水歯別命15.履中天皇
15-2.水歯別王と曾婆可理


履中天皇が石上神宮で滞在中、弟の水歯別命(みずはわけのみこと)がやってきました。別の弟である墨江中王(すみのえのなかつのきみ=スミノエノナカツ)に殺されかけた履中天皇が曰く。

履中天皇「オマエもスミノエノナカツみたいに逆心抱いてんじゃね?」
水歯別命「滅相もございません。そのような心はございません」
履中天皇「じゃあ、それ証明して。今からスミノエノナカツを殺っちゃってきて」
水歯別命「仰せのままに」

ということで、水歯別命は難波の宮に行きます。履中天皇にとっては、裏切られた弟に対して、自分の手を汚さずに、別の弟に片付けさせようという腹。エゲツネー、腹黒。とかっ、思ってても言わない!

とにかく、水歯別命はまずスミノエノナカツの臣下で、隼人の曽婆訶理(そばかり=ソバカリ)を誑し込みます。

水歯別命「オマエの親分を殺せば、大臣にしちゃうよ」
ソバカリ「了解~」

そこでソバカリはスミノエノナカツがトイレで用を足している隙をついて、矛でスミノエノナカツを殺します。

…ここ、トイレで殺す意味ある? そこまでシモで押さなくても…

何はともあれ、水歯別命はソバカリを連れて、大和に戻ってきました。

その途中、水歯別命は思います。

水歯別命「ソバカリのヤツ、よく頑張ってスミノエノナカツを殺っちゃあくれたけど、主を裏切った不届き者だわな~。どうしよっかな~」

そうして、ソバカリには約束通り、一旦大臣に任命してあげ、その祝いの席で、上機嫌で酒を飲んでいるソバカリの隙を見計らって、水歯別命はソバカリの首を斬り落としました。

水歯別命「一度大臣にしてやって功に報い、裏切り者の不届き者ということで斬首。完ぺき! キリッ」

そうして翌日、水歯別命は、履中天皇のもとに馳せ参じました。その出発したところを近つ飛鳥(ちかつあすか)というようになりました。

大和に入って、少し気が変わりました。

水歯別命「今日はここでお祓いして、明日天皇のいる石上神宮に行こう!」

そこでその場所を遠つ飛鳥(とおつあすか)というようになりました。

翌日、石上神宮で履中天皇に謁見して曰く。

水歯別命「すべて片付きました! キリッ」
履中天皇「……(ふっふっふっ、ご苦労ご苦労)……」

めでたしめでたし。

この水歯別命が履中天皇亡き後に即位した反正天皇です。長身イケメンだったようです。

しっかし、このあたり、古事記には珍しく「女」は出てきません。

※画像は、「水歯別命」Google画像検索結果のキャプチャー

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【古事記の神・人辞典】
履中天皇
スミノエノナカツ
アチ
ソバカリ

反正天皇(水歯別命)

コゴト
ツノノイラツメ
カイノイラツメ
ツブラノイラツメ

オトヒメ
タカラ
タカベノイラツメ

允恭天皇

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