春夏秋冬を統治する兄四神に対し、五行神の1人である弟埴安(はにやす)大王が領地を要求しますが、これに応じてもらえず格闘となりました。そこに所務分けのおじいが登場し、四季の土用(どよう)を埴安大王に分け与えることでこれを仲裁します。

この神楽は、夜明け舞の一番最後、大蛇(おろち)の後に舞う舞で「五郎(ごろう)の王子」とも言います。

石見神楽の中で最大の長編であり農業の上からも非常に尊重されている演目です。(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
陰陽五行説を痛快に説明した演目。五穀豊穣を祝う神楽でもあるそうです。

古事記には五行説の思想は入っているようには見えません。しかし、木・火・土・金・水という基本的な物質は、神話に溶け込みやすい性質があるのも確かです。

埴安(はにやす、ハニヤス)も、古事記に登場する、今では“土”の神として地鎮祭などで祀られるようになっている、ハニヤスビコノカミハニヤスビメノカミがいます。男女一対、同体とされる神で、いずれも病床のイザナミの大便から生まれた神。

そもそもイザナミが病床についたのは、“火”の神ヒノカグツチノカミを生んだ際に女陰を負傷したため。上述の大便のほか、イザナミの吐瀉物から“金”の神であるカナヤマビコノカミカナヤマビメノカミ(金山=鉱山=鉄)、尿から“水”の神であるミツハノメノカミワクムスヒノカミが生まれています。

火の神を生んで瀕死になり、吐瀉物→金、大便→土、尿→水と、女神としては可哀想ですが、まあ、連想できる神々が生じているわけで、ここまで来たら、“木”の神様も探したいところ。もちろんいます。神産みの段で生じるククノチノカミです。

まあ、だからどうした、という感じではありますが。当たり前の物質や性質なので、日本の神産みに対応する神々がいてもおかしくはありません。これらに五行説の相性、相剋、比和、相侮、相乗などの関係が見出せるわけでもなく。

また、第八代孝元天皇の妃にハニヤスビメがおり、タケハニヤスという皇子がいます。タケハニヤスは、第十代崇神天皇の御世、反逆し討伐されますが、埴安神との関係は分かりません。

さて、この演目では、四人の兄の名が五行説に従って、東西南北・春夏秋冬の組み合わせになっているのに対して、末弟が埴安となっています。やはりここだけでも、出典は古事記に求めたのでしょうか。

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