草薙の剣11.ヤマトタケル
11-8.思国歌


伊吹山の神々による雹攻撃に致命傷を負わされた倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)。何とか敗走を続けますが、さすがに足が弱ってきました。

倭建命(やまとたけるのみこと=ヤマトタケル)縦480pxヤマトタケル「オレの心はいつも天駆けていくような思いだったのに、今ではろくに歩けなくなってしまったよ。足が曲がってしもうた~」

と嘆いたところが、曲がるの意味から当芸、つまり多芸郡(たぎぐん=すでに消滅)。

さらに歩くが、わずかな距離でも息が上がる始末で、もはや杖なくして歩けないようになってしまいました。そのため、その時に通りがかった坂を杖衝坂(つえつきざか)といい、今の三重県四日市市采女にある急坂です。

それから尾津岬の一本松に、前に自分がここに忘れていった剣がそのまま置いてあったのを見つけ、詠んだ歌。

尾張に行く途中でちょっと飯休憩した尾津岬の一本松よ、
なあ、一本松、
もしお前が人であったならば、刀をつけてやろう、
着物を着せてやろう。どうだうれしいか~

さらに進むと、

ヤマトタケル「いや~、もう足痛いわ。足が三重に曲がってしまっとるがな。疲れたわ」

と言ったので、その地域を三重(みえ)というようになったということです。

さらに進んで、能煩野(現 三重県亀山市)に到着した際、故郷を思って読んだ歌。

大和は、日本の中で、最も高く秀でたところだ~
青々とした垣根のように、重なり合った山々に、
包まれた大和は素晴らしい~

さらに詠みます。

命が助かった人は、
幾重にも山に囲まれた、
平群の山の大きな樫の木の葉を、
かんざしに刺すがよい~

さらに詠みます。

ああ、懐かしい。
オレの家の方から雲が立ってきているな~

ここまで詠んで、病はいよいよ篤くなりました。そして。

美夜受比売(みやずひめ=ミヤズ)のところに置いてきた、
オレの草薙の剣。ああ、オレの剣、その剣よ。

と詠んで、亡くなりになりました。人々は早馬を立てて、都の景行天皇に報告しました。

※画像は、「草薙の剣」Google画像検索結果のキャプチャー。

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