この神楽は、出雲の国美保神社の御祭神、恵比須様が磯辺で釣りをしている御姿を舞ったものです。にこやかに鯛を釣る恵比須様の様子が面白おかしく、心の和む演目。

恵比須様は昔から漁業、商業の神様として崇拝されています。 恵比須様のコミカルな動きは子ども達にも大人気!

鯛釣りの前に撒き餌(まきえ)とみたてて、福飴を撒いちゃいますよ。(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
福々しいお面をした演者が軽やかに踊る、見ているだけで、頬が緩む演目。

しかし、えびす様って、知っているようで、知らない、そんな神の一柱。日本では古事記ゆかりの神々と習合している場合がほとんどです。

1.ヒルコ
2.スクナビコナ
3.コトシロヌシ
4.山幸彦

石見神楽のこの演目の場合、美保神社と明記しているので、コトシロヌシです。国譲りの際、タケミカヅチに恫喝されたオオクニヌシが、長男コトシロヌシに聞いてくれ、とムチャ振りした時、オオクニヌシはコトシロヌシが「魚取りに行っていてまだ戻ってきていない」と言います。このことから、魚→海→えびす様となったようです。

また、ヒルコはイザナギイザナミの初めての子(としては数えられないが)ですが、葦の船で流されます。コトシロヌシも呪詛って入水しますので、この当たりにも共通点があります。

ただ、その他のものが多かれ少なかれ「船、揺られ流れ、流される」ということと直結あるいは連想させるのに比べて、コトシロヌシだけは、特に「船、揺られ流れ、流される」に関係しないえびす様とも言えるかもしれません。

魚取っていたところから、タケミカヅチに命じられたトリノイハクスブネノカミに連れて戻された時、“船”に乗ったかもしれませんが。

ともかく、このあたりの差異だけでは見極められない、複雑な神。だからこそ強烈なパワーを持っているのかも。それがえびす様です。

【関連記事】
「石見神楽」漫画やイラストで分かりやすく伝える解説パンフ完成、ウェブ上でも楽しめる