沼河比売4.オオクニヌシ
4-5.オオクニヌシの女たち


八上比売に去られた大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)は、淋しさのあまりか、今度は越の国の沼河(こしのくにのぬまかわ=現在の新潟県糸魚川市)に住む沼河比売(ぬなかわひめ=ヌナカワ)に恋をします。

あれ、かのスサノヲから奪った、彼が溺愛する娘の新妻は? というのは、とりあえずツッコまないように。次ぐらいに出てきます。多分。

沼河比売(ぬなかわひめ=ヌナカワ)縦480pxおそらくはヌナカワ、近隣、というか日本中に鳴り響く、若くて綺麗な女神さまだったのでしょう。オオクニヌシ、出雲から越の国に通います。もっ、もちろん、他の仕事のついでだとは思いますが。。

この二人の話は、古事記においては歌の返答ということで描かれています。平安時代を先取りですね。

スサノヲが日本史上初の和歌であれば、こちらは日本史上初の恋愛歌になるでしょうか。

もう、辛抱たまらんのオオクニヌシの歌。

日本中でもうたくさん妻を探しまくっているけど、
結構遠い越の国に、賢くて美しい女性がいると聞いて、
夜這い(=今でいう結婚)に来ることにしたよ~

まだ腰のもの(剣ですよ)は取っていないし、
服も脱いでいないけど、
姫の寝室の窓の板戸を押して引いて揺さぶって悶えているよ~

ああ~、山からヌエとか、鳥とかの鳴き声がウザい。

この歌に対する返答として、ヌナカワの歌。

わたしは、しおれた草のような女です~
心は落ち着かずふらふらしている水鳥のよう。
だから今は考えられませんが、
いずれはあなた様の鳥になりましょう。
ですから気長に人生楽しみましょ~

続いてさらにヌナカワの歌。

もう真っ暗ですよね。
でも、あなたは朝日のように爽やかにやってきて、
私の細くつややかな腕、
淡雪のような若く白い乳房をそっと抱いてくれることでしょう~

そして 手をぎゅっとにぎってください。
玉のような美しいわたしの手をからめてほしい。

足をのばして、くつろいでいただくこの家なのに、
あまり寂しい恋はしないでね。

大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)縦480px心変わり? すんげー積極的になりましたね。現代よりもおおっぴろげなラブレター。。イザナミといい、神話に名を残すには、ある意味破天荒な女神の方がよいのかな。

以上を経て、この日は二人はガッタィ、もとい結婚はせずに、一通目の沼河比売の歌「いずれ」もなんのその、次の日に二人はめでたく結婚したとのこと。二通目のヌナカワの歌をもらって当日は我慢できたオオクニヌシに乾杯?

古事記にはありませんが、二人の間に子供ができたという伝承が根強く、それがかの建御名方神(たけみなかたのかみ)、というから驚きです。この後、多分出てきますが、国譲りの時、出雲から諏訪まで逃げることになるこの神様。なぜそっち? というと、かあちゃんの実家の方だったわけですね。そこでは食い止めることはできずに、諏訪まで行った、だから諏訪大社ができたってこと?

※画像は、「沼河比売」Google画像検索結果のキャプチャー。

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タケミナカタ - 暴れん坊のオオクニヌシ次男、敗退

【古事記の神・人辞典】
オオクニヌシ
ヌナカワ
タケミナカタ

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