藤原氏の祖中臣鎌足を祀る、寺院から神社になった桜と紅葉の名所
[住所]奈良県桜井市多武峰319
[電話]0744-49-0001

談山神社(たんざんじんじゃ)は、奈良県桜井市多武峰にある神社。近代社格は別格官幣社、現在は神社本庁の別表神社。御祭神は中臣鎌足(談山大明神・談山権現)。桜と紅葉の名所である。

三輪明神などとともに、大和七福八宝めぐりの一社。神仏霊場巡拝の道37番(奈良24番)。参拝すれば、御朱印を頂ける。

神仏分離以前は寺院であり、多武峯妙楽寺(とうのみねみょうらくじ)といった。

その寺伝によると、藤原氏の祖である中臣鎌足の死後の天武天皇7年(678年)、長男で僧の定恵が唐からの帰国後に、父の墓を摂津安威の地(阿武山古墳とされる)から大和のこの地に移し、十三重塔を造立したのが発祥。

天武天皇9年(680年)に講堂(現在の拝殿)が創建され、そこを妙楽寺と号した。大宝元年(701年)、十三重塔の東に鎌足の木像を安置する祠堂(現在の本殿)が建立され、聖霊院と号した。

談山の名の由来は、中臣鎌足と中大兄皇子が、大化元年(645年)5月に大化の改新の談合をこの多武峰にて行い、後に「談い山(かたらいやま)」「談所ヶ森」と呼んだことによるとされる。

平安時代には藤原高光が出家後に入山、増賀上人を招聘するなど、藤原氏の繁栄と共に発展を遂げた。鎌倉時代には曹洞宗本山永平寺の二世、孤雲懐奘(大和尚)が参学。

一方、平安時代に天台僧・増賀を迎えたことから、同じ大和国の藤原氏縁の寺院でありながら宗派の違う興福寺とは争いが絶えず、鎌倉時代から室町時代にかけて度々領地などを巡り争論を繰り広げた。

多武峯妙楽寺側の十市氏、越智氏は興福寺側の楢原氏、布施氏、北隅氏らの軍勢と小競り合いを繰り返した。

天仁2年(1108年)には浄土院、食堂、経蔵、惣社、大温室、多宝塔、灌頂堂、五大堂、浄土堂に加え、近くの鹿路の村々がことごとく焼かれた。

特に十三重塔が承安3年(1173年)に興福寺衆徒勢の焼き討ちで消失し、文治元年(1185年)に再興された。

なお、現在の十三重塔は享禄5年(1532年)に再建されたもので、木造の十三重塔としては世界で唯一現存するもの。

その後も、永享9年(1437年)からの越智、箸尾両氏の室町幕府軍への抵抗戦(大和永享の乱)、永正3年(1506年)8月の赤沢朝経軍に対する大和国人一揆(十市氏、越智氏、箸尾氏)の抵抗戦、永禄2年(1559年)からの松永久秀に対する十市氏の抵抗戦。

これら「多武峰合戦」と称する三つの抵抗戦が起きるなど、ここを舞台とする戦乱は絶えることがなかった。

天正13年(1585年)、豊臣秀吉により郡山城下に移すことを厳命され破却、遷座。天正18年(1590年)に帰山を許された。徳川家康により復興。近世の朱印領は3000石余。

明治2年(1869年)に神仏分離令により僧徒が還俗。現社号に改称され、別格官幣社に列した。しかし仏教建築は現代も当社境内に見ることができる。

明治の廃仏毀釈の際に寺を廃し神社のみとなったが、建物は寺院建築をそのまま使用しているため。

当社から御破裂山への山道があり、その奥に中臣鎌足の墓所といわれる場所がある。当社から1キロほどの所に、鎌足ゆかりの気都和既神社がある。

当社から、少し歩いたところに中臣鎌足の次男、淡海公(藤原不比等)の墓といわれる石塔がある。拝殿や十三重塔は戦前に何度か乙20円券など日本銀行券の図案に採用されたことがある。

桜井市粟原(当社の北東方向)の山中に跡が残る粟原寺の遺物「粟原寺三重塔伏鉢(おおばらでらさんじゅうのとうふくばち)」が国宝に指定されている。

奈良時代初期の和銅8年(715年)の銘がある。奈良国立博物館に寄託。社殿やそのほか多くの美術工芸品が重要文化財に指定されている。

11月17日が鎌足の命日で、例大祭が行われる。当日は南都楽所(なんとがくそ)によって、本殿石の間で舞楽が奉納される。

「恋の道」から連なる「恋神社」、「撫でながら恋を祈願すると恋愛が成就する」といわれている「むすびの岩座」などが人気。奉納できる「恋神社」と書かれたのぼりが多数立っているのが人目を引く。

この東殿とよばれる摂社の恋神社の他、境内末社に、惣杜・神明神社・杉山神社(久久能智神)・山神神社・比叡神社・稲荷神社・龗神社がある。境外になるが、別に杉山神社を兼務している。

2015年4月ごろ、奈良・京都など世界遺産含む寺社に油のようなものがまかれていた被害が相次いだ事件で、被害に遭った一社。

【ご利益】
国家安寧、平和祈念(公式HP
談山神社 - 藤原氏の祖中臣鎌足を祀る、寺院から神社になった桜と紅葉の名所
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