現在は自主判断も、原則として特別な由緒がある神社でなければ名乗れない
橿原神宮(奈良県・橿原市)
神宮(じんぐう)とは、伊勢の神宮の正式名称であるほか、社号として神宮号を名乗る神社である。ここでは伊勢の神宮を含む、神宮を名乗る神社について。

『日本書紀』では、伊勢の神宮と石上神宮のみが「神宮」と記載されていた。その後、平安時代に成立した『延喜式神名帳』では、石上神宮に代わり鹿島神宮香取神宮が「神宮」と記載された。

江戸時代まで「神宮」を社号とする神社は、この3社のみ。

明治以降、天皇、皇室の祖先神や大和平定に功績のある特定の神を御祭神とする神社の一部が、社号を「神社」から「神宮」に改めた。

第二次世界大戦終戦までは、「神宮」の社号を名乗るためには勅許が必要だった。戦後は神社の国家管理は廃止されたため、「神宮」号を名乗る際に勅許は不要となった。

しかし現在でもなお神社本庁傘下において、「神宮」を公式な社号として名乗る神社は特別の由緒を持つものに限られており、思いのほか限定的で、少数だ。

神社本庁に属している属していないにかかわらず、新日吉神宮山辺神宮河尻神宮西岡神宮などの神社がある。

ここでは、現時点で神宮を称する代表的な神社について、皇室祖先神、歴代天皇、その他の区分で一覧にした。写真は奈良県橿原市の橿原神宮

皇室祖先神

皇大神宮 (三重県伊勢市)

神宮(皇大神宮) - すべてが別格、神様が住まう、日本人の総氏神である唯一無二の聖地
祭神:天照大神
改称:-
[ご利益]光華明彩、照徹六合之内

豊受大神宮 (三重県伊勢市)

豊受大神宮 - 伊勢の神宮のもう一つの正宮・外宮、先祭や外宮から参拝のしきたり
祭神:豊受大神
改称:-
[ご利益]五穀豊穣、衣食住、産業全般

伊弉諾神宮 (兵庫県淡路市)

伊弉諾神宮 - 古事記に記述されたイザナギが坐した“多賀”に鎮座する淡路国一宮
祭神:伊弉諾尊伊弉冉尊
改称:1954年(昭和29年)
[ご利益]夫婦円満

英彦山神宮 (福岡県田川郡添田町)

英彦山神宮 - 英彦山中岳を本社とし、全域に摂末社が点在、主祭神はアメノオシホミミ
祭神:正哉吾哉勝速日天忍穂耳尊
改称:1975年(昭和50年)
[ご利益]農業生産、鉱山、工場の安全、勝運

霧島神宮 (鹿児島県霧島市)

霧島神宮 - 高千穂峰の南側に鎮座する、天孫降臨・ニニギを主祭神とする古社
祭神:天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊
改称:1874年(明治7年)
[ご利益]家内安全、事業繁栄、交通安全

鹿児島神宮 (鹿児島県霧島市)

鹿児島神宮 - 八幡発祥の“正八幡”、応神皇后ナカツヒメや呉の太伯も祀られる古社
祭神:天津日高彦穂々出見尊
改称:1874年(明治7年)
[ご利益]夫婦円満、子宝、安産

鵜戸神宮 (宮崎県日南市)

鵜戸神宮 - 初代神武天皇の父ウガヤフキアエズ誕生の地、境内にはその陵墓も
祭神:日子波瀲武鸕鶿葺不合尊
改称:1874年(明治7年)
[ご利益]縁結び、安産、育児、海上安全

歴代天皇

宮崎神宮 (宮崎県宮崎市)

宮崎神宮 - 初代神武天皇が東遷前に宮を営んだ地、神武天皇をお祀りする古社
祭神:神武天皇
改称:1913年(大正2年)
[ご利益]安産祈願、厄祓い、長寿、交通安全

橿原神宮 (奈良県橿原市)

橿原神宮 - 明治期、畝傍橿原宮跡に創建された初代神武天皇をお祀りする勅祭社
祭神:神武天皇
改称:1890年(明治23年)(創建時)
[ご利益]安産祈願、厄除け、交通安全

氣比神宮 (福井県敦賀市)

