古事記を彩る姫たちエントリーNO.14 美夜受比売(みやずひめ=ミヤズ)
英雄・倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)の妻の一人。日本書紀では宮簀媛。
古事記では、尾張の国造の祖先と位置付けられています。さかのぼれば、天孫・邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)の同母兄に天火明命(あめのほあかりのみこと)がいますが、その子孫と言われています。
ヤマトタケルが父親に疎まれ、東国遠征に行かされた時、まず寄ったのが伊勢。叔母の倭比売命(やまとひめのみこと=ヤマトヒメ)に会い、東国遠征の門出に草薙の剣とフシギ袋を貰い受け、これが後にヤマトタケルの命を救います。
その後に訪れたのが尾張。ミヤズの家により、結婚の誓いをしますが、東国遠征という大事業を前に、仕事を優先したか、誓いのみで、合体はオアズケ。東国に向かいます。
ミヤズは待ちぼうけ、となるわけです。
すったもんだあって、東国遠征からヤマトタケルが尾張に戻ってきて、さて、結婚。酒宴が開かれます。その時、ミヤズの着物の裾に血がついており、ヤマトタケルが、「もしかして、あの日?」と少しユーモアを交え、また、もしかしたら今日の合体ができないかもしれないことに少しショックで、歌って問います。
これに対して、「あなたが待ちぼうけをくらわして、月日が経ってしまいました~ だから月経も出てくるのよ~」と非常にうまい言葉遊び、ユーモアあふれる返歌をし、「気にならなければ、今日の合体、おkよ~」とまとめます。
以上、適当な訳、要約。詳しくは本文を(ただし、本文も適当な部分があります。
こうして、Wikipediaの表現を借りるならば、「ヤマトタケルは姫の月の障りをおして交わった」ことになりますが、話の流れや歌い合いなどから考えて、姫の方も待たされた思いがあったのか、もう少し積極的だったような気がします。
生理で嫌がる姫を辛抱たまらんヤマトタケルが組み敷いた、という感じではなく、“あの日”の情事はふたりの合意があったと思われます。
このあたり、ヤマトタケルの性格が出ているような気がします。もう一人の妻・弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと=オトタチバナ)のように、女性を大事にするというかなんというか。
決して、女性を大事にしないわけではないですが、紛れもない女好き大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシとはがつがつ度合いが違う、というか。
古事記最大の二人の英雄オオクニヌシとヤマトタケル、女性に対するスタンスの違いはあると思います。
ところで、この後日本では出血は不浄のものとされ、生理や、めでたいはずの出産も、出血を伴うものとして忌み嫌われていきます。それが高じて女性そのものが不浄とされていってしまいますが、この頃、出血が忌み嫌われるものではなく、生理をネタに男女が平等に恋愛物語として語り継がれることを許容していたあたり、日本古代の先進性が感じられます。
さて、めでたく初夜を終えたミヤズとヤマトタケル。ヤマトタケルはあまりにもうれしかったか、伊吹山の神の退治に向かう時、調子に乗って愛剣の草薙の剣をミヤズの家に置いたまま出ていってしまいます。これが命取りになろうとは。。
ヤマトタケルは伊吹山で瀕死の重傷を負い、三重方向に逃走、そのため、ミヤズの家には帰ることなく、死を迎えます。古事記を素直に読めば、二人の情事はこの初夜限りということになりそうです。
死を前にして、ヤマトタケルは草薙の剣について、姫のところにおいてきたことを嘆き、歌います。この歌は、草薙の剣に対する愛着とともに、姫のところ=ミヤズそのものを思い出して歌ったともとれます。女性への気配りがやはり行き届いています。
ともかく、こうして未亡人になったミヤズ。初夜がたまたま“あの日”だった、しかしそれを新婚の二人は笑い飛ばしてジョークを交えながら、気にせずに体も交わった、という、非常に大らかな古代ラブロマンスのヒロインも、ここで、古事記での登場は終わります。
ヤマトタケルが草薙の剣をミヤズに預けた、という形になり、ミヤズはヤマトタケルの死後、草薙の剣を奉斎鎮守したという言い伝えが、いわば熱田神宮の始まりです。熱田神宮は祭神が草薙の剣そのものですが、相殿神として、
・アマテラス
・スサノヲ
・ヤマトタケル
・ミヤズ
・建稲種命 (たけいなだねのみこと)
が祀られています。建稲種命はミヤズの兄とされています。
また熱田神宮境外摂社である氷上姉子神社(ひかみあねごじんじゃ 名古屋市緑区)や松姤神社 (まつごじんじゃ 名古屋市熱田区)などにも祀られています。
熱田神宮やその摂社には草薙の剣にまつわる神々が多く祀られており、その神々を紹介するだけでも、古事記世界の一端に触れられる手がかりになりそうです。
※画像は、氷上姉子神社(出典:Wikipedia)
【関連記事】
・待たされた二人には生理も関係ない? ヤマトタケルと嫁、嫁のあの日に初合体~
・ヤマトタケルの最期、国を思う歌、置いてきた草薙の剣に思いを馳せ見事逝く
・父に疎まれるヤマトタケルが東国へ 相模で危機一髪 叔母ちゃんに助けられる
・ほとばしる美しさで、男どもをメロメロにする女子たち - 古事記を彩る姫たち
・日本が世界に誇る、古代ラブロマンス・オペラへようこそ - ぶっちゃけ古事記本文の目次
【関連キャラ】
・ミヤズ - 「生理だけど、何か?」の奔放な姫
・ヤマトタケル - はっちゃけ皇子の英雄譚、最期は?
