有東木の盆踊(うとうぎのぼんおどり)
種別1:民俗芸能
種別2:風流
公開日:8月14日、15日
指定日:1999.12.21(平成11.12.21)
都道府県:静岡県
所在地:静岡市有東木地区

有東木の盆踊は、男性が受け持つ踊りと女性が受け持つ踊りが区別されていて、それぞれ太鼓を伴奏に、踊り手自身も歌いながら踊る。その踊りは、扇やコキリコ、ササラ、木製の小さな長刀を持つものがあり、また踊りの輪の中に、飾り灯籠を頭上にかざした踊り手が繰り込んで踊ることがあるなど、多様な内容をもっている。有東木の盆踊りとも。

静岡県静岡市の有東木地区は、安倍川の河口から30キロほど上流の、左岸に注ぐ支流に沿って急な山坂をさかのぼった、海抜五五〇メートルほどの緩やかな傾斜地で、集落の後背地の峠を越すと山梨県に至る。清流に恵まれ、ワサビ栽培発祥の地とされ、またお茶の産地としても知られる。

この地の盆踊の始まりは明確ではないが、安倍川上流域には、同種の盆踊が伝承され、その中に、18世紀中ごろに盆踊の太鼓を修理した記録があるところがあり、少なくとも、その頃以前からの伝承と考えられる。古来、貴重な男女の知り合う場としても認知されてきた。

有東木の盆踊は、8月14日と15日の両日、夕方6時30分ころから、地域内の東雲寺の境内を会場に行われる。両日とも、まず男性の男踊りから始まり、四演目ほど踊って、次に女性の女踊りが六演目ほど続き、また男踊りが四演目ほどあって休憩になる。

その後、女踊りが始まり、女踊りの最後の演目にかぶせるように、男踊りが繰り込んできて、最後に男性の「長刀踊り」で終わるという構成で、両日とも夜の12時近くまで踊られる。

現在の踊りは、男踊りが10種、女踊りが13種の合計23種であるが、明治から大正にかけて記録された盆踊の歌詞は、合計で100種以上になり、それらの中に室町時代から江戸時代初期にかけて流行した歌謡と類似するものがある。

また、踊りは、手拍子だけで踊るものや、閉じた扇を持つもの、扇を開いて持つもの、コキリコと呼ばれる、二本の竹の棒の、それぞれ両端に紙の房を飾りにつけたものを互いに打ち合わせて踊るもの、ササラと呼ばれる刻み目を入れた木の棒と、先を細かく割った竹の棒を打ち合わせたり、すり合わせて踊るもの、小型の木製の長刀を持つ踊りなど、それぞれに決まっている。

踊りの伴奏は、ともに締太鼓で、男踊りは、太鼓(皮の直径約52センチ)を、今は踊りの輪の外に台を置いて、その上に据えて打っているが、かつては、二人の男性が太鼓を支え持ち、打ち手が左右の手にバチを持って、打ちながら踊りの場を移動したとされる。

女踊りの太鼓(皮の直径約35センチ)は、男踊りの太鼓より一回り小型で、踊り手の一人が、左肩前に縦に太鼓を構え、右手のバチで打ちながら踊る。この盆踊では、太鼓が、歌と踊りを導く重要な役とされ、特に女踊りの太鼓の打ち手は「タイコンサマ」と呼ばれている。

歌は、踊り手が皆で歌うが、男性、女性とも、それぞれ歌い出しを受け持つ熟練者がいて「ウタダシサン」と呼ばれ、タイコンサマとともに「師匠さん」と総称され、この盆踊の指導者となっている。

中世から近世初期に流行した歌と灯籠を持った踊りなど、古風で多様な風流系統の踊りを、盆踊として伝承するもので、芸能の変遷の過程を示し、また男性と女性の踊りが決まっていることやさまざまな持ち物を持って踊るなど、地域的特色を示すものとして特に重要である。

保護団体名:有東木芸能保存会
重要無形民俗文化財「有東木の盆踊」 - 男踊りと女踊り、「長刀踊り」で終わる
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