
5-2.天若日子の葬式と和歌
高天原の天照大御神(あまてらすおおみかみ=アマテラス)発案の葦原の水穂の国(あしはらのみずほのくに=日本の国)奪取作戦で、日本に派遣された天若日子(あめのわかひこ=アメノワカヒコ)が、高天原を裏切って、オオクニヌシの娘・下照比売(したてるひめ=シタテル)と結婚して幸せだったけど、結局は高天原に殺られちゃった件。

それを聞いたアメノワカヒコの親父・天津国玉神(あまつくにたまのかみ=アマツクニタマノカミ)や、アメノワカヒコの高天原にいた妻(こちらが正妻?)とその子供も悲しくなってきちゃって、葦原の中つ国(高天原と黄泉の国の間にある世界、すなわち日本)に降りてきました。
美濃の国(みののくに=現在の岐阜県南部)の長良川の河上にある喪山(もやま)と呼ばれる山で、アマツクニタマノカミらはアメノワカヒコの葬儀を行っていました。そこに、オオクニヌシの息子で、シタテルちゃんの兄・阿遅鉏高日子根神(あぢすきたかひこね=アヂスキタカヒコネ)も、親友だったアメノワカヒコを弔いたいと参列しました。

これにぶちギレたアヂスキタカヒコネが曰く「アメノワカヒコは親友だったから葬式に来てやったのに、なんでオレが汚い死人と間違われないといけないんだ!」
叫ぶと同時にアヂスキタカヒコネはアメノワカヒコの葬式のための小屋などを破壊しまくりました。この破壊活動で使った剣は、「大量(おおはかり)」や「神度の剣(かむどのつるぎ)」などと伝わっております。
さて、アヂスキタカヒコネが怒って飛び去っていくとき、妹のシタテルちゃんが兄のことを歌に詠みました(超訳)。
この歌が、夷振(ひなぶり)と呼ばれ、大歌所(おおうたどころ)に伝えられた宮中を代表する楽舞として発展していくことになります。鼓吹に合せて奏楽し、朝会公儀等の時に用いられたらしいワン。
そのためかシタテルちゃん、いなシタテルもスサノヲと同様、和歌の祖となりました。
しかし、夫を思うより、兄を思っての歌ですね、どう見ても。
※画像は、「下照比売」Google画像検索結果のキャプチャー。
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【関連キャラ】
・シタテル - オオクニヌシ娘で和歌の祖という姫
・アメノワカヒコ - シタテルに一目惚れ、高天原を裏切る
【古事記の神・人辞典】
・シタテル
・アメノワカヒコ
・アマツクニタマノカミ
・アヂスキタカヒコネ
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