・ヤマトヒメ - 慈愛溢れるヤマトタケルの叔母は初代斎宮
英雄・倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)の妻の一人。日本書紀では宮簀媛。
古事記では、尾張の国造の祖先と位置付けられています。さかのぼれば、天孫・邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)の同母兄に天火明命(あめのほあかりのみこと)がいますが、その子孫と言われています。
ヤマトタケルが父親に疎まれ、東国遠征に行かされた時、まず寄ったのが伊勢。叔母の倭比売命(やまとひめのみこと=ヤマトヒメ)に会い、東国遠征の門出に草薙の剣とフシギ袋を貰い受け、これが後にヤマトタケルの命を救います。
その後に訪れたのが尾張。ミヤズの家により、結婚の誓いをしますが、東国遠征という大事業を前に、仕事を優先したか、誓いのみで、合体はオアズケ。東国に向かいます。
ミヤズは待ちぼうけ、となるわけです。
すったもんだあって、東国遠征からヤマトタケルが尾張に戻ってきて、さて、結婚。酒宴が開かれます。その時、ミヤズの着物の裾に血がついており、ヤマトタケルが、「もしかして、あの日?」と少しユーモアを交え、また、もしかしたら今日の合体ができないかもしれないことに少しショックで、歌って問います。
これに対して、「あなたが待ちぼうけをくらわして、月日が経ってしまいました~ だから月経も出てくるのよ~」と非常にうまい言葉遊び、ユーモアあふれる返歌をし、「気にならなければ、今日の合体、おkよ~」とまとめます。
以上、適当な訳、要約。詳しくは本文を(ただし、本文も適当な部分があります。
こうして、Wikipediaの表現を借りるならば、「ヤマトタケルは姫の月の障りをおして交わった」ことになりますが、話の流れや歌い合いなどから考えて、姫の方も待たされた思いがあったのか、もう少し積極的だったような気がします。
生理で嫌がる姫を辛抱たまらんヤマトタケルが組み敷いた、という感じではなく、“あの日”の情事はふたりの合意があったと思われます。
このあたり、ヤマトタケルの性格が出ているような気がします。もう一人の妻・弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと=オトタチバナ)のように、女性を大事にするというかなんというか。
決して、女性を大事にしないわけではないですが、紛れもない女好き大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシとはがつがつ度合いが違う、というか。
古事記最大の二人の英雄オオクニヌシとヤマトタケル、女性に対するスタンスの違いはあると思います。
ところで、この後日本では出血は不浄のものとされ、生理や、めでたいはずの出産も、出血を伴うものとして忌み嫌われていきます。それが高じて女性そのものが不浄とされていってしまいますが、この頃、出血が忌み嫌われるものではなく、生理をネタに男女が平等に恋愛物語として語り継がれることを許容していたあたり、日本古代の先進性が感じられます。
さて、めでたく初夜を終えたミヤズとヤマトタケル。ヤマトタケルはあまりにもうれしかったか、伊吹山の神の退治に向かう時、調子に乗って愛剣の草薙の剣をミヤズの家に置いたまま出ていってしまいます。これが命取りになろうとは。。
ヤマトタケルは伊吹山で瀕死の重傷を負い、三重方向に逃走、そのため、ミヤズの家には帰ることなく、死を迎えます。古事記を素直に読めば、二人の情事はこの初夜限りということになりそうです。
死を前にして、ヤマトタケルは草薙の剣について、姫のところにおいてきたことを嘆き、歌います。この歌は、草薙の剣に対する愛着とともに、姫のところ=ミヤズそのものを思い出して歌ったともとれます。女性への気配りがやはり行き届いています。
ともかく、こうして未亡人になったミヤズ。初夜がたまたま“あの日”だった、しかしそれを新婚の二人は笑い飛ばしてジョークを交えながら、気にせずに体も交わった、という、非常に大らかな古代ラブロマンスのヒロインも、ここで、古事記での登場は終わります。
ヤマトタケルが草薙の剣をミヤズに預けた、という形になり、ミヤズはヤマトタケルの死後、草薙の剣を奉斎鎮守したという言い伝えが、いわば熱田神宮の始まりです。熱田神宮は祭神が草薙の剣そのものですが、相殿神として、
・アマテラス
・スサノヲ
・ヤマトタケル
・ミヤズ
・建稲種命 (たけいなだねのみこと)
が祀られています。建稲種命はミヤズの兄とされています。
また熱田神宮境外摂社である氷上姉子神社(ひかみあねごじんじゃ 名古屋市緑区)や松姤神社 (まつごじんじゃ 名古屋市熱田区)などにも祀られています。
熱田神宮やその摂社には草薙の剣にまつわる神々が多く祀られており、その神々を紹介するだけでも、古事記世界の一端に触れられる手がかりになりそうです。
※画像は、氷上姉子神社(出典:Wikipedia)
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【関連キャラ】
・ミヤズ - 「生理だけど、何か?」の奔放な姫
・ヤマトタケル - はっちゃけ皇子の英雄譚、最期は?
・ヤマトヒメ - 慈愛溢れるヤマトタケルの叔母は初代斎宮
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