古事記を彩る姫たちエントリーNO.04 沼河比売(ぬなかわひめ=ヌナカワ)
女好き大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)が美女神の存在を聞きつけて、越の国(現 新潟県)まで出向きゲットした女神。嫉妬深い激情家の妻・須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)をやきもきさせた女性でもあります。
オオクニヌシとヌナカワの出会いと合体は、古事記で初めてのラブロマンス・オペラ風の展開ともいえる、歌の交わし合いです。古事記に収録されている中では初めての恋歌、つまり日本史上初の恋愛歌とも言えます。
まず、オオクニヌシがヌナカワに歌で聞きます。その歌い出しがすごい。「日本中でもうたくさん女囲っているけど、越の国にも美女神がいると聞いて、夜這いしに来たよ~」(適当訳)
……複数の女の存在をぶっちゃけ、その上でのあまりにも堂々とした夜這い宣言。「オレの女(の一人)になっちゃいな~」感溢れます。
さらにオオクニヌシの歌は続きます。「まだ剣は腰に差したままだし、ズボンも脱いでいないけど、姫の寝室の窓の板戸を押したり引いたり、揺さぶって、悶えているよ~」(適当訳)
……ものすごくリアリティ。ちょっとしたストーカ、っげぶげふ。それにしても、臨場感ありすぎねぇ? これが日本で初めての恋歌とは。。完成度、高すぎ。というか、そうすると、この一つ前のスサノヲによる日本初の和歌があまりにも素朴すぎねぇ? など疑問溢れます。
これに対して、ヌナカワが返した歌は、「今はちょっと待って、気持ちの整理がつきません。でも、必ずあなたのものになるでしょう。人生、楽しみましょう」(適当訳)
……もう、オオクニヌシのものになること確定なのね。ちょっと焦らしているところが可愛いですが。
しかししかし、その後すぐのヌナカワの歌。「今は夜だけど、朝日のように颯爽とやって来て、私の乳房をそっと包んでくれることでしょう。手をぎゅっと握って、絡めてね。私と一緒の時はくつろいで、寂しい恋はしないで、させないで」(適当訳)
……おっと、いきなり積極的に。こんな歌をもらいながら、オオクニヌシはその日のチョメチョメは我慢して、次の日に結ばれたと言います。オオクニヌシの辛抱強さにカンパイ!
オオクニヌシとヌナカワには、後の国譲りで活躍(?)する建御名方神(たけみなかたのかみ=タケミナカタ)が生まれたと言われています。古事記世界では、長男・事代主神(ことしろぬしのかみ=コトシロヌシ)に次ぐ、次男坊として登場します。
オオクニヌシの初めての子どもは、八上比売(やがみひめ=ヤガミ)との間の木俣神(このまたのかみ)とされていますが、木俣神は古事記ではそれ以降出てきませんので、コトシロヌシ、タケミナカタがオオクニヌシ陣営の2トップになるわけです。
その意味で、ヌナカワは、オオクニヌシの数多い妻の中で、正妻スセリ、長男を産んだヤガミに次ぐ地位を得ていると言えます。
『万葉集』に詠まれた「渟名河(ぬなかは)の 底なる玉 求めて 得まし玉かも 拾ひて 得まし玉かも 惜(あたら)しき君が 老ゆらく惜(を)しも」(巻十三 三二四七 作者未詳)の歌において、「渟名河」はヌナカワに由来していると考えられ、ヌナカワは姫川一帯の女王だったという説もあります。
また、天沼矛(あめのぬぼこ)の名に見られるように古語の「ぬ」には宝玉の意味があり、「ぬなかわ」とは「玉の川」となるとも言われています。財力の大きさ、つまり権勢の大きさを示しているのかもしれません。オオクニヌシのヌナカワちゃんゲットの古事記の逸話は、オオクニヌシのこの地の支配権確立を暗示していそうです。
現在では、天津神社(あまつじんじゃ、新潟県糸魚川市)の境内社・奴奈川神社に主祭神として祭られています。今ではオオクニヌシと合祀されています。
息子タケミナカタが祀られている諏訪大社、その下社にも、タケミナカタとその妻とされる八坂刀売神(やさかとめのかみ)とともに祀られています。糸魚川市と諏訪地方を結ぶのが姫川であり、ヌナカワちゃんの名前が川名の由来になっていると伝えられています。
本サイトでは記述が少ない天皇としてあまり多くを取り上げていません(いわゆる欠史八代)が、第2代の綏靖天皇の名前が、神沼河耳命(かむぬなかわみみのみこと)であり、ヌナカワちゃんの名前との共通性を指摘する声もあります。
※画像は糸魚川市の海望公園にある沼河比売(奴奈川姫)と建御名方命の像。(出典:Wikipedia)
【関連記事】
・「イイ女がいる? どこでも行くよーん」オオクニヌシ、全国飛び回る
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・女性と『古事記』 - 幸運引き寄せ、願い叶え、美しく、心身浄化
・ほとばしる美しさで、男どもをメロメロにする女子たち - 古事記を彩る姫たち
・日本が世界に誇る、古代ラブロマンス・オペラへようこそ - ぶっちゃけ古事記本文の目次
【関連キャラ】
