北野神社「牛天神」の拝殿 - ぶっちゃけ古事記
地下鉄「後楽園」駅から西進すること400メートルほど、つまり東京ドームや小石川後楽園が近くにある、北野神社。別名「牛天神」で知られ、親しまれている神社です。元歴元年(1184年)、源頼朝によって創建されました。

頼朝が挙兵し、まさに平家を滅ぼさんとしている頃。寿永三年(1184年)、頼朝が東国追討の時、ここの入り江の松に船を繋ぎ波を待っている時、頼朝がそこにあった岩に腰掛け休息、その際、夢に牛に乗った菅原道真公が現れ「二つの喜びがある」と告げられたといいます。

この二つの喜びは、長男で後の二代目鎌倉殿となる頼家の誕生と、西国での平家との合戦勝利(1185年が、屋島、壇ノ浦の戦い)のことを指すと言います。

北野神社「牛天神」のねがい牛 - ぶっちゃけ古事記
その後、ここにあった牛に似た石を御神体とし、太宰府天満宮より御魂を勧請したと伝えられており、これが撫で岩(ねがい牛)の発祥であり、牛天神の始まりとなります。

このねがい牛、実際に今も境内にあり、まず願いながら真心を持ってねがい牛の頭の部分を撫でさすり、心に念じつつ何事も唯々誠心誠意純真な気持ちを持って夫々にお願いをすると……天神様は、聞とどけて下さるでしょう、とのこと。
北野神社「牛天神」の末社・太田神社と高木神社 - ぶっちゃけ古事記
末社として太田神社・高木神社があります。太田神社の方のご祭神は、天鈿女命(あめのうずめのみこと、天宇豆女命とも)。後に、その夫であり、道案内の神として知られる猿田彦命(さるたひこのみこと)も合祀されたようです。

古事記でもお馴染みのアメノウズメサルタヒコ、ですね。日本初の国際結婚ともされ、恋愛、縁結びなどの願いをかなえてくれるともされ、同社には、牛天神としての牛をかたどったもののほか、ハートマークのおみくじ結びどころが用意されています。
北野神社「牛天神」の牛型おみくじむすびどころ - ぶっちゃけ古事記
北野神社「牛天神」のハート形おみくじむすびどころ - ぶっちゃけ古事記
太田神社の由緒には、昔々、小石川の三百坂の処に住んでいた清貧旗本の夢枕に一人の老婆(貧乏神と言われた黒闇天女(くろやみてんにょ)(弁財天の姉))が立ち、「わしはこの家に住みついている貧乏神じゃが、居心地が良く長い間世話になっておる。そこで、お礼をしたいのでわしの言うことを忘れずに行うのじゃ…」と告げたと言います。

正直者の旗本は「毎月、1日と15日と25日に赤飯と油揚げを供え、わしを祭れば福を授けよう…」というそのお告げを忘れず、実行しました。すると、たちまち運が向き、清貧旗本はお金持ちになった、というものです。以来、福の神としても知られています。

高木神社ですが、通常社名から高木神(たかぎのかみ=タカギノカミ)、つまりタカミムスヒノカミを連想させますが、ここは五穀豊穣の神である宇迦御魂命(うかのみたまのみこと)、つまりウカノミタマノカミを祀っています。現在の小日向1丁目にあった第六天社を、道路拡張に伴い、ここに移したものだといい、もともとはウカノミタマノカミに象徴されるようにお稲荷系なのかもしれません。

その他、同社には樹齢100年超の木斛(もっこく)、江戸時代に水戸光圀公から当社へ奉納された桜の木などがあり、中島歌子の歌碑なども残されています。
北野神社「牛天神」の木斛(もっこく) - ぶっちゃけ古事記
北野神社「牛天神」にある中島歌子の歌碑 - ぶっちゃけ古事記
道真さんといえば天神、天神といえば牛。また頼朝とは直接かかわりはないのですが、鎌倉時代の『吾妻鏡』には、建長3年(1251年)、浅草寺に牛のような妖怪が現れ、食堂にいた僧侶たち24人が悪気を受けて病に侵され、7人が死亡した、とか、隅田川から牛鬼のような妖怪が現れ、浅草の対岸にある牛島神社に飛び込み、「牛玉」という玉を残した、などが伝えられています。

牛といえば、古事記の登場人物の中ではスサノヲ。古事記の中では直接的にスサノヲと牛を結び付ける記述は見られませんが、古来よりスサノヲ=牛頭天王とする考え方が、日本では普遍的です。このあたり、また分析できれば、と思います。
北野神社「牛天神」近くにある境外社? 諏訪神社 - ぶっちゃけ古事記
さて、この牛天神の近くには諏訪神社(東京都文京区後楽二丁目18番18号)があります。明徳元年(1390年)、牛天神別当の龍門時の重職であった乗観法印が信州の諏訪大社より勧請して創建したと伝えられています。ご祭神はもちろん、建御名方神(たけみなかたのみこと)と八坂刀売神(やさかとめのみこと)。

この諏訪神社は事前にはまったくノーマークでしたが、牛天神を探訪して、初めてその存在を知り、訪れました。そこで、古事記ゆかりのタケミナカタと出会える。やはり現地を訪れなければ触れられない、分からないことはたくさんあります。
北野神社「牛天神」 - ぶっちゃけ古事記
■位置
・所在地 東京都文京区春日一丁目5番2号
・経緯度 北度35度70分77.95秒 東経139度74分67.98秒

■交通
・地下鉄丸ノ内線・南北線 後楽園駅 徒歩10分
・地下鉄三田線・大江戸線 春日駅 徒歩10分
・JR中央線・地下鉄東西線・南北線・大江戸線・有楽町線 飯田橋駅 徒歩10分

■探訪日:2014年9月24日

【参考サイト】
牛天神 北野神社 - 公式サイト

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