日本古代の国家形成―征服王朝と天皇家 (1967年) (講談社現代新書〈128〉)
・刊行:1967
・著者:水野祐
・出版:講談社

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「三王朝交替説」で有名な水野祐のによる邪馬台国論。

「九州説を唱える学者は、邪馬台国は九州にあるという研究に熱中して、その頃の大和地方はどうであったか、又大和国家ないし大和朝廷といわれる大和の国家と、女王国や、狗奴国などの九州の国家との関係はどうであったかという研究をおろそかにしている」と指摘。

邪馬台国は九州に比定しつつも、「銅剣同鉾文化圏と同鐸文化権の対立を、九州国家と大和国家との対立時代にあてはめてもいっこうに不都合はない。少なくとも二世紀に到るまでに、大和国家の前身ともいうべき国家の成立が認められるのである」と主張。

いわば「邪馬台国と原大和国の併存論」を初めて展開した。

また「狗奴国に関する魏志倭人伝の記載に就いて」(『史観』第五十一冊、昭和32年(1957年)12月)において、魏志倭人伝に描かれた入墨などの習俗はすべて狗奴国によるもの、これを南九州に比定し、邪馬台国は北九州に比定すべきとの考え方を示す。

これは北九州が地政学的に半島との交流が古来より盛んであったのに対して、南九州は東シナ海方面から、中国南方太の交流があって、独自の文化を構築してきたという、南北九州の交流の違いを初めて明確に指摘したものと言える。魏志倭人伝の会稽等の記述も、南九州との兼ね合いで論じるべき、と指摘している。 

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