袁努比売18.雄略天皇
18-5.袁努比売と三重の采女


雄略天皇は丸邇(わに)の佐都紀臣(さつきのおみ)の娘・袁杼比賣(をどひめ=ヲドヒメ)を娶ろうと、春日まで来た時、その娘が草が生い茂る丘に逃げ隠れたのを見て歌います。

オマエが隠れている丘~
草が多すぎるので、
丈夫な鎌がたくさんあったらいいな~
草を全部刈ってしまえば、
オマエの姿を露わにできるのに~

また、雄略天皇は長谷の大きなケヤキの下で宴会している時、伊勢国(現 三重県)から来た采女(うねめ)が天皇に盃を捧げようと近寄りました。その時ケヤキの葉が落ちて、盃に浮かびました。それを知らずに采女は盃を天皇に捧げます。

雄略天皇は盃に葉が浮かんでいるのを見て、采女をソッコー斬り殺そうと思いましたが、采女は「待ってくださいまし~、歌わせて~」と言って歌います。

纒向(まきむく)の日代(ひしろ)の宮は
朝日の照り渡る宮、夕日の光のさす宮、
竹の根の満ちている宮、
木の根の広がっている宮だよ~
多くの土を築き、固めた宮で、
立派な材木である檜の御殿~
新酒を召し上がるその御殿に生い立っている~
一杯に茂ったケヤキの木の枝は、
上の枝は天を背負い、
中の枝は東国を背負い、
下の枝は田舎を背負う~
その上の枝の枝先の葉は、
中の枝に落ちて触れ合い、
中の枝の枝先の葉は、
下の枝に落ちて触れ合い、
下の枝の枝先の葉は、
衣服を三重に着る、
その三重から来た子の捧げている盃に
浮いた油のように落ちつかって、
水音もころころと、誠に畏れ多い~
貴い日の御子様~

この歌を聞いて、雄略天皇はこの采女を赦しました。そこで、皇后・若日下王(わかくさかのみこ=ワカクサカ)が歌います。

大和の国のこの町で~、
小高くある市の高台の~
新酒を召し上がりになる御殿にお生い立っている~
葉の清らかな椿の木~
その葉のように広やかに遊ばれる
その花のように輝いて遊ばれる
貴い日の御子様に~
御酒を差し上げなさい~

そこで雄略天皇が歌った歌は。

宮廷につかえる人々は~
カラスのようにひれ伏して、
鶺鴒のように尾を振りあって、
雀のように前に進み、
今日もまた酒宴をしている~
立派な宮廷の人々よ~

この酒宴で、伊勢の三重から来た采女は褒められ、たくさんの品物を賜りました。また、ヲドヒメちゃんと契りを交わした雄略天皇が喜びを爆発させて歌った歌。

水も滴るイイ女の、おまえ~
ほれ、オレのナニを握れ
ナニを握って、ぎゅうと握れ
固くなるまでしっかり握れ
ナニを握らせてやるオンナよ~

もはや、AVの世界。。まあ、酒宴で歌う歌で、戯れもあったのでしょうが。

それに対して、ヲドヒメちゃんが返した歌。

天下を統べる天皇の~
朝開ける戸にはお寄り遊ばれ、
夕開ける戸にはお寄り遊ばれ、
肘をかける脇息の下の板にでもなりたいものよ~
愛しいあなた~

粗相があればソッコー殺そうとする雄略天皇の気の短さは少し(>_<)ですが、皇后・ワカクサカちゃんと、新しく側室にしたヲドヒメちゃんがどうやら酒宴に同席し、二人とも楽しそうに歌を歌っているところなど、雄略天皇の人柄(あるいは恐怖による支配)でしょうか? はたまたワカクサカちゃんがよっぽどできた人か。恐妻家・仁徳天皇も羨ましがっていることでしょう。

※画像は、「袁杼比賣」Google画像検索結果のキャプチャー

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【関連キャラ】
雄略天皇 - 古事記後半の主役は、傍若無人な暴君
ヲドヒメ - 恥ずかしがり屋の姫、雄略に弄ばれる
ワカクサカ - 暴君・雄略を馭するほどのほっこり姫

【古事記の神・人辞典】
雄略天皇
ヲドヒメ
ワカクサカ
三重の采女

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