八田若郎女14.仁徳天皇
14-3.八田若郎女


それからしばらくして、仁徳天皇の皇后・石之日売命(いわのひめのみこと=イワノ)は新嘗祭の支度をするため、御綱柏(みつなかしわ)を採りに、紀伊国に行っている間、仁徳天皇は八田若郎女(やたのわきいらつめ=ヤタノ)と浮気しました。

皇后は御綱柏を船いっぱいに積んで帰ってきましたが、ある男が皇后の侍女に曰く。「天皇は近頃、八田若郎女を召して、朝夕いちゃついちゃっているよ。皇后さまがお知りになったら大変だね~、知らないから楽しく静かにご旅行されているんだね」

その侍女はすぐに皇后に報告。皇后は大変怒り、恨んで、その船いっぱいに積んだ御綱柏を全部海に捨ててしまいました。

皇后はそれから宮に帰ろうとせず、その船を難波の港にとどめずに、堀江をさかのぼって、山城国(現 京都府)に行きました。そして歌います。

山城の川をさかのぼっていくと~、
川のほとりにさしぶの木が生い立っている~
そのさしぶの木の下に~、
葉の広い、神聖な椿の木がある~
その椿の花は照り輝いている~、
その葉は広くて美しい~
その椿のように広い心、
浮気な心を持った大君よ~

さらに山城から方向を換えて回り道して、奈良山の入口に来た時にまた歌います。

山城の川をさかのぼっていくと~、
奈良を過ぎ、もっと南の大和を過ぎて~
私が見たいと思っているのは葛城~
その高い宮に私の故郷がある~

そうしてまた山城に戻り、筒木にいる百済系渡来人・奴理能美(ぬりのみ)の家に滞在しました。

仁徳天皇は戻ってこない妻イワノを心配し、山城から旅に出たと聞いて、鳥山という舎人を遣わして、皇后に歌を送りました。

山城で追いつけ、鳥山よ。
追いつけ、追いつけ。
オレっちの可愛い妻に追いついて、
会ってくれよな。

また続いて、和邇臣口子(わにのおみくちこ)を遣わして、歌を送りました。

神の山の高いところに~、
オオイコの原がある~
オオイコ、つまり大きな猪の腹にある肝~、
その肝が並んでいる心~
その心だけでも、
私のことを思ってくれないか~

さらに仁徳天皇は歌います。

山城の女が、
木の鍬で栽培した大根~、
その大根のように、
真っ白なお前の腕を絡めなかったのなら~
知らなかったと同じことだよ~

※画像は、「八田若郎女」Google画像検索結果のキャプチャー。

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【関連キャラ】
仁徳天皇 - 古事記中盤の主役はやはり女好きの御仁
イワノ - 古代日本最強の姫は、史上初のツンデレ?
ヤタノ - 女好き仁徳天皇を待ち続ける温厚な姫

【古事記の神・人辞典】
仁徳天皇
イワノヒメ
ヤタノ

奴理能美
鳥山
クチコ

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