櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ) 縦480px
古事記を彩る姫たちエントリーNO.01 櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ)

ヤマタノオロチのお話は絵本や児童文学にもなりやすく、古事記に収録されている説話の中では最もポピュラーなものの一つではないかと思われます。そこで登場するのが、櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ)です。

しかし、古事記において、彼女、一言もしゃべっていません。また、彼女と結婚し、新居を構えた建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)が日本初の和歌を詠むことになるのですが、彼女自身の歌は伝わっていません。

つまり、ほぼ情報なし。

櫛名田比売(くしなだひめ=クシナダ)物語の進行は、彼女の父母、特に父が、スサノヲと会話して進んでいくことになります。それ自体は本文を見ていただくとして、それ以外の周辺のお話を。

そもそもスサノヲがクシナダちゃんと出雲で出会えたのは、高天原で暴れて姉の天照大御神(あまてらすおおかみ=アマテラス)がキレて天岩戸隠れのお話があって、そんで、高天原を追い出されたから、ではあります。

また、出雲に到着前、スサノヲは女神を一柱殺っちゃっています。まあ、これにはやむを得ないか、という理由も無きにしも非ずですが、とにかく、出会いの直前まで、古事記において、スサノヲは殺気立ち、血なまぐさい感じがしていました。

しかし、出雲に着いてからのスサノヲは、ヤマタノオロチ退治の英雄になり、少なくとも、クシナダちゃんとの出会いから結婚、新居を構えるあたりまで、高天原を追放され、女神を殺っちゃった時のような荒々しさは影をひそめます。その後はまた別の話があったりしますが。。

そもそもスサノヲがヤマタノオロチを討伐しようと考えたのは、明らかに一目見たクシナダちゃんにゾッコンになったためと思われます。スサノヲの日本史上初の和歌、前後の流れをくみ取って、もう一度吟じてみると、、、キレイな新妻得てのドヤ顔が目に浮かぶよう。

建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)このスサノヲの性格の変化の陰には、やはりクシナダちゃんの温かい人柄があったのでしょうか。それに感化され、さすがの暴れん坊スサノヲも鳴りを潜めた、という。。

というのも、クシナダちゃんのご両親、足名椎命・手名椎命(あしなづち・てなづち)は、日本書紀において手摩霊・足摩霊と表記され、「手足を撫でる」意味を持つために、クシナダちゃんは「撫でるように大事に育てられた姫」、つまり、倭撫子(やまとなでしこ)の語源ではないか、という説もあると言います。

そう、クシナダちゃんこそ本家本元の元祖・やまとなでしこなのです。なでしこジャパンが世界を席巻したように、クシナダちゃんも荒ぶる神をうまいこといなしたのかもしれません。さすがっ!

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)縦480pxこの二人には、八島士奴美神(ヤシマジヌミ)という子供(神様)が生まれます。この系譜が、古事記の英雄オオクニヌシにつながっていきます。

やはり日本書紀での表記である奇稲田姫(くしなだひめ)からの連想として、霊妙な稲田の女神とされてもいます。しかし、スサノヲのヤマタノオロチ討伐に際して、櫛に変化し、スサノヲが髪に差したという逸話から、言葉遊び的な命名ではないかとも言われています。

本稿では親しみを込めて“ちゃん”付けしていますが、もちろんスサノヲやご両親ともども、神様であり、現在でも、下記の神社でスサノヲやご両親などとともに祀られています。

廣峯神社(兵庫県姫路市)
氷川神社(さいたま市大宮区)
須佐神社(島根県出雲市)
八重垣神社(島根県松江市)
須我神社(島根県雲南市)
八坂神社(京都市東山区)
櫛田神社(富山県射水市)
櫛田宮(佐賀県神埼市)

Inada-jinja_(Kasama)_haiden唯一、茨城県笠間市にある稲田神社は、単体で奇稲田姫をお祀りしています。また、福岡県福岡市にある櫛田神社では、今は祀られていませんが、以前は祀っていたという説があるようです。

ちなみに本稿は、古事記を素直に読んで、“姫”にふさわしい人をピックアップした、その第一号としてクシナダちゃんを取り上げたものではありますが、その時点ではやまとなでしこの語源という説は知りませんでした。

古事記、“姫”、第一号が、やまとなでしこ、さっすが、古事記です。

※画像は、稲田神社(茨城県笠間市)の拝殿(出典:Wikipedia)

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【関連キャラ】
クシナダ - 元祖やまとなでしこのほっこり娘 
スサノヲ - 荒ぶる神からちょいワル親父への転身
ヤマタノオロチ - 思わず泥酔して不覚を取った神

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