天の岩戸。天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、弟・須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴に困り天の岩戸の中にお隠れになったので、世の中すべてが闇夜となり多くの禍(わざわい)が起こりました。そこで神々は集まって相談され、天の宇津女命を呼んでおどらせ、長鳴鳥(ながなきどり)を鳴かせ賑わいを出しました。

これを不思議に思った大御神が岩戸を少し開けたところを、大力の手力男命(たぢからおのみこと)が岩戸を開き天照大御神を迎え出す事に成功。再び世の中を明るく照らしはじめ、世は平和を取り戻しました。(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
多くの神楽などで題材とされている天岩戸隠れ。もちろん古事記に由来する話。アメノウズメアメノタヂカラオが活躍するのはどれもほぼ共通しています(この石見神楽でも)が、それぞれで何に重点を置いて演じられるかで特徴が出ます。

石見神楽では、オモイカネではなく、アメノコヤネフトダマが相談するところから始まります。何やら藤原氏(=中臣氏、アメノコヤネが祖)の影響を疑いたくなりますが、それはさておき。

アメノコヤネが中臣氏、ではフトダマは、と言えば、忌部氏の祖。この天岩戸隠れでの活躍度合いが、後の中臣氏と忌部氏の勢力争いを反映している、と言われますが、古事記においてはアメノコヤネとフトダマの活躍に目立った軽重はありません。

後の歴史において、中臣氏、つまり藤原氏が実権を握り、春日大社(奈良県・奈良市)はじめアメノコヤネがメジャーになっていきます。しかし、天岩戸隠れの頃から、両者は政権の祭祀を司っていたことが知られ、特に忌部氏はその性質をかなり後世まで保持し続けていたようです。

それが忌部氏の代名詞の一つ、「麻」。阿波、房総に今も残る忌部氏の麻は、つまり大麻。

神宮大麻(じんぐうたいま)を例にとるまでもなく、また、魏志倭人伝に記載された卑弥呼の鬼道でも使用されたかもしれないと指摘される大麻は、太古の昔から、今に至るまで、日本の祭祀の極めて重要なアイテムだったことは間違いなく、それを管掌していたと思われるフトダマ―忌部氏は、一貫して、朝廷祭祀の重要な裏方、あるいは影の主役だったのでしょう。

本題の天岩戸隠れ、アマテラススサノヲの狼藉などなどは、こちらからさっくり確認願います。

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