
13-10.秋山の下氷壮夫と春山の霞壮夫
妻を追って日本まで来たものの、果たせずに但馬国(現 兵庫県)に土着した、新羅国(しらぎのくに)の王の子・天日矛(あめのひぼこ)。天日矛が日本に持ってきた八種の宝が、出石(いずし)の八前大神(やまえおおかみ)という神になります。
その八前大神の娘に出石乙女(いずしのおとめ=イズシオトメ)というみめ麗しい女神がおりました。多くの神々がこの女神を娶りたいと考えましたが、みな断られました。
ここに二人の兄弟が登場します。兄は秋山之下氷壮夫(あきやまのしたひおとこ=アキヤマノシタヒ)、弟は春山之霞壮夫(はるやまのかすみおとこ=ハルヤマノカスミ)です。
兄・秋「イシズオトメに求婚したけどダメだった。。。。オマエはどう?」
弟・春「はっはっはっ、イシズオトメと言ってもたかが女、オレっちがその気になればイチコロよ」
兄・秋「オマエがイシズオトメをゲットできたら、酒と山海珍味、たらふくくれてやんよ」
弟・春「おう、いいともよ。ご馳走、たくさん用意しといてくれや」
威勢よく兄には啖呵を切りましたが、一人ではどうしようもない弟のハルヤマノカスミ。そこで母親に事情を話し協力を求めます。
母親は山から藤の葛を取ってきて、それで衣服を織りあげます。ハルヤマノカスミはそれを着てイシズオトメの前に出ると、不思議なことに、イシズオトメはホントにイ・チ・コ・ロ、二人はめでたく夫婦になりました。
ところが、これを嫉んだ兄アキヤマノシタヒは賭けを反故にして、酒と山海珍味を弟に渡しません。
弟はキレますが、自分ではどうすることもできずに、また母親に相談します。母親曰く「約束を破るとは、不届きものめが!」と、兄に対して呪いをかけます。
その呪いが効いて、兄アキヤマノシタヒは病を得て、8年間も床に伏せることになりました。みるみる痩せ細り、さすがに強情を張れなくなって、母親に許しを請います。そこで呪いは解かれ、兄は元通りになりました。
春にはしっかり種まきして、豊作をお祈りするので、秋は約束を違わず、豊作にしてね、でないと祟るよ、という、神の賭け事の説話。
※画像は、「出石八前大神」Google画像検索結果のキャプチャー。
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・アキヤマノシタヒ
・ハルヤマノカスミ
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