・ヌナカワ - 臨場感ありすぎる恋愛劇のヒロイン
・オオクニヌシ - 国つ神のドンは破天荒な女好き
・タケミナカタ - 暴れん坊のオオクニヌシ次男、敗退
女好き大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)が美女神の存在を聞きつけて、越の国(現 新潟県)まで出向きゲットした女神。嫉妬深い激情家の妻・須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)をやきもきさせた女性でもあります。
オオクニヌシとヌナカワの出会いと合体は、古事記で初めてのラブロマンス・オペラ風の展開ともいえる、歌の交わし合いです。古事記に収録されている中では初めての恋歌、つまり日本史上初の恋愛歌とも言えます。
まず、オオクニヌシがヌナカワに歌で聞きます。その歌い出しがすごい。「日本中でもうたくさん女囲っているけど、越の国にも美女神がいると聞いて、夜這いしに来たよ~」(適当訳)
……複数の女の存在をぶっちゃけ、その上でのあまりにも堂々とした夜這い宣言。「オレの女(の一人)になっちゃいな~」感溢れます。
さらにオオクニヌシの歌は続きます。「まだ剣は腰に差したままだし、ズボンも脱いでいないけど、姫の寝室の窓の板戸を押したり引いたり、揺さぶって、悶えているよ~」(適当訳)
……ものすごくリアリティ。ちょっとしたストーカ、っげぶげふ。それにしても、臨場感ありすぎねぇ? これが日本で初めての恋歌とは。。完成度、高すぎ。というか、そうすると、この一つ前のスサノヲによる日本初の和歌があまりにも素朴すぎねぇ? など疑問溢れます。
これに対して、ヌナカワが返した歌は、「今はちょっと待って、気持ちの整理がつきません。でも、必ずあなたのものになるでしょう。人生、楽しみましょう」(適当訳)
……もう、オオクニヌシのものになること確定なのね。ちょっと焦らしているところが可愛いですが。
しかししかし、その後すぐのヌナカワの歌。「今は夜だけど、朝日のように颯爽とやって来て、私の乳房をそっと包んでくれることでしょう。手をぎゅっと握って、絡めてね。私と一緒の時はくつろいで、寂しい恋はしないで、させないで」(適当訳)
……おっと、いきなり積極的に。こんな歌をもらいながら、オオクニヌシはその日のチョメチョメは我慢して、次の日に結ばれたと言います。オオクニヌシの辛抱強さにカンパイ!
オオクニヌシとヌナカワには、後の国譲りで活躍(?)する建御名方神(たけみなかたのかみ=タケミナカタ)が生まれたと言われています。古事記世界では、長男・事代主神(ことしろぬしのかみ=コトシロヌシ)に次ぐ、次男坊として登場します。
オオクニヌシの初めての子どもは、八上比売(やがみひめ=ヤガミ)との間の木俣神(このまたのかみ)とされていますが、木俣神は古事記ではそれ以降出てきませんので、コトシロヌシ、タケミナカタがオオクニヌシ陣営の2トップになるわけです。
その意味で、ヌナカワは、オオクニヌシの数多い妻の中で、正妻スセリ、長男を産んだヤガミに次ぐ地位を得ていると言えます。
『万葉集』に詠まれた「渟名河(ぬなかは)の 底なる玉 求めて 得まし玉かも 拾ひて 得まし玉かも 惜(あたら)しき君が 老ゆらく惜(を)しも」(巻十三 三二四七 作者未詳)の歌において、「渟名河」はヌナカワに由来していると考えられ、ヌナカワは姫川一帯の女王だったという説もあります。
また、天沼矛(あめのぬぼこ)の名に見られるように古語の「ぬ」には宝玉の意味があり、「ぬなかわ」とは「玉の川」となるとも言われています。財力の大きさ、つまり権勢の大きさを示しているのかもしれません。オオクニヌシのヌナカワちゃんゲットの古事記の逸話は、オオクニヌシのこの地の支配権確立を暗示していそうです。
現在では、天津神社(あまつじんじゃ、新潟県糸魚川市)の境内社・奴奈川神社に主祭神として祭られています。今ではオオクニヌシと合祀されています。
息子タケミナカタが祀られている諏訪大社、その下社にも、タケミナカタとその妻とされる八坂刀売神(やさかとめのかみ)とともに祀られています。糸魚川市と諏訪地方を結ぶのが姫川であり、ヌナカワちゃんの名前が川名の由来になっていると伝えられています。
本サイトでは記述が少ない天皇としてあまり多くを取り上げていません(いわゆる欠史八代)が、第2代の綏靖天皇の名前が、神沼河耳命(かむぬなかわみみのみこと)であり、ヌナカワちゃんの名前との共通性を指摘する声もあります。
※画像は糸魚川市の海望公園にある沼河比売(奴奈川姫)と建御名方命の像。(出典:Wikipedia)
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【関連キャラ】
・ヌナカワ - 臨場感ありすぎる恋愛劇のヒロイン
・オオクニヌシ - 国つ神のドンは破天荒な女好き
・タケミナカタ - 暴れん坊のオオクニヌシ次男、敗退
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