
7-3.海幸彦の服従と山幸彦の勝利
火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))が綿津見神(わたつみのかみ=ワタツミ)の宮殿に来て、その娘、豊玉比売(とよたまひめ=トヨタマ)と結婚してハッピーだったある日、突然、ここに来た理由に思い当たり、大きなため息を吐きます。

ワタツミ「ほうか、じゃあ、聞いてみるべ」ワタツミ「大きなため息をなされたそうじゃが、何かございましたかな。っていうか、なぜこの国に来られたんでしたっけ?(えっ、それが3年後の質問?…)」
山幸彦「じつは、かくかくしかじか。に~ちゃんの釣り針失くして困っているんだよね~」
そこでワタツミは海の魚たちをたくさん呼び寄せ曰く。「あ~、お前たちの中で、こんな釣り針知っているヤツ、おらんか?」
魚一同「そういえば、赤ダイのヤツが喉にトゲが引っ掛かって、ものが食えないと嘆いていやしたでごやす。きっそ、その釣り針じゃないっすかね~」

ワタツミ「これを兄ちゃんに返す時、“おぼつかない針、おんぼろ針、貧乏針、なくなる針!”と呪文唱えて、手を後ろにして渡すと、効果抜群っす」
さらにワタツミは先を見据えて山幸彦に策を授けます。
ワタツミ「兄ちゃんが高いところに田んぼ作ったら、あんさんは低いところに作るがよがす。兄ちゃんが低いところに田んぼ作ったら、あんさんは高いところにね。わての方で水の調整しちゃるから、3年もすれば、兄ちゃん貧乏間違いなしよね」
さらにさらに悪代官、もといワタツミは策を授けます。

と言うと、潮満玉と潮乾玉を山幸彦に授けました。まさに、ドラえも、げふげふ、ワタツミのひみつ道具ミュージアム状態。
また山幸彦を陸に返すために、一番速く泳げるサメを見つけ出し、そのサメに「安全運転でお運び申せ」と命じ、そのサメも命令を忠実に守って、山幸彦を陸に送り届けました。山幸彦は感謝の印に、そのサメに小刀を授けます。

海幸彦「ごめ~ん、もうしません。これからあなたの忠実なしもべになるよ~」
山幸彦「……」
何はともあれ、海幸彦と山幸彦の兄弟の戦い、天孫一派が隼人を服従させる過程を描いたものと言われていて、もちろん、兄・海幸彦は隼人の祖という位置づけ。山幸彦に潮満玉でやられた海幸彦が溺れて海でもがいている姿が、後に隼人舞(隼人特有の舞)になったそうな。
※画像は、「隼人舞」Google画像検索結果のキャプチャー。
【関連記事】
・【古事記を彩る姫たち】トヨタマ - 積極的すぎる竜宮城の姫、神武の祖母の正体とは?
・隼神社(奈良市) - 隼人の流れを汲む者? 春日神を守る脊属で、強力な攘災神
・浜殿神社 - 江戸前期の元禄までは海岸線に鎮座、参道脇に豊玉彦尊の墓
・月讀神社(京田辺市) - 平安期の創祀、幕末に石清水八幡が避難、伝統の大住隼人舞
【関連キャラ】
・山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
・ワタツミ - 竜宮城の王で山幸彦のドラえもん的存在
・トヨタマ - 竜宮城の姫、神武の祖母はワニだった
・海幸彦 - 弟と竜宮城勢力に、屈服させられる隼人
【古事記の神・人辞典】
・山幸彦
・オオワタツミ - 神産みで生まれた、ワタツミと同体とされる神・トヨタマ
・海幸彦
コメント