豊玉比売7.海幸彦と山幸彦
7-4.トヨタマの出産


さて、火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))が義父・綿津見神(わたつみのかみ=ワタツミ)の助けを借りて、兄・火照命(ほでりのみこと=海幸彦(うみさちひこ))を服従させてからほどなく、嫁でワタツミの娘・豊玉比売(とよたまひめ=トヨタマ)が海の中にあるワタツミの宮殿から陸へ、山幸彦のもとにやってきました。

豊玉比売(とよたまひめ=トヨタマ)縦480pxトヨタマ「あたし~、できちゃったみたいで~。生むけど、これは天つ神の御子様だから~、海の国じゃなくて、こっちで生むべきと考えて~、きちゃった。 テヘッ」

こうして、海辺に出産のための小屋がたてられましたが、その小屋が完成する前に、陣痛が。。

トヨタマ
「うっうっうっ、生まれる~」

未完成でしたが出産のための小屋に入っていきました。そこで山幸彦に曰く。

火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))縦480pxトヨタマ「海の国のもんは~、出産する時~、元の体になって生むんだよね~、だ・か・ら、小屋の中覗かないでね キリッ」

キタコレ! ktkr! 毎度のパターン。

まあ、覗きますわな。覗く、山幸彦。で、お決まり通り、びっくり仰天。何とトヨタマは大きな大きなワニでした。大きなワニが子供産むためにのたうち回っているのを目撃した山幸彦は、恐れおののき、逃走~

山幸彦に覗かれたことに気付いたトヨタマは、羞恥して曰く。

玉依姫(たまよりびめ=タマヨリ)縦480pxトヨタマ「ああ~、これから海と陸行き来しようと思ったけど、もう恥ずかしくって、できないよ~」

そう言うと、子どもを置いて、海と陸の道を塞ぎ、海の国へ帰って行きました。

子どもは天津日高日子波限建鵜草葺不合命(あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと=ウガヤフキアエズ)と名付けられ、トヨタマの妹・玉依姫(たまよりびめ=タマヨリ)が養育することになりました。

ただ姿を見られて口惜しい思いはあるものの、トヨタマの山幸彦への愛情は変わらず、トヨタマはその気持ちを歌にしたためて、タマヨリに頼んで山幸彦に渡してもらっていました。その歌が下記。

赤い玉は、それをつなぐ緒までも光って見えますが、
白玉のようなあなたのお姿はとても清く貴いことですわ。
ラブ

山幸彦も答えて詠んだ歌が下記。

沖の鳥、鴨がたくさんいる島で、
わたしが添い寝したあなたのことは、
一生忘れないからね~

山幸彦は高千穂(たかちほ)の宮に580年住んでいましたが、その後亡くなりました。天孫ニニギの家系、徐々に寿命が短くなっていくのでしょう。。大山津見神(おおやまつみのかみ=オオヤマツミ)の、の・ろ・い

アシカはいましたが、古来より今まで、日本にワニはいません。ワニが時々古事記に登場していますが、昔はサメ、あるいはワニザメではないかとも言われてきたようです。最近では当時、大陸から正確な知識を得ていたとして、「ワニはワニだに」という方が若干優勢のようです。

※画像は、「豊玉比売」Google画像検索結果のキャプチャー。

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【関連キャラ】
トヨタマ - 竜宮城の姫、神武の祖母はワニだった 
山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
タマヨリ - 神武の母 祖母はワニだったが、母は?
ワタツミ - 竜宮城の王で山幸彦のドラえもん的存在

【古事記の神・人辞典】
オオワタツミ - 神産みで生まれた、ワタツミと同体とされる神
トヨタマ
タマヨリ
ウガヤフキアエズ

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