
6-5.ニニギの妻・サクヤ
邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)はある時、笠沙の岬(かささのみさき。鹿児島県川辺群笠沙町の野間岬)でみめ麗しい女神に出会います。天孫降臨の直後、ニニギがあえて笠沙の岬に言及したのはこのための伏線だったのかもしれません。
ニニギ、さっそくナンパして曰く「ねえねえ、名前なんて言うの?」

ニニギ「結婚しちゃおうよ」
サクヤ「父と相談してからじゃないと……」
ニニギ、直球~。
さて、そのサクヤの父・オオヤマツミはイザナギとイザナミの神産みの時に生まれた神様の一柱。オオヤマツミの子供には、サクヤのほか、スサノヲがヤマタノオロチを退治した時に嫁としてゲットした櫛名田比売(くしなだひめ)の両親である足名椎命・手名椎命(アシナヅチ・テナヅチ)がいます。
結構由緒正しい風に見えるオオヤマツミも、同じイザナギ・イザナミの子とはいえ、三貴神の、しかもその筆頭であるアマテラス、その直系のニニギの申し出にはびっくり。ニニギの使者に対して、一も二もなく大喜びして曰く。

として、たくさんの宝物と同時に二人の娘をニニギに送りました。
しかししかし、サクヤのねーちゃんイワナガはサクヤに似ても似つかない醜さ。ニニギ、困った挙句、イワナガだけオオヤマツミのもとに返してしまいます。まあ、面食いはやむを得ないとしても、度量的にはどうなの……
返されたイワナガを受け取った父オオヤマツミは恥ずかしくも、少し怒りもあって曰く。
オオヤマツミ「もしイワナガを妃にすれば、天の御子様のお命は、雪が降り、風が吹いても常に岩のように永遠に不滅だったのに。いくら美しいとはいえ、サクヤ一人をとどめたということは、天の御子様のお命は、木の花に寿命があるごとくになってしまうでしょう」
ちょっとした呪詛じゃね? というか、これでその後の天皇には寿命があるようになってしまった、という説明譚になっているんですね。降臨したからには、まあ高天原とは違うルールになるのはやむを得ないか。。
さて、早速サクヤは身ごもります。これに対して、ニニギ、それ言っちゃーいけないんじゃ、ということを曰く。

ニニギの指摘もあながち的外れではないのですが、そこは天の御子様。高天原の方々は、常人には理解できない(神様なので当たり前ですが)ほどサクッと子供ができているのを、ニニギは忘れているのでしょうか。ともかく、サクヤはこのニニギの言葉に大変傷ついてしまいます。そして誓約(この場合も、「うけい」。つまり占いです)します。
サクヤ「もしこの子が国つ神の子であれば、無事には生めないでしょう。ニニギ様の子であれば、何があっても無事に生めるはず」
サクヤももちろん必死ですが、誓約しなければならない何らかの疑惑でもあったのでしょうか、とツッコみたくなります。。。出産のための家(八尋殿)の中に入ったサクヤはその出入口をすべて土で塗り固めて塞いで、その家に火をつけたのです。その燃え盛る火の中で三柱の神様を出産しました。
・火照命(ほでりのみこと=海幸彦(うみさちひこ))
・火須勢理命(ほすせりのみこと)
・火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))
火の中で生んだので、火の神様が生まれましたが、燃え盛る火の中でも出産できたのだから、この三柱は間違いなくニニギの子供だとされ、本件これにて一件落着。
※画像は、「木花之佐久夜毘売」Google画像検索結果のキャプチャー。
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【関連キャラ】
・ニニギ - ご存知天孫は、女心を傷つける女泣かせ?
・サクヤ - 天孫ニニギにお腹の子を疑われる姫
・イワナガ - 天孫ニニギにブサイクと言われる姫
・オオヤマツミ - 天皇家を呪詛って寿命を与えた怒ると恐い神
・山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
・海幸彦 - 弟と竜宮城勢力に、屈服させられる隼人
【古事記の神・人辞典】
・ニニギ
・オオヤマツミ
・サクヤ
・イワナガ
・海幸彦
・ホスセリ
・山幸彦
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