須勢理毘売命4.オオクニヌシ
4-3.根の国訪問


大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)が根の堅州国(ねのかたすくに=つまり根の国、黄泉の国ですね)に行ってみると、運命的な出会いが待っていました。美しい女神、須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)がいたのです。

二人はお互い一目惚れ、恋に落ち、すぐに深い仲になります。つまり、結婚! 展開はやっ。

しかし、実はこのスセリ、建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)の娘だったのです。

スサノヲ君、再び登場! しかし初登場からは考えられない変貌ぶりです。おそらく日本史上初の「娘がかわいくて仕方がない頑固おやじ」となっています。

スセリが素敵な男性を見つけたと父・スサノヲに報告すると、スサノヲは、「ああ、あのバカか」とすぐ、相手がオオクニヌシであることに気が付きます。とはいっても、あんたの子孫なんだが。。

建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと=スサノヲ)縦480px娘を取られた腹いせに、スサノヲはオオクニヌシに対して、嫌がらせ連発。

まずはスサノヲ、オオクニヌシを自分の宮殿に呼びつけ、蛇がうじゃうじゃいる部屋を指示して曰く。

スサノヲ「オマエ、ここで寝ろな」
オオクニヌシ「……(無茶ぶり~)……」

夫のピンチにヨメ奮起。魔法の布をオオクニヌシに手渡して曰く。

スセリ「蛇が襲ってきたら、この布を三回振ってね。そうすれば蛇たち逃げ出すから」

オオクニヌシはその通りにすると、蛇はおとなしくなって、そのためオオクニヌシはゆっくり寝ることができました。めでたしめでたし。…っでは、な~い。

次の日、今度はスサノヲ、オオクニヌシのためにムカデとハチが満載の寝室を用意して曰く。

スサノヲ「オマエ、今日はここで寝ろな」
オオクニヌシ「……(同じパターンじゃん……)」

須勢理毘売命(すせりびめ=スセリ)縦480pxどんだけ陰険、スサノヲ! ところがどっこい、またヨメ奮起。今度はムカデとハチ退治のための布を用意して、また愛する夫オオクニヌシに手渡しました。これによって、この日もオオクニヌシは安眠を得ることができたとさ。

今ではスセリ、毒蛇や毒虫除けの神様になっているとも。

しかししかし、執念を燃やすスサノヲ。次は広い野原に音のする矢を打ち込んで、オオクニヌシに取ってこさせようとします。オオクニヌシが命令に従って野原に入って矢を探そうとすると、スサノヲはその周囲に火を放ちました。

どこまで極悪非道、スサノヲ。というか、そろそろだまされるな、オオクニヌシ。

絶体絶命のオオクニヌシ、今度はネズミに助けられます。火が回り、逃げまどい、迷っていると、一匹のネズミが現れ、地下の洞穴の存在を教えます。試しに足でとんとんしてみると、ずぼっと足が抜けて、地面の洞穴にまっさかさま。

この洞穴に入ることで、火の脅威からは免れることはできました。また、探していた矢もネズミの子ががりがりしているところだったので、こちらもゲット。ミッションコンプリ~。

さすがにヨメも愛する夫はもう死んだと思って、葬式の準備をするほど嘆き悲しんだし、スサノヲも喜び勇んで鎮火した後の野原に出ると、そこには全く無傷で、矢を持ったオオクニヌシがいるのでした。ちゃんちゃん。

次の無理難題。スサノヲはオオクニヌシを呼んで、自分の頭のシラミを取らせようとしました。実はスサノヲの頭にはムカデがいたのでした。どんな頭? またまたできたヨメ登場。夫に椋木の実と赤い土を授け、オオクニヌシはこれらを口に含んで、唾を吐きだしました。

大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)縦480pxこれに対してスサノヲ、オオクニヌシがムカデを食いちぎって唾を吐いているものと思い込み、なぜか「ふふふっ、かわいい奴め」と思って(イミフ)、眠りにつきました。

ここからオオクニヌシの逆襲です。

まず寝込んだスサノヲの髪を部屋の屋根の垂木に結び付けます。義父虐待~。

その上で、500人で動かせるかどうかの石でその部屋の出入り口を塞ぎ、逃走~。

もちろん、愛妻スセリと一緒に。さらにスサノヲ自慢の大きな剣と弓矢、それに美しい立派な琴もこっそり懐に。って、ドロボーじゃねーか。しかもこっそりじゃっなーい! でかすぎるよ。

しかし逃げ出す時、その琴が木に触れてしまい、地面が鳴り響くような大きな音が出てしまいます。スサノヲ、当然起きる。事態を把握して髪をほどこうとしますが、オオクニヌシ、もちろん逃げる。恐えーもん、スサノヲ。

ようやく追いかける態勢になったスサノヲでしたが、もう追いつけないほど遠くに逃げていたオオクニヌシ・スセリ夫妻。スサノヲは黄泉比良坂(よもつひらさか)まで追いましたが、ここでとうとう諦めます。

黄泉比良坂、二回目~ 初登場はイザナギとイザナミの離婚の場面でしたね。

黄泉比良坂でスサノヲ、口惜しさにじませ、でも少し嬉しそうに叫んで曰く。

スサノヲ「娘はくれてやんよ。正妻にしろよ! お前、オオクニヌシって名乗りな! あと、お前のウザい兄弟連中、その剣と弓矢でとっちめてやんな。それと、きっちり礎石を設けて、太い長い柱立てて、天高くそびえる宮殿作っちゃいなYO そこに住めばいいだろっ!」

ここで初めてオオクニヌシになりました。ここで言う宮殿、後の出雲大社ですな。

※画像は、「須勢理毘売命」Google画像検索結果のキャプチャー。

【関連記事】
【古事記を彩る姫たち】スセリ - 嫉妬深くも、女好きオオクニヌシを包容する偉大な女神
【古事記の傾向と対策】“合体”が多すぎないか、古事記 「だが、それがイイ!」
八嶋智人さん「古事記には様々な愛の形の物語」、一つ一つを列挙 - 古事記の恋バナまとめ
高円宮典子さまと千家国麿さんのご婚約は、古事記の時代までさかのぼれる慶事
【古事記の傾向と対策】“NTR”は古事記のカンフル剤 ラブロマンス・オペラのゆえん

湯神社(松山市) - 景行天皇が創建した道後温泉の守護神、喧嘩神輿と初子祭、湯祈祷祭
琴弾山神社 - オオクニヌシが国造りの構想を練った琴引山山頂に鎮座する風土記記載社
唐王神社 - 大国主命の正妻・須勢理毘売命、終焉の地、虫・マムシ除けの神
出雲大社京都分院 - 亀岡鎮座、明治初期の創立、参拝者が本社の方へ向くよう建つ拝殿

【古事記・四コマ劇場】
オオクニヌシの遍歴:7.運命編
オオクニヌシの遍歴:8.夫婦編
オオクニヌシの遍歴:9.恩鼠編
オオクニヌシの遍歴:10.脱出編

【関連キャラ】
スサノヲ - 荒ぶる神からちょいワル親父への転身
オオクニヌシ -  国つ神のドンは破天荒な女好き
スセリ - オオクニヌシ大好きすぎて拗ねる女神

【古事記の神・人辞典】
スサノヲ
オオクニヌシ
スセリ

前へ | 目次 | 次へ