クラゲのこと。

現在では、水母、海月、水月などと表記されるが、古事記において、天地開闢の最初の方に登場する事物で、この表記が使われる。

特に、ウマシアシカビヒコヂノカミアメノトコタチノカミが生まれた時、

次に国ができ、出来立てで水に浮いた脂のようであり、クラゲのようにふわふわ漂っている時に、泥の中から葦が芽を出してくるような勢いによって出現した神

という形容の中で、の前に使われている。 

その二柱に先行するのは三柱の神、アメノミナカヌシノカミタカミムスヒノカミカミムスヒノカミのみで、いわゆる造化の三神。以上の五柱が別天神(ことあまつかみ、別天津神とも)。

造化の三柱には誕生の形容がないのと比較して、上記二柱は極めて具体的な形容がなされている。その中で、上記のように「クラゲ」が重要な位置づけで使われている。

平安時代、すでに骨がないものの形容として、数々の文学作品で使われていることから、古事記編纂時期でも、クラゲを使って、天地開闢を表すのに、それほどの新奇性はなく、普通の人にとっても馴染みやすい表現だったと思われる。

古事記で現れるのはこの天地開闢のこの部分のみ。

【主な登場場面】
天地開闢 「造化の三神」と「神世七代」 イザナギとイザナミの誕生