飛鳥朝の創祀、新田義貞の首塚と犬頭霊神伝承、江戸初期の文化財
糟目犬頭神社 愛知県岡崎市宮地町字馬場31
[住所]愛知県岡崎市宮地町字馬場31
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糟目犬頭神社(かすめけんとうじんじゃ)は、愛知県岡崎市宮地町馬場にある神社。東海道本線の岡崎駅の西。比蘇天神社の南すぐ。御朱印の有無は不明。

延喜式』巻9・10神名帳 東海道神 三河国 碧海郡「糟目神社」に比定される式内社(小社)の論社。近代社格では郷社。

飛鳥時代末期の大宝元年(701年)、彦火火出見尊を祀って建立されたと伝わる。以前は隣村の上和田村の西糟目森崎にあったので、糟目神社と呼ばれた。

矢作川東岸の地で、たびたびの洪水被害にあったようで、最終的には現在地に落ち着いた。

平安時代の永延元年(987年)、熊野三所大権現を合祀した。南北朝時代の観応元年(1350年)、足利尊氏が熊野権現領として100貫文を寄進したと伝えられる。

後述の伝承のように、尊氏は当社と浅からぬ因縁がある。

岡崎藩主本多康重は当社を保護し、安土桃山時代の慶長7年(1602年)に本殿を再建。江戸時代初期の慶長10年(1605年)、越前産の笏谷石を使用した鳥居を奉納した。

その鳥居の柱には、「慶長応焦乙己林鐘」の銘が刻まれ、越前鳥居としては最古の形式だという。

その石鳥居をはじめ、同時期の石造唐猫、石造狛犬が現存し、現在は市の文化財に指定されている。

慶長8年(1603年)8月28日付の徳川家康朱印状により、43石の社領が寄進された。同朱印状に「犬頭社領之事」とある。

また、元和3年(1617年)の徳川秀忠朱印状にも「犬頭領」とあり、近世には犬頭社を公称していたようだ。「けんとう」ではなく、「いぬがみ」と読む、とも。

江戸時代後期の寛政5年(1793年)の拝殿造立棟札に「式内糟目神社犬頭大明神」とあるのが確認されている。

式内社「糟目神社」の他の論社に、塩指大明神があり、近世末期には両者間で論争があった。

最終的に、塩指大明神が式内認定を受け、その後、塩指大明神は糟目春日神社に改称された。

明治4年(1871年)、当社も額田県の命により現社号に改称、明治5年(1872年)9月18日、郷社に列した。

明治22年(1889年)に本殿が再建され、明治34年(1901年)に拝殿が再建された。現在は岡崎観光きらり百選に選定されている。

御祭神は当初の彦火火出見尊の他、伊弉諾尊伊弉册尊素盞嗚命・犬頭靈神。豊受姫命を合祀している。例祭は9月15日で、秋の例大祭であり、子供相撲が行われる。

境内には、三河三奉行の一人本多作左衛門重次生誕の碑や、新田義貞の首塚と伝えられる祠がある。また、犬頭霊神として当社に葬った犬の伝説が伝わっている。

延元3年(1338年)、南朝の忠臣である上和田の城主宇都宮泰藤は、足利尊氏が京都で晒していた新田義貞の首を密かに奪い、当社の池中の塚に埋めた。

泰藤が、鷹狩の道すがら大杉の下で休んでいるうちに、ついつい寝てしまった。しばらくすると大杉から大蛇が降りてきて、今にも泰藤を呑み込もうとしていた。

その時、連れてきた白い犬が大蛇を見つけ、しきりに吠えたので泰藤は目を覚ましたが、大蛇には気づかずまたまた寝入ってしまった。

しかし、犬は吠え続けたので、眠りを妨げられ、怒った泰藤は刀を抜き、犬の首をはねた。すると、犬の首は上へ飛び上がって、大蛇の喉に噛付き、大蛇をかみ殺した。

泰藤は驚き、後悔し、しばらく茫然としていたが、忠犬の霊を慰めるため、犬頭霊社として当社に葬ったという。

この泰藤の逸話は、義貞の首を当社に埋めたことを隠ぺいするために作られ、流布されたもの、ともいう。

この犬頭霊社も、時代の推移とともに荒廃したようで、昭和49年(1974年)、滋賀県の竹生島より勧請し、大和田島弁財天社として再興されたという。

なお、当社の南、下和田町の犬尾神社には、この犬の尾を祀って弔ったという伝承が残っている。

また、『今昔物語』に、「参河の国に犬頭の糸を始めたること」として、次の話が載っており、当社のことであるとの指摘がある。

三河国郡司に新しい妻ができ、本妻の家に通わなくなった。そのため、本妻は貧しくなり、飼っていた蚕は死んでしまい、残った一匹も、白い犬に食われてしまった。

しかし、犬の鼻の穴から二本の糸が出てきたという。引いても引いても出てくるので、どんどん引いていると、犬は死んでしまった。

本妻は、桑の木の下に犬を葬って祀った。その桑の木には、蚕が多く生まれ、良質の生糸を作ったという。

『延喜式』主計寮上に、参河国からの貢納品として生糸が記載されており、当地は古くからの生糸の産地として有名だったという。

【ご利益】
諸願成就、地域安全、家内安全、厄災除け
糟目犬頭神社 愛知県岡崎市宮地町馬場
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