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古事記を彩る姫たちエントリーNO.16 髪長比売(かみながひめ=カミナガ)

仁徳天皇の妃の一人。日本書紀では髪長媛。現在では髪長姫と表記されることも。

日向にて、仁徳天皇の父・応神天皇が美少女がいると聞きつけ、都に召し出します。都に上る途中、難波で、カミナガを見た仁徳天皇が一目惚れ、応神天皇の側近・建内宿禰大臣(たけうちのすくねのおおおみ=建内宿禰)を介して、仁徳天皇は応神天皇にカミナガを譲ってくれるよう懇願します。

髪長比売(かみながひめ=カミナガ)縦500px 応神天皇は、新嘗祭の酒宴の折、仁徳天皇とカミナガを合わせ、そして歌います。

赤い頬をした少女を、手に入れちゃいな~

仁徳天皇を急かしているようです。しかし次に歌う歌は、

わが心は大変愚かだった~
今では悔しくてたまらないよ~


として、かなり悔しそうです。なぜ譲渡しちゃったんだろう~、という応神天皇の心の声が聞こえてきそうです。

仁徳天皇は、応神天皇の皇后の子で、応神天皇なき後の次の天皇ですが、応神天皇の皇太子ではありません。

皇太子は別にいた(応神天皇の妃の一人・宮主矢河枝比売(みやぬしやかわえひめ=ヤカワエヒメ)が生んだ子で、宇遅能和紀郎子(うじのわきのいらつこ=和紀郎子))のですが、その皇太子と皇位を譲り合い、皇太子が早くに亡くなったので、仁徳天皇が即位したという経緯が後に出てきます。

この美少女・カミナガの譲渡にしても、少し不自然さがあります。よほどのことがなければ、当時の天皇が見初めたオンナを、息子に譲り渡すというのはあり得ないはずです。

仁徳天皇がそれほど願った、ということなのかもしれませんが、これらから見て、応神―仁徳が普通の親子関係、あるいは前代と次代の天皇というには少し無理があるようにも思え、古事記解釈的にも政権移譲として、このカミナガの件に触れられる場合があります。

それはともかく、カミナガをゲットした仁徳天皇、超ハイテンションになって二首(1 | 2)の歌を残しています。

詳しくは本文を見ていただくとして、カミナガのゲットと、カミナガとの合体について、露骨に描写したものとなっています。

仁徳天皇縦480px仁徳天皇は、歴代天皇の中でも部類の女好きの一人ですが、皇后・石之日売命(いわのひめのみこと=イワノ)の偏執的な嫉妬狂いのために、他の妃に近づくこともままならなかったという経緯があります。

女好きで、当時の立場としては何でも物色でき、自分のものにできるのにも関わらず、奥さんが怖いがために、オンナと遊べないというの、男として、かなりフラストレーションがたまるようなシチュエーションではあります。

そのために、カミナガとの情事に火がつき、超ハイテンションの歌につながった、とも解釈できますが、それでも少し喜び過ぎ。やはり、このお話はただの妃の譲渡ではないのかもしれません。

このような象徴的な姫なのに、古事記において、カミナガは一言も発することなく、歌も残していません。両天皇の歌を素直に読み合わせれば、よほどの絶世の美女だったのだ、ということが伝わるのみです。

髪長姫のブロンズ像また仁徳天皇の歌を素直に読めば、非常に従順で、仁徳天皇に服従している一方、褥では、仁徳天皇の愛を全身で受け止める情熱さもあるような姫にも思えます。

どちらにしろ、仁徳天皇に大変愛されたとは言えそうです。

カミナガは、後の雄略天皇の皇后となる若日下王(わかくさかのみこ=ワカクサカ)を産むことになります。

雄略天皇が暴虐なだけに、より光り輝く皇后ワカクサカ、という構図が古事記には表れてきますが、母親の血を引いているのか、と考えれば、カミナガの実像に迫る手がかりの一つになりそうです。

ちなみに、ワカクサカの兄に大日下王(おおくさかのみこ)がいます。この兄は、讒言によって、安康天皇に誅されますが、その理由が雄略―ワカクサカの結婚に絡むものとなります。大日下王の妃が長田大郎女(ながたのおおいらつめ=ナガタノ)です。

現在、宮崎県の早水神社などで祀られています。また、都城市高城町、牧之原古墳群の中の一角にはブロンズ像も立てられれています。

ふたりの天皇(しかも、日本古代史上有数の権力があるとされる、応神と仁徳)に見初められた、絶世の美女は、現在でも故郷で大変慕われていることが分かります。

※画像は、宮崎県都城市高城町にある髪長姫のブロンズ像。(出典:宮崎観光写真

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【関連キャラ】
カミナガ - 応神がしぶしぶ仁徳に譲り渡した美女
仁徳天皇 - 古事記中盤の主役はやはり女好きの御仁
応神天皇 - 自身の登場シーンがあまり多くない天皇
建内宿禰 - 応神の本当の父? 波乱呼ぶ伝説的人物