平田篤胤『天満宮御伝記略』の25社、江戸二十五天神の源流の一つ
御府内二十五天神 - 平田篤胤『天満宮御伝記略』の25社、江戸二十五天神の源流の一つ
御府内二十五天神とは、正式には「御内府及び御内府近辺二十五天神」で、『天満宮御伝記略』に記載のある東京の有力な天神・天満宮25社である。江戸二十五天神に連なる。『天満宮御伝記略』は文政3年(1820年)5月、著名な国学者・平田篤胤により刊行された。「毎月25日(菅原道真の命日)は祭祀すべし」と一般にも説く、天神信仰の心得の書。

よく言われる「江戸二十五天神」は、そのものズバリの文献はない。江戸中後期から、特に「菅公九百年忌」、つまり享和2年(1802年)前後から明治期にかけて盛んに言われ始めた、菅原道真を御祭神とする天神・天満宮の巡拝の一覧と考えられるだろう。『天満宮御伝記略』を除けば、主に下記のものがある。

東都御府内天満宮諸社(『菅丞相往来』)
『武陽菅原詣』収録の天神
東都七天神(『菅神御一代文章』)
東都二十五天神(『卯花園漫録』)
府内天神(『江戸拾葉』)
菅祠二十五社(『霊神仏之記』)
東京天満宮二十五社(『菅原大神千年大祭図会』)

およそ時代順。『菅原大神千年大祭図会』は「菅公一千年忌」、つまり明治35年(1902年)の際の状況を示し、『天満宮御伝記略』はその前段階に位置する。東京天満宮二十五社と重複も多いのが御内府及び御内府近辺二十五天神だ。

しかし、そこは平田国学。エッセンスが効いている。下記のNOは巡拝順だが、平川(平河)から始まり、湯嶋(湯島)を経て、亀井戸(亀戸)で終わる。

江戸三大天神を基準としながら、江戸を渦巻き状、時計回りに巡拝するコース設定がなされているのが特徴。こうしてみると亀戸天満宮が江戸の中央から少し外れたところにあることがよく分かる。

NO.1 麹町平川 平河天満宮

平河天満宮 - “宮城に一番近い神社”湯島・亀戸と比肩する、江戸を代表する平河天神
[説明]江戸三大天神
[住所]千代田区平河町1丁目7-5
[電話]03-3264-3365

NO.2 飯田町中坂 築土神社

築土神社 - 将門ゆかりの勝守が有名な勝運と武勇長久の神、日本武道館の氏神、中坂天神
[説明]将門ゆかりの勝守が有名
[住所]千代田区九段北1丁目14-21
[電話]03-3261-3365

NO.3 茅場町山王御旅所 日枝神社日本橋摂社

日枝神社日本橋摂社 - 寛永年間に創建された山王日枝神社の摂社、茅場町天神・楓川天神
[説明]山王日枝神社の摂社
[住所]中央区日本橋茅場町1丁目6-16
[電話]03-3666-3574

NO.4 飯倉町 天満神社

芝大神宮 - 頼朝、直義、秀吉、家康が崇敬した「関東のお伊勢様」、鎮座1000年
[説明]芝大神宮に合祀
[住所]港区芝大門一丁目12番7号
[電話]03-3431-4802

NO.5 高輪大仏地 現存せず

御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)・高輪大仏地
[説明]如来寺。品川区西大井に移転
[住所]港区高輪2-12-58付近
[電話]-

NO.6 増上寺山内茅野 茅野天満宮

幸稲荷神社(港区) - 幸事が続出して社号が定着、病気平癒の神や社宝も、茅野天神
[説明]幸稲荷神社に合祀
[住所]港区芝公園3丁目5-27
[電話]03-3431-8281

NO.7 白銀樹木谷 現存せず

御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)・白銀樹木谷
[説 明]松久寺。鎌倉市に移転
[現住所]港区高輪1-23-34付近
[電 話]-

NO.8 青山長者丸 天神の飛梅祠

御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)・青山長者丸
[説明]根津美術館の庭園内に鎮座
[住所]港区南青山6-5-1
[電話]03-3400-2536

NO.9 四谷新宿 天神社

鎧神社 (新宿区) - ヤマトタケルが鎧を埋め、平将門の鎧が埋められた古社、境内に元天神
[説明]鎧神社の境内社
[住所]新宿区北新宿3-16-18
[電話]03-3371-7324

NO.10 成子町柏木 成子天神社

成子天神社 - 成子・鳴子天神と呼ばれる江戸二十五天神の一社、新宿区内最大の富士塚
[説明]新宿区内最大の富士塚
[住所]新宿区西新宿8丁目14−10
[電話]03-3368-6933

