吉浜のスネカ(よしはまのすねか)
種別1:風俗慣習
種別2:年中行事
公開日:毎年1月15日
指定日:2004.02.06(平成16.02.06)
都道府県:岩手県
所在地:大船渡市三陸町吉浜

吉浜のスネカは、岩手県大船渡市三陸町の吉浜地区に伝承されている来訪神の行事で、奇怪な面を着け、藁蓑などをまとったスネカと呼ばれる異装の者が小正月の夜に地区内の家々を訪れて、怠け者や泣く子を戒める行事である。

スネカとは、囲炉裏のそばで怠けている者の脛にできるヒガタ(火班)を剥ぐ行為を指すスネカワタグリ(脛皮たぐり)に由来するといわれている。奇怪なもの、得体の知れないものであり、小正月の夜に山から里にやって来るものと考えられている。また、スネカは精霊であるともいわれ、里に春を告げ、その年の五穀豊穣や豊漁を人びとにもたらす存在とも考えられている。

三陸町は、岩手県の沿岸部、リアス式海岸で有名な三陸海岸の南部に位置する。スネカが伝承されている吉浜地区は、町域の北部にあり、東は吉浜湾に面し、西は山岳が海岸まで迫る地勢で、その間に集落が展開している。生業は半農半漁で、日本屈指のアワビの産地として知られるなど古くから漁業が盛んであり、また、畑作を中心とした農業も行われてきた。

スネカは、吉浜地区の中でも農業への依存度が高かった本郷と呼ばれる地区の西側に位置する増館、大野、上通、中通、下通、後山の各集落に伝承されてきた行事と伝えられている。現在は、吉浜スネカ保存会を中心に、扇洞、根白東、根白西、千歳の各集落も含めた地区全体の行事として行われている。

行事の期日は、昭和30年代までは旧暦1月15日に行っていたが、昭和40年代に入ると新暦で行うようになり、現在に至っている。

スネカ役になれるのは地区内の男性に限られ、専ら青年層から中年層にかけての男性たちがスネカに扮して行事を伝えてきた。かつては、集落ごとに各家の男性がそれぞれの家で自ら扮装してスネカとなり、近隣の家々を回るかたちで行われており、一つの集落内で数多くのスネカが登場したといわれている。

現在は、保存会がスネカ役になりたい有志の男性たちを地区内から募るなどして調整を図り、集落ごとに数名のスネカを割り当てて行事を行っている。また、近年は、子どもスネカと称して、小学生もスネカに扮して行事に参加している。

スネカは、家人の近くににじり寄り、「カバネヤミ(怠け者)いねえが」「泣くワラシいねえが、言うこと聞かねワラシいねえが」などと声を張り上げる。家人が「スネカ様、どっから来やした」と聞くと、スネカは、「五葉山から来た」、あるいは「天狗岩から来た」などと答え、しばらく座敷を歩き回りながら、恐ろしい形相で怠け者を捜す素振りをしたり、親に抱かれた幼児や逃げ回る子どもたちを威嚇する。

家人は、「カバネヤミも、泣くワラシもいねえがら、餅あげっから帰ってけらっせん」などと言って、スネカの退散を促す。

保護団体名:吉浜スネカ保存会
重要無形民俗文化財「吉浜のスネカ」 - 異装・異形者が怠け者や泣く子を戒める
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