
5-3.タケミカヅチとコトシロヌシ
葦原の水穂の国(あしはらのみずほのくに=日本の国)をどうしても息子に治めさせたい高天原の天照大御神(あまてらすおおみかみ=アマテラス)。すでに二柱の神様を派遣しているのに効果なし。さすがに少しお冠でしょうか?
アマテラス「どうすりゃいいの?」

オモイカネ「最終兵器・天之尾羽張(あめのおはばり=アメノオハバリ)がよいでしょうね」
アメノオハバリは伊邪那岐神(いざなぎのかみ=イザナギ)が、(その時は)愛していたイザナミを死に追いやった自分の子でもある火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を切った剣(十拳剣)そのもの。覚えていると思いますが、火之迦具土神を十拳剣で斬った際もその血などから様々な攻撃属性の神様が生まれていますが、それらも含めて、アメノオハバリの一党です。
オモイカネ「もしアメノオハバリが断るんなら、その子・建御雷之男神(たけみかづち=タケミカヅチ)にしましょっ。アメノオハバリ、道を塞いだりしていて、ちょっと反抗的なところもあるから。まあ、天迦久神(あめのかくのかみ=アメノカクノカミ)に説得させましょうか」

アメノオハバリ「へっへーい。アマテラス様に従います。も~う絶対服従っす」
とあっけなく説得完了。
アメノオハバリ「ただ、やっぱり息子のタケミカヅチを行かせた方がよいっす。あっしが生み出した、すべての攻撃能力身に着けているんで、強いでっせー。いわば最終兵器・改、まず間違いなしっす!」
そこでアマテラスは天鳥船(あめのとりふね=アメノトリフネ、別名にトリノイハクスブネノカミ)とともに、タケミカヅチを葦原の中つ国(高天原と黄泉の国の間にある世界、すなわち日本)に派遣しました。
タケミカヅチと天鳥船の二柱の神様は出雲の伊耶佐(いざさ)という小浜(稲佐の浜)に降り立ちます。長い剣を抜き、海の波に逆さまに刺し立てました。そして、その前にあぐらをかいて座ると、大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)に向かってこう言いました。
タケミカヅチ「お前が支配するこの葦原の中つ国なんだが、高天原のアマテラス様が自分の息子に治めさせることに決めたんだけど、どう思う?」
オオクニヌシ「……(っちょっと、、どんだけジャイアン?)……即答できないっすね。まずは息子・事代主神(ことしろぬしのかみ=コトシロヌシ)に聞いてもらえますかね」
天鳥船がコトシロヌシを連れてきて、コトシロヌシに事情をかくかくしかじか。そしてオオクニヌシに曰く。

と言って、コトシロヌシは乗ってきた船を踏みつけて、逆手で手を打っておまじないをして隠れてしまいました。コトシロヌシは言霊の神でもあるので、その言葉は神託ではあるのですが、最後の所作は明らかに呪、、っうっっほおん。
タケミカヅチ「コトシロヌシは聞いた通りだよ。ほかは?」
オオクニヌシ「あとは建御名方神(たけみなかたのかみ=タケミナカタ)がいます。これで子は全部です」
現地妻作りまくったオオクニヌシなので、古事記上でも子だくさんです。人数的に二人だけということはないはずなのですが、高天原軍に対抗できそうな子供はこの二人だけだったのでしょう。
そこにタケノミナカタが1000人ほどでなければ動かせないような大きな岩を、掌で転がしながら来て曰く。

と、タケミナカタはタケミカヅチの手をむんずとつかみました。すると、変~身~、とばかりにタケミカヅチの手は氷柱のように凍ってしまいました。驚いたタケノミナカタは最初の威勢も何のその、gdgdに、、、そしてタケミカヅチ曰く「今度はお前の手を握ってやんよ」
タケミカヅチにあまりにも強力に握られたため、タケミナカタの手はふにゃふにゃになってしまったので、タケミカヅチはえいっと、タケミナカタを投げ飛ばしてしまいました。受け身を取ったタケミナカタは恐れおののいてそのまま逃走~
しかしタケミカヅチはタケミナカタを猛追、タケミナカタは故郷の新潟県・糸魚川を頼ったかもしれませんが、そこも支えきれなかったようで、結局信濃の国、今の長野県の諏訪湖まで追い詰められました。諦めたタケミナカタがタケミカヅチに泣きながら詫びて曰く。
タケミナカタ「ほんっと、すみません。調子コキました。勘弁してください。殺さないで。この諏訪からもうどこにも行きませんから。父オオクニヌシ、兄コトシロヌシの言うことにも逆らわないっす。葦原の中つ国は高天原の皆さんのものに決まっているじゃないっすか」
そうしてタケミナカタを祭ったのが今も残る諏訪大社です。
※画像は、「建御雷之男神」Google画像検索結果のキャプチャー。
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【古事記の神・人辞典】
・アマテラス
・アメノカクノカミ
・アメノオハバリノカミ
・タケミカヅチ
・トリノイハクスブネノカミ
・オオクニヌシ
・コトシロヌシ
・タケミナカタ
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