10.垂仁天皇
10-2.ホムチワケ
さて、垂仁天皇が愛妻・沙本毘売命(さおびめ=サオビメ)との遺児・本牟智和気王(ほむちわけのみこ=ホムチワケ)の子育てに励みます。尾張国(現 愛知県)の相津に二股の杉というのがあったので、その木を切って二股の小舟を作り、それを都に持ってきて、大和の池に浮かべ、御子を遊ばせたりしています。
しかし、御子は体こそ大きくなって成長していきましたが、何もしゃべることがありませんでした。
ところが、空を飛んでいく白鳥の声を聞いて、「ううう、あああ」と、やっと初めて何かしゃべろうとしました。
そこで垂仁天皇は山辺大鶙(やまのべのおおたか)を遣わして、その鳥を捕まえようとしました。
山辺大鶙は白鳥を追い、紀伊国、播磨国、因幡国、丹波国、但馬国へ行き、今度は東に移って、近江国、美濃国、尾張国、信濃国と移動して、ようやく越国でその白鳥を捕まえることができました。
和歌山県→兵庫県(南西部)→鳥取県→京都府→兵庫県(北部)→滋賀県→岐阜県→愛知県→長野県→新潟県という大移動の末です。
しかしその白鳥を持ち帰っても、結局ホムチワケは何もしゃべろうとしません。
中国にもしゃべらない皇妃の伝説があり、非常に有名ですが、この説話はその影響を受けているのでしょうか。ただ、こちらはそんな悪者ではありませんが。
とにかく、心配でたまらない垂仁天皇は、「オレの宮を天皇の御殿のように直せば、御子は必ずしゃべるようになるだろう」という夢のお告げを聞きます。どの神の祟りだろうと、占ってみると、「出雲の大神」と出ました。
早速御子を出雲の大神の宮にお参りさせようとして、同行者を占いで求めたところ、曙立王(あけたつのみこ=アケタツ)と出ました。
選ばれたアケタツは、「この出雲の大神が、本当に効き目があるか確かめよう」と考えて曰く。
アケタツ「池の木に宿っている鷺は、(出雲の大神がホントであれば)落ちて死ね」
そう言うと、本当にその鷺は地に落ちて死にました。
アケタツ「(出雲の大神がホントであれば)生き返れ」
と言うと、本当にその鷺が生き返りました。さらに疑い深いアケタツは、葉の広い大きな樫の木にも同じように、枯らし、生き返らせ、ようやく得心して、菟上王(うなかみのみこと)とともに、ホムチワケと一緒に出雲に出立することになりました。
ただ、占いに「奈良山の方から行くと、足萎え(あしなえ)や盲(めしい)に会う。大阪の方からいってもやはり足萎え(あしなえ)や盲(めしい)に会う。紀伊の方はわきの道であるからよろしい」と出たので、敵対勢力に会わない、反対方向からぐるっと回って出雲に行くことになりました。当時まだまだ大和周辺は不穏地帯だったようです。
ホムチワケ一行が出雲に到着し、大神の宮に参拝し、都に帰ろうとしたところ、土地の者たちが斐伊川(ひのかわ)の中に黒い丸木の橋を作って仮宮を作ったので、一行はそこで泊まることになりました。
そこに、出雲国造(いずもこくそう)の先祖に当たる岐比佐都美(きひさつみ)というものが、青葉の山を飾って作り、川下に立て、ご馳走を供したところ、物言わぬ皇子が突然曰く。
ホムチワケ「川下の青葉の山は、山のように見えて山ではない。オオクニヌシ(=出雲の大神)の祭場ではないか?」
一行はびっくり。ホムチワケがしゃべったので、喜んですぐ早馬を立てて、天皇に報告に行きました。
その夜、ホムチワケは肥長比売(ひながひめ)と一夜を共にします。この女性、いきなりの登場で、誰? ということですが、よくは分かりません。その最中、ひそかにこの女性の様子をうかがうと、ヘビでした。もっとよく分かりません。
