
8-3.八咫烏と大和進出
熊野でのピンチを脱した神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコ=神武天皇)が先に進もうとすると、高木神(=高御産巣日神(たかみむすひのかみ=タカミムスヒノカミ))の声がどこからともなく聞こえて来て曰く。
高木神「ここから奥へは進んではならぬ。危険がいっぱいじゃ。八咫烏(やたがらす)を遣わす。ヤツが道案内してくれるはずじゃ。ヤツが飛ぶ方向に進めばよい」

神武天皇「あんた、誰?」
ある神「国つ神だっよ~。名前は贄持之子(にえもつのこ)だす」
神武天皇がさらに先に進むと、尻尾のある人が井戸の中から出てきました。その井戸から光が差しています。
神武天皇「あんた、誰?」
ある神「国つ神だっよ~。名前は井氷鹿(いひか)だす」
さらにまた山に分け入っていくと、尻尾のある人に出会った。なぜか石を押し分けての登場。

ある神「国つ神だっよ~。名前は石押分之子(いわおしのわくのこ)だす。天つ神の御子がおいでと聞いて迎えに来たよ~」
そうしてさらに山を踏み越え、地を穿っていくと、宇陀(うだ)に到着しました。この宇陀には、兄宇迦斯(えうかし)・弟宇迦斯(おとうかし)の兄弟がいました。神武天皇はまず八咫烏を使者に立てて、この兄弟と接触します。
すると兄宇迦斯は、鏑矢を射て、八咫烏を追い払い曰く。
兄宇迦斯「神武天皇の軍を迎え撃つぞ!」
が、思うように軍が集まらず、失敗。
兄宇迦斯は降参して、神武天皇に仕えようとするのに見せかけて、神武天皇を謀殺しようとします。神武天皇のために大きな御殿を作って献上すると見せかけて、神武天皇がその中に入ると仕掛けが作動して圧死させるというもの。
しかし弟宇迦斯が神武天皇のところにいち早く参上して、兄の企みを暴露してしまいます。「献上しようとしている御殿は仕掛けがあって、神武天皇はん、殺そうとしてまっせ~」
そこで、神武天皇は道臣命(みちのおみのみこと)と大久米命(おおくめのみこと)の二人に兄宇迦斯の処罰を任せます。「おまえっ、バレバレ。おまえがその御殿の中入れやっ」。
そうして兄宇迦斯は武装した兵隊に囲まれながら御殿の中に無理やり入れられて、自分で作った仕掛けに自分で引っかかって圧死してしまいました。
道臣命と大久米命はさらにその死体を引きづり出して、ズタズタに切り裂きました。
一方、弟宇迦斯はご馳走を用意して神武天皇とその一行(軍隊)を歓待、酒も入って気分がよくなったみんなが歌った歌が記録されています。下記はその超訳。
宇陀の高い屋敷にマグロを捕まえる罠をこしらえた。
マグロはこなかったけど、でかい鯨が罠にかかった。
古い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
タチソバのように身の少ないところをたくさん削ってやろう。
若い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
ヒサカキのように、実の多いところをたくさん削ってやろう。
ええい、糞くらえ。これは怒りの言葉。
ああっ、糞くらえ。これは嘲笑い。
マグロはこなかったけど、でかい鯨が罠にかかった。
古い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
タチソバのように身の少ないところをたくさん削ってやろう。
若い妻がご馳走欲しいと言ったなら、
ヒサカキのように、実の多いところをたくさん削ってやろう。
ええい、糞くらえ。これは怒りの言葉。
ああっ、糞くらえ。これは嘲笑い。
……あまり品の良い歌とも思えませんが。。
※画像は、「神武天皇 八咫烏」Google画像検索結果のキャプチャー。
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・八咫烏 - 三本足じゃねーよ 便利な道案内のカラス
【古事記の神・人辞典】
・タカミムスヒノカミ - 造化の三神、別天神(ことあまつかみ、別天津神とも)の一柱。
・神武天皇
・八咫烏
・ニヘモツノコ
・イヒカ
・イハオシワクノコ
・エウカシ
・オトウカシ
・道臣命
・大久米命
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