んで山幸彦に届けます。それを受け取った山幸彦が返した歌がこれです。
どちらかというと、この海幸彦と山幸彦の説話において、山幸彦とトヨタマの恋愛は、山幸彦のセリフが少ないことや、トヨタマのキャラのせいもあってか、山幸彦がトヨタマに愛を叫ぶような場面がなく、トヨタマとの結婚もあまり積極的なようには思えなかった山幸彦。
最後に肉声で、一生忘れない、という思いのたけを吐き出したものです。やはり山幸彦もトヨタマちゃんのことを愛していたのですね。山幸彦一直線だったトヨタマちゃんも報われます。
さらに、この歌は、古事記に収録されているものの中では、天つ神系のものとして、初めてのものとなります。今まですべてが国つ神系のものであり、これからもしばらく国つ神系の歌が中心に古事記には収録されています。天つ神系の歌が中心になってくるのは、はるか後代のヤマトタケルごろまで待たなければなりません。
もともと歌は、言霊を得意とする国つ神系のものだったのかもしれません。
【一言切り取り】
・山幸彦「愛した日々、忘れないぜ~」
※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。
水鳥の鴨が降り著く島で
契を結んだ私の妻は忘れられない。
世の終りまでも。
契を結んだ私の妻は忘れられない。
世の終りまでも。
・【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集
【関連キャラ】
・山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
・トヨタマ - 竜宮城の姫、神武の祖母はワニだった
【関連記事】
・八重の潮路 - 山幸彦とワニの休憩中? いや、山幸彦とトヨタマの再会では?
コメント