伊豆諸島の名神大社、忌部氏の東遷の伝承を残す、三嶋大社本后という女神
阿波命神社(東京都神津島村字長浜1-2)
[住所]東京都神津島村字長浜1-2
[電話]04992-8-1222

阿波命神社(あわのみことじんじゃ)は、東京都神津島村長浜にある神社。御朱印の有無は不明。

『延喜式神名帳』にある「阿波神社(伊豆国・賀茂郡)」に比定される式内社(名神大社)。近代社格では府社

神津島北部、長浜から入った谷部に鎮座する。御祭神は阿波咩命(あわのめのみこと、阿波命/阿波比咩命)。

神津島の開拓神で、『続日本後紀』によると、三嶋神(伊豆国一宮三嶋大社御祭神)の本后であり、物忌奈命(物忌奈命神社御祭神)の母神。

『三宅記』では、三嶋神が神集島(神津島)に置いた「長浜の御前」(当社)から長子「たゝない王子(たたない王子)」(物忌奈命神社)、次子「たふたい王子」(日向神社)が生まれたとする。

「阿波」の神名は、忌部氏が阿波国(一宮は大麻比古神社)から安房国(一宮は安房神社)に東遷(忌部氏の東遷)する際、当地に逗留したことに由来するという伝承もある。

創建は不詳。国史の初見は『続日本後紀』承和7年(840年)において。

上津島(神津島)に坐す神は阿波神は「三嶋大社本后」である旨、物忌奈乃命はその御子神である旨、そしてこの神々のため神宮四院が新たに造営された旨が記載されている。

同記事では、続いて神院の様子が描写される。

その情景は、当社の境内を中心とする海浜、海砂及び周囲の岸壁をはじめとする地形・地質・植生などの様子と一致し、古代神社の立地を現在まで伝える貴重な遺跡とされる。

そして、去る承和5年(838年)7月5日夜に神津島で激しい噴火が発生したといい、占いの結果、それは三嶋大社の後后が位階を賜ったにも関わらず、本后たる阿波神には沙汰がないことに対する怒りによるものだと見なされた。

同記事にある「後后」とは、静岡県下田市の伊古奈比咩命神社御祭神を指すとされており、先の天長9年(832年)には三嶋神・伊古奈比咩命両神を名神に預けるという記事が載っている。

上記の承和7年の記事を受けて、約1ヶ月後に阿波神・物忌奈乃命両神の神階は無位から従五位下に昇った。

その後はいずれも物忌奈命とともに、嘉祥3年(850年)に従五位上が授けられたのち、同年には官社に列し、仁寿2年(852年)には正五位下に昇った。

『延喜式神名帳』では名神大社に列したが、名神大社は伊豆諸島の中で、当社と物忌奈命神社のみ。

中世の『伊豆国神階帳』では伊豆国田方郡に三嶋神の次に「一品きさきの宮」と記載されているが、これは阿波咩命が三嶋大社に招祭されたことによるとされる。

近世には「長浜明神」「長浜御前」と称された。明治21年(1888年)9月1日、府社に列した。

4月15日が例祭で、長浜祭りと呼ばれる。

島民からは長浜様と慕われ、ぶっとおし岩より始まる、当社付近の海岸一帯には、渚に色とりどりの小石があるところから、五色浜とも呼ばれる。

昔から、この浜の石を持ち帰ると必ず神罰があたると言い伝えられている。

【ご利益】
豊漁と家内安全
阿波命神社
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