水神としての出雲建雄神を祀る九頭神信仰、室町以来の宮座
[住所]奈良県奈良市藺生町1
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葛神社(くずじんじゃ)は、奈良県奈良市藺生町にある神社。国道369号線から奈良県立野外活動センター方向へ北東に向かう。御朱印の有無は不明。

『延喜式神名帳』にある「出雲建雄神社(大和国・山辺郡)」に比定される式内社(小社)の論社。当社名は、九頭神社とも書く。

創祀年代は不詳。都祁地方には九頭・国津を称する神社が多く、国津神を御祭神とし、同時に祀雨神としても崇敬された。

当社もいずれかの時期に現社号を称したものとされる。この藺生の地は、大和国で最も早く開けた地である。

大和朝廷の時代においても、初瀬川の水源地として、初瀬川を通じて、平野の村々と交渉があり、藺生には初瀬川の水を調節する大溜池が築造された。

堤築造については人柱伝説も残っていたが、この池は中世、荒廃して池底に藺が繁茂した。そのため、藺生庄と称したとも。

この池の守護神として、泊瀬社というものがあり、水に関する信仰が伝わり、その祭典は、「泊瀬の建男祭」と呼ばれたという。

この泊瀬社が当社のことのようで、当社の御祭神は出雲建雄神。祭典名は当社御祭神からとられたようだ。出雲建雄神は大和国でのみ祀られる神である。

石上神宮の境内摂社、白石の雄神神社ぐらいとされる。出雲でその武勇に名を馳せた神と読めば、素盞嗚尊建御名方命、また倭建命にだまし討ちにあった出雲建などか。

似た名前の出雲建子という神もいるが、この神は伊勢津彦命と同神とされている。伊勢から信濃へ追われた風の神で、当地近辺との関わりは見られない。

藺生の南、上の宮と呼ばれた当地に水の神として出雲建雄神信仰が伝わり、葛神・九頭神信仰ともなったようだ。また、当社殿南側には氷室跡がある。

『大和志』では、「出雲建雄神社在所未詳或曰在藺生村今称葛神社即此」とし、当社を式内比定している。

社記によれば、当社神の出雲建雄神は建速須素佐鳴命のことで、室町時代の文明4年(1472年)以来の形式によって祭礼が執行されてきた。

宮座に関して、文明6年(1474年)より今に至るまでの頭入り名簿が残る。戦国時代の大永四年(1524)に社殿が造営された。

例祭は11月3日で秋季大祭。5月上旬に毛掛こもりとも呼ばれる農事祭が、7月1日に夏かぐらとも呼ばれる夏季中祭がある。

境内社に天満神社(菅原道真)、龍王神社(豊玉姫命)がある。境内にある、永禄2年(1559年)造立の石灯籠には「九頭大明神」と刻まれている。

【ご利益】
身体壮健、五穀豊穣、天候・祈雨、地域安全
葛神社 奈良県奈良市藺生町
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