驚いたホムチワケはおびえて逃走~ 悲しんだ肥長比売は海を照らして、船に乗って追いかけてきました。ホムチワケはさらに恐怖して、山の低くなっているところから船を飛び越えさせて、都に戻りました。
なぜこのような説話が挿入されているのかイミフですが、う~ん、未知との遭遇。肥長比売はエイリアンで、ホムチワケは宇宙船に追撃されているかのような描写です。。「覗くなパターン」の一つでしょうか。
さて、報告を聞いた垂仁天皇はホムチワケが喋り始めたことに驚喜し、菟上王を出雲に再度派遣して、大神の宮の修復にあたらせました。エイリアンによる追撃戦の逸話は無視されており、この後も出てきません。。
※画像は、「肥長比売」Google画像検索結果のキャプチャー。
【関連記事】
・【古事記の傾向と対策】“合体”が多すぎないか、古事記 「だが、それがイイ!」
・曾枳能夜神社 - 『古事記』記載社か、境内社含め風土記にも記載される式内の名社
・那売佐神社 - 出雲神話の根幹の一つ、オオクニヌシ正妻スセリ姫の生誕地近くの式内古社
・久久比神社 - 全国唯一のコウノトリ伝承ある式内社、平成の世にも奇跡、子宝御守
・中嶋神社(豊岡市) - 「菓祖・菓子の神」田道間守命を奉斎、室町中期の本殿、4月に菓子祭
・青渭神社(調布市) - かつては広大な社地に大池、湧き水が青波、水の神・蛇神とも
・波太神社(阪南市) - 垂仁朝の鳥取部に創祀、近世の社殿が重文、境内に鳥取戎神社
・花長上神社 - 出雲の女神を祀る、花鹿山が御神体山、江戸時代までは七社明神
・阿豆良神社 - しゃべらない垂仁皇子、出雲の神を奉斎して創祀、吾蔓大明神とも
【関連キャラ】
・垂仁天皇 - 皇后をNTRされ、救われない姫を誕生させる
・ホムチワケ - 父は誰?しゃべらない皇子のイミフ顛末
・オオクニヌシ - 国つ神のドンは破天荒な女好き
・ヒナガヒメ - エッチの時に覗かれ正体がバレた姫
【古事記の神・人辞典】
・垂仁天皇
・ホムチワケ
・オオタカ
・アケタツ | ウナガミ
・オオクニヌシ
・キヒサツミ
・ヒナガヒメ
・オオクニヌシ
10-2.ホムチワケ
さて、垂仁天皇が愛妻・沙本毘売命(さおびめ=サオビメ)との遺児・本牟智和気王(ほむちわけのみこ=ホムチワケ)の子育てに励みます。尾張国(現 愛知県)の相津に二股の杉というのがあったので、その木を切って二股の小舟を作り、それを都に持ってきて、大和の池に浮かべ、御子を遊ばせたりしています。
しかし、御子は体こそ大きくなって成長していきましたが、何もしゃべることがありませんでした。
ところが、空を飛んでいく白鳥の声を聞いて、「ううう、あああ」と、やっと初めて何かしゃべろうとしました。
そこで垂仁天皇は山辺大鶙(やまのべのおおたか)を遣わして、その鳥を捕まえようとしました。
山辺大鶙は白鳥を追い、紀伊国、播磨国、因幡国、丹波国、但馬国へ行き、今度は東に移って、近江国、美濃国、尾張国、信濃国と移動して、ようやく越国でその白鳥を捕まえることができました。
和歌山県→兵庫県(南西部)→鳥取県→京都府→兵庫県(北部)→滋賀県→岐阜県→愛知県→長野県→新潟県という大移動の末です。
しかしその白鳥を持ち帰っても、結局ホムチワケは何もしゃべろうとしません。
中国にもしゃべらない皇妃の伝説があり、非常に有名ですが、この説話はその影響を受けているのでしょうか。ただ、こちらはそんな悪者ではありませんが。
とにかく、心配でたまらない垂仁天皇は、「オレの宮を天皇の御殿のように直せば、御子は必ずしゃべるようになるだろう」という夢のお告げを聞きます。どの神の祟りだろうと、占ってみると、「出雲の大神」と出ました。