氣比神宮 - 古事記の説話の舞台の一つと御祭神 熱い尊崇受け続ける越前国一宮
祭神:仲哀天皇
改称:1895年(明治28年)
[ご利益]衣食住、海上安全、農漁業、安産、芸能

宇佐神宮 (大分県宇佐市)

宇佐神宮 - 神託事件でも知られる八幡宮の総本社、邪馬台国の所在地の候補の一つ
祭神:応神天皇神功皇后
改称:1871年(明治4年)
[ご利益]家内安全、交通安全、厄除け

近江神宮 (滋賀県大津市)

近江神宮 - 皇紀2600年創祀の時の祖神、文化・学芸・産業の守護神・天智天皇を祀る
祭神:天智天皇
改称:1940年(昭和15年)(創建時)
[ご利益]時の祖神 開運・導きの大神

平安神宮 (京都府京都市左京区)

平安神宮 - 明治期、平安京遷都当時の大内裏を復元、平安京最初と最後の天皇を祀る
祭神:桓武天皇、孝明天皇
改称:1895年(明治28年)(創建時)
[ご利益]家内安全、商売繁盛、会社隆昌

白峯神宮 (京都府京都市上京区)

白峯神宮 - 遠隔地で崩御された二天皇を祀る、スポーツの神様として尊崇受ける
祭神:崇徳天皇、淳仁天皇
改称:1940年(昭和15年)
[ご利益]スポーツ、学力向上、試験合格

赤間神宮 (山口県下関市)

赤間神宮 - 幼帝・安徳天皇をお祀りする、竜宮城を模した社殿でも有名な神宮
祭神:安徳天皇
改称:1940年(昭和15年)
[ご利益]安産、厄祓い、海上安全

水無瀬神宮 (大阪府三島郡島本町)

水無瀬神宮 - 承久の乱で配流された三天皇が御祭神、石川五右衛門にもゆかり
祭神:後鳥羽天皇、土御門天皇、順徳天皇
改称:1939年(昭和14年)
[ご利益]文武両道、安産

吉野神宮 (奈良県吉野郡吉野町)

吉野神宮 - 御祭神は後醍醐天皇、御所帰還のご心情を汲み本殿などは京都を向く
祭神:後醍醐天皇
改称:1918年(大正7年)
[ご利益]広大無辺な御神徳

北海道神宮 (北海道札幌市中央区)

北海道神宮 - 北海道開拓の神・開拓三神と明治天皇、ロシア南下を意識した造形
祭神:明治天皇
改称:1964年(昭和39年)
[ご利益]家内安全、交通安全、厄除開運

明治神宮 (東京都渋谷区)

明治神宮 - 初詣では日本一の参拝者を集める、明治天皇・皇后をお祀りする勅祭社
祭神:明治天皇
改称:1920年(大正9年)(創建時)
[ご利益]家内安全、身体安全、厄祓い

その他

熱田神宮 (愛知県名古屋市熱田区)

熱田神宮 - 三種の神器の一つ草薙の剣を祀る神社、極めて重要なはずなのに三宮
神体:三種の神器の一つ天叢雲剣(草薙の剣)
改称:1868年(明治元年)
[ご利益]草薙の剣、厄除、災難除、心願成就

石上神宮 (奈良県天理市)

石上神宮 - 古事記において最も頻出する神社は元祖・剣の神社、脈々と続く尊崇
神体:布都御魂
改称:1883年(明治16年)
[ご利益]健康長寿、除災招福、百事成就

日前神宮・國懸神宮 (和歌山県和歌山市)

日前神宮・國懸神宮 - 八咫鏡に先行して制作された鏡が御神体、天岩戸隠れと天孫降臨
神体:日像鏡、日矛鏡
改称:-
[ご利益]生活の活力、良縁、結婚、家内安全

鹿島神宮 (茨城県鹿嶋市)

鹿島神宮 - 春日大社への勧請も行う、タケミカヅチを祀る総本社は鹿ゆかりの元祖
祭神:武甕槌神
改称:-
[ご利益]家内安全、交通安全、心願成就

香取神宮 (千葉県香取市)

香取神宮 - 古事記には登場しないフツヌシが御祭神、鹿島神宮とともに東国拠点
祭神:経津主神
改称:-
[ご利益]家内安全、縁結び、勝運

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