NO.11 大久保七面 西向天神社

西向天神社 - 東大久保村の鎮守社、大久保の天満宮として知られる、江戸期の有力天神
[説明]東大久保村の鎮守社
[住所]新宿区新宿6-21-1
[電話]03-3351-5875

NO.12 高田戸塚  北野神社

水稲荷神社 - 江戸中最古の冨士塚、眼病と水商売・消防に霊験ある霊水で有名、高田天神
[説明]水稲荷神社の境内社
[住所]新宿区西早稲田3丁目5-43
[電話]03-3200-4621

NO.13 牛込横寺町 蛍雪天神

赤城神社(新宿区) - 香取神宮御祭神の親神を祀る、江戸の大社ともされた古社、蛍雪天神
[説明]赤城神社の境内社
[住所]新宿区赤城元町1-10
[電話]03-3260-5071

NO.14 小石川牛天神 牛天神北野神社

北野神社(文京区) - 牛天神、頼朝も吉事に授かる、撫で牛を撫でると願い事が叶う!
[説明]撫で牛を撫でると願い事が叶う
[住所]文京区春日1丁目5-2
[電話]03-3812-1862

NO.15 巣鴨天神山 子安天満宮

菅原神社(豊島区) - 子安天満宮で知られる巣鴨天神山、戦国期に保坂氏が当地に勧請
[説明]菅原神社(豊島区)
[住所]豊島区北大塚1-7-3
[電話]-

NO.16 小石川小原町 現存せず

御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)・小石川小原町
[説明]龍泉寺
[住所]文京区白山4-37-10
[電話]-

NO.17 本郷三弓町 櫻木神社

櫻木神社(文京区) - 往古からの「本郷真光寺の天神」、サ・ク・ラ・サ・ク桜木天神
[説明]本郷真光寺の櫻木天神
[住所]文京区本郷4丁目3-1
[電話]03-3811-8535

NO.18 根津権現境内 根津神社の相殿

根津神社 - 文京つつじまつりで知られ、社殿は綱吉の「天下普請」 六代綱豊ゆかり
[説明]社殿は綱吉の「天下普請」
[住所]文京区根津一丁目28番9号
[電話]03-3822-0753

NO.19 湯嶋 湯島天満宮

湯島天満宮 - 東京最強の学問の神様、元はアメノタヂカラオを祀り、後に合祀
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]文京区湯島3丁目30番1号
[電話]03-3836-0753

NO.20 上野山下 五條天神社

五條天神社 - ヤマトタケル創建の医薬祖神、3年に一度の大神輿渡御がある、下谷天神
[説明]ヤマトタケル創建の医薬祖神
[住所]台東区上野公園4-17
[電話]03-3823-2034

NO.21 浅草新堀 浄念寺の化用天神

小野照崎神社 - 渥美清が寅さん役をゲットしたご利益で知られる学問の神様、渡江天神
[説 明]-
[現住所]台東区蔵前4-18-11
[電 話]03-3851-1921

NO.22 金龍山東中谷 現存せず

御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)・金龍山東中谷
[説 明]善竜院
[現住所]台東区浅草2-31-3
[電 話]-

NO.23 真崎神明 北野神社

石浜神社 - 源頼朝など関東武将の崇敬厚かった橋場・真崎の「神明さん」、石浜天神
[説明]石浜神社の境内社
[住所]荒川区南千住3丁目28-58
[電話]03-3801-6425

NO.24 千十掃部宿関屋 関屋天満宮

氷川神社(千住仲町) - 東都七福神の関屋天満宮、千住七福神の弁財天、5年に一度の大祭
[説明]氷川神社(千住仲町)の境内社
[住所]足立区千住仲町48-2
[電話]03-3881-5271

NO.25 亀井戸 亀戸天神社

亀戸天神社 - 江戸期に創建された東の太宰府天満宮、東京の学問の神様最高峰の一社
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]江東区亀戸3丁目6番1号
[電話]03-3681-0010

【参考文献】
・中川和明「天神信仰の地域的展開-江戸・東京の天満宮巡拝を例に-」 - 『日本宗教文化史研究』(第18巻2号 通巻36号、2014年11月)

【関連記事】
江戸二十五天神 - よく言われるのに資料のない不思議な菅公巡拝、東京の代表的な天満宮
神社いろいろ - これで神社のおよそが分かる! 社格や形式などで神社を分類したまとめ
東京都の神社 - 本サイトに掲載されている神社で、東京都に鎮座している神社の一覧