古事記を彩る姫たちエントリーNO.06 木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ=サクヤ)
邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)が高天原から日向(現在の宮崎県)の高千穂の峰に降臨(天孫降臨)した際に発した、「笠沙の岬(かささのみさき。鹿児島県川辺群笠沙町の野間岬)へもまっすぐに行く道がある」という言葉に出てくる笠沙の岬で、ニニギが出会った美女こそが、木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ=サクヤ)です。
サクヤを一目見たニニギはすぐに名前を聞く、つまり結婚を申し込みます。サクヤは一旦保留して、父親と相談することにします。この父親が大山津見神(おおやまつみのかみ=オオヤマツミ)です。
オオヤマツミはイザナギとイザナミの神産みの時に生まれた神様の一柱。オオヤマツミの子供には、サクヤのほか、スサノヲがヤマタノオロチを退治した時に嫁としてゲットした櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ)の両親である足名椎命・手名椎命(アシナヅチ・テナヅチ)がいます。
さて、オオヤマツミ。サクヤからニニギにプロポーズをされたことを聞いて大喜び。早速嫁入り準備に取り掛かります。あまりにも喜び過ぎたか、サクヤの姉・石長比売(いわながひめ=イワナガ)も同時にニニギに嫁入りさせます。
サクヤをゲットしたニニギ。しかし、一緒についてきた姉イワナガが妹サクヤとは似つかわないブサイクちゃんだったので、少し悩んで、「親元にお帰り」と、オオヤマツミのもとにイワナガを返してしまいました。
これに激怒したのがオオヤマツミ。考えてみれば、オオヤマツミ、アマテラスとは兄妹ですね。その孫による娘への仕打ちに対して、呪いをかけます。
「キレイなサクヤばかりを愛してはダメダメ。もし、イワナガが妃になれば、その家系は岩のようになれたのに」として、ニニギの家系は寿命があるようになってしまいました。これが天皇家は神の家系なのに寿命がある、そもそもの原因となっています。
さて、ニニギとサクヤ。無事に初夜を済ませた(合体した)翌日、サクヤは身ごもっていることに気づき、それをニニギに伝えます。ニニギは「計算合わねーじゃん。別の男(国つ神)の子じゃねーの?」
……その通りかもしれませんが、サクヤ、傷心。発起して誓約します。「ニニギ様の子だもん。だからどんなことしても生まれるもん」。そうして燃やした小屋に入って、炎に包まれながら子供たちを産みます(火中出産)。それが下の三人。
・火照命(ほでりのみこと=海幸彦(うみさちひこ))
・火須勢理命(ほすせりのみこと)
・火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))
確かにどんなことしても生まれたのだからニニギの子だったのでしょう。しかし、ニニギとの結婚の前に身に覚えがなければここまでする必要もなかったのではないかと疑います。ニニギの言葉に対しても、結婚前の別の男とのチョメチョメを直接は否定していません。
そうすると、ニニギとの結婚の時、サクヤは少なくとも処女ではなかった、ということでしょうか。
古事記を読んでいると、サクヤに限らず、姫たちはケッコウ天真爛漫。古事記にも、処女かどうかが重要というような記述は見当たらないような気がします。神事に処女が尊ばれるようになったのは後の時代の話で、古代は恋にもう少し大らかだったのかもしれません。
ともかく、サクヤの子の、海幸彦と山幸彦が後の竜宮城の話につながっていきます。また、この二人の話は、ヤマトの隼人征伐を描いたものともされています。山幸彦の家系が、初代・神武天皇につながっていくことになります。
すったもんだはありましたが、サクヤちゃん、現在では日本全国に祀られています。夫ニニギより断然多い。ニニギとサクヤの結婚も、サルタヒコとアメノウズメの結婚と同じく、天つ神と国つ神の国際結婚の一種であり、そのため国つ神であるサクヤちゃんを祀る神社が多くなっているのかもしれません。
・夫ニニギ(天)―妻サクヤ(国)
・夫サルタヒコ(国)―妻アメノウズメ(天)
サクヤちゃんが祀られているものに、まず、富士山を神体山としている富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)と、配下の日本国内、実に約1300社(!)の浅間神社があります。
