ええ、ええ、ええ、ええ、よく知っていますよ。
至る所にあなたが女囲っていることは。
それはそれは若草のように若く美しい
女子ばかりなのでしょうね。

でも私は女の身、夫はあなた一人です。

お家の柔らかいお布団の上で、
私の細くつややかな腕、淡雪のような白い私の乳房を、
そっと触ってください。
手をぎゅうっと握ってくださいな。
玉のような美しい私の手を絡めて、
足を延ばして、くつろいでくださいな。
おいしいお酒をお飲みくださいな。

歌い手:須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)
出 典:現地妻作りすぎて、嫁さんに絡まれるオオクニヌシ「でも、オマエが一番さ」
章立て:4.オオクニヌシ

須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)縦480px旦那・大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)がフォローのためか、「たくさん女いるけど、正妻のオマエが一番さ~」と歌ってきたことに対する返歌。

スセリは嫉妬深き妻で有名で、歌の内容も非常に拗ねてみせています。しかし、全体的にみると「カワイイ」と思えてきます。後半部分、沼河比売(ぬなかわひめ=ヌナカワ)の歌とも共通する乳房や手の絡みなどのなまめかしい表現が交わっていることで、その拗ねている姿勢が限定的、つまりツンデレ状態であることが分かるからかもしれません。

このあたりが、同じ嫉妬深き妻として有名な、後の仁徳天皇の皇后・石之日売命(いわのひめのみこと=イワノヒメ)の激烈な嫉妬狂いとの決定的な違いなのでしょう。豊かな包容力を感じさせます。それぐらいでないと、英雄オオクニヌシの正妻は務まらない、ということかもしれません。

また、古事記では、オオクニヌシがスセリをちゃんとゲットするまでの苦労譚も掲載されています。かの建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)との対決です。そのため、糟糠の妻というイメージもスセリやスセリの唯一の歌であるこの歌に、付加されているのかもしれません。

「神語り」の結末句「お語りいたすはかくのごとくに」がある歌です。

【一言切り取り】
スセリ「女だから、一人ぼっち、だよ…」
スセリ「たまには抱きしめてね…」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

ヤチホコの神樣、
わたくしの大國主樣。
あなたこそ男ですから
廻っている岬々に
廻っている埼ごとに
若草のような方をお持ちになりましよう。
わたくしは女のことですから
あなた以外に男は無く
あなた以外に夫はございません。
ふわりと垂れた織物の下で、
暖い衾の柔い下で、
白い衾のさやさやと鳴る下で、
泡雪のような若々しい胸を
コウゾの綱のような白い腕で、
そつと叩いて手をさしかわし
玉のような手を廻して
足をのばしてお休み遊ばせ。
おいしいお酒をお上り遊ばせ。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【パワースポット】
御向社 - 浮気性にご利益? スセリにあやかり気丈に振舞える女子力を

【関連キャラ】
スセリ - オオクニヌシ大好きすぎて拗ねる女神

前へ | 歌一覧 | 次へ