周防祖生の柱松行事(すおうそおのはしらまつぎょうじ)
種別1:風俗慣習
種別2:年中行事
公開日:毎年8月15日(中村)、8月19日(山田)、8月23日(落合)
指定日:1989.03.20(平成1.03.20)
都道府県:山口県
所在地:玖珂郡祖生村

祖生の柱松行事は、山口県玖珂郡祖生村(そおそん 現 周東町)地域で「祖生の三本松」とも通称され、周防灘に注ぐ島田川の中流域に隣接して位置する三つの地区で個別に行われている。

祖生中村では8月15日(昭和22年までは8月16日)、同山田では8月19日、同落合では8月23日と期日が前後しているほか、行事のなされる場所、行事の役割分担などの細部において相違があるものの、往時、疫病の蔓延に伴って農耕用の牛・馬が多数死にいたったことを機に、その慰霊と除災のために行ってきたと伝えている点では共通している。

祖生中村の新宮神社所蔵の『産土社諸控早採略記』(元治元年〔1864年〕)には、享保19年(1734年)7月18日の条で、「七月十八日より三日間、牛馬御祈念有之、永々七月十四日に高灯明立願有之、柱松之企相始り候」と記録されているので、それ以来、柱松行事が毎年繰りかえされ伝承されてきたと思われる。

行事の準備は、地区の初寄り合いからはじまり、事前における桐の葉の採集・乾燥、ハギノコ(萩の木の枝から葉を摘み取り、乾燥させたもの)の用意、かずら(藤蔓)切り、張り綱作りなどが地区民の役割分担で進行される。

また、火祭り行事当日の日中には、総出(1戸1人ずつ出役)でハチ(胴木のいただきに取り付けられる鉢状のもの。口径・深さともに1メートル余り)作り、胴木作り(柱松の本体となる松丸太をかずらの皮で結束し、順々に継ぎ足し長くしていく)などした後、柱松にハチ・張り綱などを取り付ける。

お祓いの後、宰領の合図により手製の道具を使って立て起こして行く。別に、タイ(投げ上げ用の松明。肥松の細片をかずらで結束し、緒を付けたもの)が各自で用意される。

行事は、寄せ太鼓を合図に夜8時頃から開始される。現在は、2、3本の柱松が立つ。このうち大型のものは地上10間以上の高さで、あらかじめ準備されている種火からタイに火を移し、思い思いにハチを目指して火のついたタイを投げ上げて点火を競う。

ハチの取り付けが高く、かつその口径が狭いので容易ではないものの、誰かが点火に成功し柱松が炎上する段になると、迎え火と称して全員がタイを投げ上げるとともに、シャギリと呼ばれる撥さばきで太鼓を叩いて囃し締めくくるのである。

この行事には、柱松を灯明に見立て、それを高くすることで献灯の心を表現したとの伝承が付着し、平年には12間、閏年には13間の高さに立てたとか、15、6間の高さのために往時炎上させるのに、2、3夜を要したことがあったといわれている。

また、柱松の点火に競り勝った者には幸運がもたらされるとも占った。五穀豊穣・家内安全のための除災と年占とを伴う夏の火祭りの典型的なものである。

保護団体名:祖生柱松行事保存会
重要無形民俗文化財「周防祖生の柱松行事」 - 280年伝承される慰霊と除災の火祭り
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