火中出産の説話から火の神とされ、山の神の総元締めの親父オオヤマツミから、火山である日本一の秀峰「富士山」を譲られたと言います。そこから派生して、さらに富士山に鎮座して、東日本一帯を守護することになったとも言われています。
しかし、そもそもの富士山本宮浅間大社の社伝では、サクヤは水の神とされ、噴火を鎮めるために富士山に祀られたとされています。火中出産を無事成し遂げ、火の名を持つ三柱の神を産んだのだから、“水”性質を持っていても、確かにおかしくはないように思えます。
さらに言えば、“水”性質がなければ、火の神を産んで女陰を負傷したイザナミの二の舞になっていた可能性もあります。古事記を読んでいて、この両者の違い(二人とも火の神を産みながら、一人は女陰に瀕死の重傷を負い、一人は何も記述なし)は確かに違和感があります。
また、当然のように、妻の鑑、安産の神、子育ての神として崇められています。
富士山麓忍野八海の湧池はサクヤちゃんにゆかりの池として、毎年行うコノハナノサクヤビメの祭りで神輿をこの池の水で洗い浄めます。
また、オオヤマツミが孫の三柱の神の誕生に際して、現在の甘酒とされる天舐酒(アマノタムケザケ)を造ったと言われているため、オオヤマツミとその子サクヤちゃんが酒造の神として祀られてもいます。
記録上日本初のブサイクと認定され、それがもとで男にフラれてしまったことになっている可哀想な姉イワナガとともに、細石神社(福岡県糸島市)にも祀られています。
ちなみに、木花咲耶姫、木花開耶姫、木華開耶媛などとも表記されます。
※画像は富士山本宮浅間大社の本宮(出典:Wikipedia)
【関連記事】
・ニニギの嫁取り いきなり妻のお腹の子を他の男のものでは?と疑う
・木花開耶姫 - 後にサクヤを祀ることになる富士山背負い雅やかな美女神
・木華開耶媛 - 満開の木の下に座る美しい女神サクヤは美しさの儚さの象徴?
・女性と『古事記』 - 幸運引き寄せ、願い叶え、美しく、心身浄化
・ほとばしる美しさで、男どもをメロメロにする女子たち - 古事記を彩る姫たち
・日本が世界に誇る、古代ラブロマンス・オペラへようこそ - ぶっちゃけ古事記本文の目次
【関連キャラ】
・サクヤ - 天孫ニニギにお腹の子を疑われる姫
・ニニギ - ご存知天孫は、女心を傷つける女泣かせ?
・イワナガ - 天孫ニニギにブサイクと言われる姫
・山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
・海幸彦 - 弟と竜宮城勢力に、屈服させられる隼人
邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)が高天原から日向(現在の宮崎県)の高千穂の峰に降臨(天孫降臨)した際に発した、「笠沙の岬(かささのみさき。鹿児島県川辺群笠沙町の野間岬)へもまっすぐに行く道がある」という言葉に出てくる笠沙の岬で、ニニギが出会った美女こそが、木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ=サクヤ)です。
サクヤを一目見たニニギはすぐに名前を聞く、つまり結婚を申し込みます。サクヤは一旦保留して、父親と相談することにします。この父親が大山津見神(おおやまつみのかみ=オオヤマツミ)です。
オオヤマツミはイザナギとイザナミの神産みの時に生まれた神様の一柱。オオヤマツミの子供には、サクヤのほか、スサノヲがヤマタノオロチを退治した時に嫁としてゲットした櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ)の両親である足名椎命・手名椎命(アシナヅチ・テナヅチ)がいます。
さて、オオヤマツミ。サクヤからニニギにプロポーズをされたことを聞いて大喜び。早速嫁入り準備に取り掛かります。あまりにも喜び過ぎたか、サクヤの姉・石長比売(いわながひめ=イワナガ)も同時にニニギに嫁入りさせます。
サクヤをゲットしたニニギ。しかし、一緒についてきた姉イワナガが妹サクヤとは似つかわないブサイクちゃんだったので、少し悩んで、「親元にお帰り」と、オオヤマツミのもとにイワナガを返してしまいました。
これに激怒したのがオオヤマツミ。考えてみれば、オオヤマツミ、アマテラスとは兄妹ですね。その孫による娘への仕打ちに対して、呪いをかけます。
「キレイなサクヤばかりを愛してはダメダメ。もし、イワナガが妃になれば、その家系は岩のようになれたのに」として、ニニギの家系は寿命があるようになってしまいました。これが天皇家は神の家系なのに寿命がある、そもそもの原因となっています。
