弁慶の逸話と鮭やイルカの宮まいり伝承、境内に小さな瀧
[住所]新潟県村上市岩ヶ崎787
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多岐神社(たきじんじゃ)は、新潟県村上市岩ヶ崎にある神社。新潟県神社庁では多伎神社と表記している。JR羽後本線の村上駅の北西3キロほど。御朱印の有無は不明。

『延喜式神名帳』にある「多伎神社(越後国・磐船郡)」に比定される式内社(小社)の論社。近代社格では無格社。

三面川(みおもてがわ)右岸の河口の断崖に鎮座する。鳥居の手前には、小さな瀧が海へ注いでいる。滝の下に滝不動が祀られている。

創祀年代は不詳。通称は、瀬波のお滝様と呼ばれる。鎮座地の字は、多伎山という。御祭神は湍津姫命(多岐津島姫命)。

三面川の対岸、瀬波温泉のほど近くに鎮座する西奈彌神社の摂社である。

別名を観潮閣ともいう。これは源頼朝に追われた源義経主従が奥州へ落ちのびる途中、当社で休息し、弁慶が日本海を眺めて「さても麗わしき景色かな」と嘆賞したという。

その際、観潮閣と大書し、社頭に掲げた。また、「弘道」と書かれた板も明治の初期まで残されていたという。社の近くに、弁慶の硯り石、と名づけられている岩もある。

安置されている狛犬は昭和20年(1945年)建立で、阿形が左に置かれている。背後の社叢は、魚つき林として保護されている。

なお、式内社「多伎神社」の論社は他に、滝矢川中流の白滝、板屋越の多岐神社、指合3926の大山祇神社に合祀の多岐神社、宮ノ下の河内神社などがある。

河内神社とは、以下の伝承を共有しているようだ。

鮭の宮まいり

昔から霜月の15日は、三面川の主である鮭太郎(さけたろう)が、瀬波の多伎神社と、宮の下の河内神社へお参りする日だと伝えられる。

山の木の葉が色づいて、葉ずれの音がさみしく聞こえるころ、三面川の水は水晶を磨いたように澄み切る。

そこへ、腹に子をもった大鮭・小鮭が、荒れくるう海の住み家を捨てて、生まれた里であるこの川へ、群れをなして登ってくる。

霜月になると、銀貨のような鱗を光らせて、鮭太郎は、次郎・三郎の鮭を先頭にし、大小の鮭をはじめ、数多くの魚族を従え、丈余の長身で水を切って川へ登る。

霜月15日の月の出を待って、うやうやしく多伎神社の前に浮かんで礼拝三度、さらに宮の下の河内神社に参拝し、また底知れぬ深い淵ちに沈んでしまうという。

この日は、漁師も網を降ろすようなことはしないで、多伎神社と河内神社に参拝し、大漁のあるようにと、祈願するという。

また、多伎神社へは、毎年5・6月頃、いく百と数知れない、イルカが、一列になって海上に浮かんで参拝に来るという。これは数百年も前からのこととされる。

土地の人びとは「いるかの不動まいり」と呼ぶ。古老も「実に不思議だ」と言い、「さすが、神の国だけあって、魚まで神もうでする」と語っている。

【ご利益】
交通安全、海上安全、大漁満足
多岐神社 新潟県村上市岩ヶ崎
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