橘の香り―古代日本人が愛した香りの植物 (香り選書9)
・刊行:2009/3/5
・著者:吉武利文
・出版:フレグランスジャーナル社

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たとえばお正月の鏡餅の上になぜミカンを置くのか。右近の橘、左近の桜にはどのような意味があるのか。本書は、このような何気ない日本の伝承にもとても大切な意味が込められていることを解き明かします。

橘は、沖縄に産するシークァシャーと並んで、日本原産の柑橘種です。古代日本人は「トキジクノカグノコノミ」(永遠に香っている果実)と呼び、大変神聖視してきました。

古事記においても登場します。第十一代垂仁天皇タジマモリを常世の国に派遣したのもこの「トキジクノカグノコノミ」、つまり橘の入手が目的にありました。

著者は橘のフィールドワークを通して、日本文化に深くかかわる橘の伝承を調査し、古代日本人の世界観や宗教観に、嗅覚的なことがどのようにかかわっているかを考察しています。

それは橘による香りの民俗学ともいえるものであり、このような嗅覚的な面からのアプローチは、本書がはじめての試みといえます。