さて、ニニギとサクヤ。無事に初夜を済ませた(合体した)翌日、サクヤは身ごもっていることに気づき、それをニニギに伝えます。ニニギは「計算合わねーじゃん。別の男(国つ神)の子じゃねーの?」
……その通りかもしれませんが、サクヤ、傷心。発起して誓約します。「ニニギ様の子だもん。だからどんなことしても生まれるもん」。そうして燃やした小屋に入って、炎に包まれながら子供たちを産みます(火中出産)。それが下の三人。
・火照命(ほでりのみこと=海幸彦(うみさちひこ))
・火須勢理命(ほすせりのみこと)
・火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))
確かにどんなことしても生まれたのだからニニギの子だったのでしょう。しかし、ニニギとの結婚の前に身に覚えがなければここまでする必要もなかったのではないかと疑います。ニニギの言葉に対しても、結婚前の別の男とのチョメチョメを直接は否定していません。
そうすると、ニニギとの結婚の時、サクヤは少なくとも処女ではなかった、ということでしょうか。
古事記を読んでいると、サクヤに限らず、姫たちはケッコウ天真爛漫。古事記にも、処女かどうかが重要というような記述は見当たらないような気がします。神事に処女が尊ばれるようになったのは後の時代の話で、古代は恋にもう少し大らかだったのかもしれません。
ともかく、サクヤの子の、海幸彦と山幸彦が後の竜宮城の話につながっていきます。また、この二人の話は、ヤマトの隼人征伐を描いたものともされています。山幸彦の家系が、初代・神武天皇につながっていくことになります。
すったもんだはありましたが、サクヤちゃん、現在では日本全国に祀られています。夫ニニギより断然多い。ニニギとサクヤの結婚も、サルタヒコとアメノウズメの結婚と同じく、天つ神と国つ神の国際結婚の一種であり、そのため国つ神であるサクヤちゃんを祀る神社が多くなっているのかもしれません。
・夫ニニギ(天)―妻サクヤ(国)
・夫サルタヒコ(国)―妻アメノウズメ(天)
サクヤちゃんが祀られているものに、まず、富士山を神体山としている富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)と、配下の日本国内、実に約1300社(!)の浅間神社があります。
火中出産の説話から火の神とされ、山の神の総元締めの親父オオヤマツミから、火山である日本一の秀峰「富士山」を譲られたと言います。そこから派生して、さらに富士山に鎮座して、東日本一帯を守護することになったとも言われています。
しかし、そもそもの富士山本宮浅間大社の社伝では、サクヤは水の神とされ、噴火を鎮めるために富士山に祀られたとされています。火中出産を無事成し遂げ、火の名を持つ三柱の神を産んだのだから、“水”性質を持っていても、確かにおかしくはないように思えます。
さらに言えば、“水”性質がなければ、火の神を産んで女陰を負傷したイザナミの二の舞になっていた可能性もあります。古事記を読んでいて、この両者の違い(二人とも火の神を産みながら、一人は女陰に瀕死の重傷を負い、一人は何も記述なし)は確かに違和感があります。
また、当然のように、妻の鑑、安産の神、子育ての神として崇められています。
富士山麓忍野八海の湧池はサクヤちゃんにゆかりの池として、毎年行うコノハナノサクヤビメの祭りで神輿をこの池の水で洗い浄めます。
また、オオヤマツミが孫の三柱の神の誕生に際して、現在の甘酒とされる天舐酒(アマノタムケザケ)を造ったと言われているため、オオヤマツミとその子サクヤちゃんが酒造の神として祀られてもいます。
記録上日本初のブサイクと認定され、それがもとで男にフラれてしまったことになっている可哀想な姉イワナガとともに、細石神社(福岡県糸島市)にも祀られています。
ちなみに、木花咲耶姫、木花開耶姫、木華開耶媛などとも表記されます。
※画像は富士山本宮浅間大社の本宮(出典:Wikipedia)
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・日本が世界に誇る、古代ラブロマンス・オペラへようこそ - ぶっちゃけ古事記本文の目次
【関連キャラ】
・サクヤ - 天孫ニニギにお腹の子を疑われる姫
・ニニギ - ご存知天孫は、女心を傷つける女泣かせ?
・イワナガ - 天孫ニニギにブサイクと言われる姫
・山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
・海幸彦 - 弟と竜宮城勢力に、屈服させられる隼人
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