桓武天皇の祖父を祀る式内社、能の源流・翁舞や室町期の能狂言面など
[住所]奈良県奈良市奈良阪町2489
[電話]0742-23-1025

奈良豆比古神社(ならつひこじんじゃ)は、奈良県奈良市(奈良きたまち)にある神社。参拝すれば、御朱印を頂ける。

『延喜式神名帳』にある「奈良豆比古神社(大和国・添上郡)」に比定される式内社(小社)の論社。近代社格では村社。

かつては奈良坂春日社と称していた。春日社とも八幡社とも称する。

式内社「奈良豆比古神社」の論社には天理市の楢神社が後継社であるとの説もあるが、あまり有力視されておらず、当社の可能性が高いとされる。

中殿に平城津比古大神(当地の産土神。奈良豆比古神とも)、左殿に春日宮天皇(施基親王、志貴皇子、田原天皇とも)、右殿に春日王(志貴皇子の子)を祀る。

ただし、『式内社考』では中殿が南良春日宮大神(奈良豆比古神)、左殿が春日若宮(天押雲根命)、右殿が矢幡大神(施基親王)としている。

ともかく、志貴皇子は天智天皇の第七皇子。壬申の乱により、生前に皇統が天武天皇の系統に移ったために、一皇族のままその一生を終えた。

政治よりも和歌など文化の道に生きた人生だったようで、『万葉集』に6首収められたいずれも名歌とされる。

しかし没後しばらくして、子の白壁王が即位、久しぶりの天智系天皇が誕生すると、子である光仁天皇から、春日宮御宇天皇の追尊を受け、皇祖として慕われることになった。

光仁天皇の子が桓武大帝であり、この家系こそが、現在に連なる天皇家となる。

当地は、志貴皇子が病気療養のために隠居していた奈良山春日離宮の地であり、宝亀2年(771年)、その地に志貴皇子を祀ったのに始まる。

毎年10月8日夜、秋の例祭の宵宮に町内の翁講中によって奉納される翁舞は、能の源流の一つともされ、「奈良豆比古神社の翁舞」として、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

同社に伝わる二十面の内、能面「ベシミ」は室町初期の応永20年(1413年)の銘をもつ最古のもので、県の文化財に指定されている。その他、室町時代から江戸時代にかけての能狂言面十九面などや能衣装が保存されている。

本殿裏の境内地に生育している、樟(くす)の巨木も県の天然記念物に指定されている。根元幹回り約12.8メートル、樹高約30メートル。

また、樹齢1300年にもなろうかと見られていた、境内の巨大な「児の手柏(万葉の樹)」の古木は、昭和27年(1952年)に枯れてしまったが、その切り株が残る。

なお、志貴皇子の孫にあたる桑原王が下総守あるいは上総守の時に創建した式内の桑原神社が茨城県常総市にある。

【ご利益】
家内安全、子孫繁栄、芸能上達
奈良豆比古神社 - 桓武天皇の祖父を祀る式内社、能の源流・翁舞や室町期の能狂言面など
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