奈良期の聖武天皇が獅子頭を奉納、10月伝統の獅子舞、境内に稲荷
[住所]三重県四日市市智積町684
[電話]059-326-6228

椿岸神社(つばききしじんじゃ/つばきぎしじんじゃ)は、三重県四日市市智積町にある神社。近鉄湯の山線の桜駅の南約500メートル。参拝すれば、御朱印を頂ける。

『延喜式神名帳』にある「椿岸神社(伊勢国・三重郡)」に比定される式内社(小社)の論社。近代社格では村社。

創祀年代は不詳。伊勢の海がまだ智積の辺りまで入り込み、さざ波が立っていたほどの大昔、今の坊主尾と呼ばれている当地住民の祖先が住みつき、生活を始めた。

その頃、当地を守護する大神を部落の中の清浄な所へ迎え、奉斎したのが当社の起源とされる。その地名を今、字河内ヶ原の椿尾(つばきお)という。

鈴鹿山系に源を発する三滝川と矢合川が年々歳々土砂を運び、次第に海岸線も遠のき、やがて日本が国家として成り立つ頃、このあたりに多くの人が住むようになった。

奈良時代、奈良の大安寺にある天平20年(748年)の古文書に、椿社の田畑が未開墾も含めて60町あったと記されている。

このように、広く土地が開かれ発展した桜の地に、商業も栄んとなり、家並みが整い智積大寺も創建されてこの地方の文化的中心地となった。

戦国時代の永禄2年(1559年)、兵火に罹り、社殿が焼失、その際、村の東に遷座した。しかし、村はずれとなり、参拝や祭典が不便になった。

そこで、桜・智積・一色・森・赤水・海老原・平尾の7ヶ郷の氏子が協議し、村の中心の 現在地に遷座することになった。

その際、七つの村のそれぞれの清土を持ち寄って土盛りをし、樹木を植え、神殿を造営して大神を遷座したと伝わる。

今の境内の土質が七郷となっているのはこの時のことによっている。以来当社は「七郷の総社」と称され、七ヶ村の氏子の崇敬を集めた。

現在の桜地区の共有地は明治の終わりまでは当社有地だった。明治32年(1899年)、法改正により、当社が御供料として所有していた広大な田畑・山林が返還された。

これら神田・御園、御用林に加え、明治41年-42年(1908年-1909年)に村内各社を合祀したため、社有地はさらに広くなった。

ただし、それが各地に点在し、管理していくのに困難を生ずるようになった。明治43年(1910年)、当社運営に支障をきたさないことを条件に、各区に払い下げられた。

以来当資材の恩恵は地区民全般にわたり、小中学校を始め、各地区の公会所などの公的な機関は多大な恩恵に浴したという。

御祭神は、天宇受売命猿田彦大神天照大御神。主祭神は天宇受売命で、猿田彦大神・天照大御神は配祀するとも。

合祀神は、豊受姫命大御神天児屋根命・豊臣秀吉・素戔嗚尊木花之開耶姫命倉稲魂命品陀和気命市杵島姫命八衢比古命・八衢比売命・大山祇命

例祭は10月第2日曜日で秋季例大祭、秋祭り。獅子神祈祷神事が斎行される。当社の獅子舞の起源は古い。

天平14年(740年)、第45代聖武天皇が伊勢国行幸の際、椿尾山中の椿の木で獅子頭を二つ作り、一つを椿大神社に、もう一つを当社に奉納した。

その獅子頭二頭は、同木で作られた兄弟あるいは姉妹であると言われており、互いに会いたがって、往古から椿大神社から当社へ会いに来るのだと言い伝えられている。

その獅子頭は今も残っており、4年に1回、閏年に、当社殿前で椿大神社の獅子舞が奉納される。その時、当社の獅子頭は社殿に据え置かれる、という。

ただし、現存は当然、聖武天皇奉納の獅子頭ではなく、永正6年(1509年)の銘があるもの。しかし、実際には永正6年に遡るのも厳しいともされている。

毎年、秋祭りの前日に拝殿前で獅子舞が奉納される。椿大神社と同じく山本流だが、元祖の椿大神社にも伝わっていない当社独自の演目一段を含む十三段からなっている。

この獅子舞は、市の無形民族文化財に指定されている。7月14日には夏祭があり、お湯立神事が再興される。

境内社に、八幡の神、山の神、稲荷神社、猿田彦社などがある。このうち、稲荷神社は奉納された多くの赤い鳥居が立ち並び、椿岸稲荷神社と呼ばれる。

この椿岸稲荷神社には、興味深い由緒が伝わる。当地は鎌倉時代初期に公家の中御門の所領となった。戦国時代になると、その支配権も衰退していった。

天文17年(1548年)、時の当主宗藤は戦乱を避けて、息女加賀姫(別名幸田姫)を伴い、桜一色の家臣町野清兵衛を頼り、当地に隠遁した。

加賀姫ば当時30歳とも、99歳の長寿を全うしたとも伝わる。晩年、姫は信仰する伏見稲荷大社の分祀を勧請して、幸田神社を建立した。

その際の、姫の自筆の棟札は今も当社に現存する。幸田神社は明治期に当社に合祀されたが、昭和35年(1960年)、椿岸稲荷神社と名を変えて再建された。

八方除守・厄除守、健康守・病気平癒守、肌守、縁結び守、学業成就守、干支お守り、桜鈴守、交通安全守、開運守、長寿守ねがい(貝)守、合格守など授与品は多数。

なお、式内社「椿岸神社」の論社は他に、椿大神社の境内摂社で、別宮の当社および式内同名神社がある。

【ご利益】
技芸・スポーツ上達、夫婦和合、開運招福、厄災除け(公式HP
椿岸神社 三重県四日市市智積町
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