早速御子を出雲の大神の宮にお参りさせようとして、同行者を占いで求めたところ、曙立王(あけたつのみこ=アケタツ)と出ました。
選ばれたアケタツは、「この出雲の大神が、本当に効き目があるか確かめよう」と考えて曰く。
アケタツ「池の木に宿っている鷺は、(出雲の大神がホントであれば)落ちて死ね」
そう言うと、本当にその鷺は地に落ちて死にました。
アケタツ「(出雲の大神がホントであれば)生き返れ」
と言うと、本当にその鷺が生き返りました。さらに疑い深いアケタツは、葉の広い大きな樫の木にも同じように、枯らし、生き返らせ、ようやく得心して、菟上王(うなかみのみこと)とともに、ホムチワケと一緒に出雲に出立することになりました。
ただ、占いに「奈良山の方から行くと、足萎え(あしなえ)や盲(めしい)に会う。大阪の方からいってもやはり足萎え(あしなえ)や盲(めしい)に会う。紀伊の方はわきの道であるからよろしい」と出たので、敵対勢力に会わない、反対方向からぐるっと回って出雲に行くことになりました。当時まだまだ大和周辺は不穏地帯だったようです。
ホムチワケ一行が出雲に到着し、大神の宮に参拝し、都に帰ろうとしたところ、土地の者たちが斐伊川(ひのかわ)の中に黒い丸木の橋を作って仮宮を作ったので、一行はそこで泊まることになりました。
そこに、出雲国造(いずもこくそう)の先祖に当たる岐比佐都美(きひさつみ)というものが、青葉の山を飾って作り、川下に立て、ご馳走を供したところ、物言わぬ皇子が突然曰く。
ホムチワケ「川下の青葉の山は、山のように見えて山ではない。オオクニヌシ(=出雲の大神)の祭場ではないか?」
一行はびっくり。ホムチワケがしゃべったので、喜んですぐ早馬を立てて、天皇に報告に行きました。
その夜、ホムチワケは肥長比売(ひながひめ)と一夜を共にします。この女性、いきなりの登場で、誰? ということですが、よくは分かりません。その最中、ひそかにこの女性の様子をうかがうと、ヘビでした。もっとよく分かりません。
驚いたホムチワケはおびえて逃走~ 悲しんだ肥長比売は海を照らして、船に乗って追いかけてきました。ホムチワケはさらに恐怖して、山の低くなっているところから船を飛び越えさせて、都に戻りました。
なぜこのような説話が挿入されているのかイミフですが、う~ん、未知との遭遇。肥長比売はエイリアンで、ホムチワケは宇宙船に追撃されているかのような描写です。。「覗くなパターン」の一つでしょうか。
さて、報告を聞いた垂仁天皇はホムチワケが喋り始めたことに驚喜し、菟上王を出雲に再度派遣して、大神の宮の修復にあたらせました。エイリアンによる追撃戦の逸話は無視されており、この後も出てきません。。
※画像は、「肥長比売」Google画像検索結果のキャプチャー。
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・花長上神社 - 出雲の女神を祀る、花鹿山が御神体山、江戸時代までは七社明神
・阿豆良神社 - しゃべらない垂仁皇子、出雲の神を奉斎して創祀、吾蔓大明神とも
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・オオクニヌシ - 国つ神のドンは破天荒な女好き
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【古事記の神・人辞典】
・垂仁天皇
・ホムチワケ
・オオタカ
・アケタツ | ウナガミ
・オオクニヌシ
・キヒサツミ
・ヒナガヒメ
・オオクニヌシ
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