
12-1.神功皇后の神がかり
倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)の子・仲哀天皇、その皇后である息長帯比売命(おきながたらしひめのみこと=神功皇后)はその時、神懸りの状態でした。
仲哀天皇は筑紫国(現 福岡県)の香椎宮(かしいのみや)にいて、熊襲国(くまそのくに)を征伐しようとしていた時ですが、天皇が琴を弾き、建内宿禰大臣(たけうちのすくねのおおおみ=建内宿禰)が前の庭にて、神のお告げをうかがっていました。

神功皇后(神懸り)「西の方に国がある。その国には、金銀をはじめ、目を輝かさせるような、数々の珍しい宝物がある。わしは今、お前にその国を与えようと思う」
仲哀天皇「……高い山に登って西の方を見ても、さっぱり国なんか見えず、ただ広々とした大海があるだけ。もしかして、嘘つきなカミさま?」
そう言うと仲哀天皇は琴を押しのけ、弾こうとせず、黙って座り込んでしまいました。
神功皇后(神懸り)「お前のような者は、この国を統治する資格はない。さっさと黄泉の国へ行くがよい」
そこで、建内宿禰は取り持とうとして曰く。

それで仲哀天皇はやっとその琴を取り寄せて、元のように弾き始めましたが、しばらくしてその琴の音が聞こえなくなりました。部屋に火をともして見てみると、すでに亡くなっていました。
英雄(? 暴れん坊?)・倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)の子・仲哀天皇、あっけなく退場す。
さて、神罰(と言うか、見え見えの謀サ…えっっほん)による天皇の死。
人々は驚き、恐れて、仲哀天皇の亡骸を殯宮(あらきのみや)に安置して、国中から神様に捧げる様々な品物を集めました。
さらに、下記の様々な罪を探し出し、その罪を払う大祓の祭りをしました。
・生剥(いきはぎ)…馬の皮を生きながら剥ぐこと
・逆剥(さかはぎ)…馬の皮を尻の方から剥ぐこと
・畔放(あはなち)…田に張っている水を、畔を壊すことで流出させること
・溝埋(みぞうめ)…田に水を引くための溝を埋めることで水を引けないようにする
・糞戸(くそへ)…神事に際して祭場を糞などの汚物で汚すこと
・上通下通婚(おやこたわけ)…実子との相姦や各種の不倫
・馬婚(うまたわけ)…馬との獣姦
・牛婚(うしたわけ)…牛との獣姦
・鶏婚(とりたわけ)…鶏との獣姦
・犬婚(いぬたわけ)…犬との獣姦
これらは天つ罪・国つ罪の一部が取り出されたり、その一部がまとめられ、細分化されているものとなっています。
糞戸は建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)が高天原で大暴れした際の出来事から発生していると言われています。古事記にはとかく「糞」が出てくる場合がありますが、このあたりとも関係していそうです。
※画像は、「仲哀天皇」Google画像検索結果のキャプチャー。
【関連記事】
・住吉神社(福岡市) - 三大住吉の一つ、全国2129社の住吉で最古、神話そのものの
【関連キャラ】
・神功皇后 - 三韓征伐の英雄は息子を溺愛する魔性の女?
・建内宿禰 - 応神の本当の父? 波乱呼ぶ伝説的人物
【古事記の神・人辞典】
・仲哀天皇
・神功皇后
・建内宿禰
・オオナカツヒメ
・香坂王
・忍熊王
・ホムヤワケ
・応神天皇
コメント