倭比売命(やまとひめのみこと)

『古事記』に記載のある女性皇族。倭姫命など。

父は第11代垂仁天皇、母はその皇后となったヒバスヒメ

同母兄にイニシキイリビコ、第12代景行天皇オオナカツヒコ、同母弟にワカキニイリヒコがいる。

伊勢の神宮(アマテラス)を祀った。

『古事記』に記載はないが、アマテラスの奉斎は、第10代崇神天皇の皇女トヨスキイリビメから引き継いだもの。トヨスキイリビメとともに、斎宮の起源とされ、巡行先は元伊勢と呼ばれる。最終的に現在の伊勢の神宮(伊勢神宮)に落ち着き、皇大神宮(内宮)を創建、その後、一説に豊受大神宮(外宮)の創建にも関わった、とされる。

『倭姫命世記』には、「生て貌容甚麗、幼て聡明叡知、意は貞潔、神明に通じ給へり」とある。

古事記ではヤマトタケルの叔母として頻繁に登場。

景行天皇に九州の熊襲征伐を命じられた甥っ子のヤマトタケルがやって来て、「叔母ちゃんの衣装を貸してほしい」と頼まれたので、貸してあげる。日本史上初の男の娘ヤマトタケルの女装小道具の提供元となる。その色仕掛けで、ヤマトタケルは熊襲建の兄弟の暗殺に成功。

西国遠征を無事終えて帰ってきたヤマトタケルが、今度は東国遠征を命じられた。その途中、伊勢に寄ったヤマトタケルに、「オヤジ(景行天皇)はオレを殺したがっている……」と泣きつかれる。

草薙の剣とフシギ袋を餞別に送り、ヤマトタケルを東国遠征に送り出す。

東国遠征において、相模で相模国造の策謀で危機を迎えたヤマトタケルは、このフシギ袋と草薙の剣で窮地を脱することになる。

そんなこんなで、ヤマトタケル、何とか東国遠征そのものは終了させて尾張に戻ってきたが、その後、伊吹山の神退治において舐めてかかったためにおっことぬしに不覚を取り、瀕死の重傷を追う。三重方向に逃れ、途上死亡するが、もしかすると優しい叔母ちゃんのヤマトヒメのところに行きたかったのかも。

『古事記』に墓の記載はないが、尾上御陵(三重県・伊勢市)が伝承地で、現在宮内庁により管理されている。

似た名前にヤマトヒコ(倭日子命、やまとひこのみこと)がいる。ヤマトヒメの叔父(父・垂仁天皇の実弟)に当たり、陵墓や埴輪の伝説がある。

【主な登場場面】
義兄に皇后を寝取られた垂仁天皇、反逆され討伐するも子どもは「育てます!」
景行天皇「熊襲、殺っちゃって」 ヤマトタケルが日本史上初の男の娘で暗殺成功
父に疎まれるヤマトタケルが東国へ 相模で危機一髪 叔母ちゃんに助けられる

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【ヤマトヒメを祀る神社】
倭姫宮 - 神宮125社、内宮・別宮 大正年間に設立した初のヤマトヒメを祀る神社
瀧原宮 - 神宮125社、内宮・別宮 ヤマトヒメゆかりの元伊勢の一つ、和魂を祀る
伊雑宮 - 「磯部の大神宮さん」などとも呼ばれる神宮内宮の外宮の一社で志摩国一宮
魚見神社(松阪市) - 船に魚が飛び込んできたことを喜んだヤマトヒメが創建
竹大與杼神社 - 皇大神宮の80末社の一つ、『倭姫命世記』に創建が明記される式内社

櫛田神社(松阪市) - 博多の同名社の元宮、ヤマトヒメ櫛伝承で理容業者が信仰
朝日神明宮 - ヤマトヒメのお告げで創建、往古は広大な神域を有した日本七神明の一社?
朝日神明社(大阪市) - 浪速三神明の東向き朝日神明宮と、皇大神社が明治期に合祀
東京大神宮 - 伊勢の内宮と外宮、造化の三神、神宮立役者を祀る縁結びパワースポット
内宮(岡山市) - 伊勢神宮内宮の創建40年前の創祀、元伊勢「名方浜宮」伝承地

伊射波神社 - 志摩国一宮の海上守護神、御祭神は稚日女尊やイチキシマヒメなど
志波姫神社(栗原市志波姫) - 聖武天皇の頃の創建、伊豆野堰の完成とともに再興・遷座
櫻井神社(安城市) - 桜づくしの地名、三河三白山の一社、一部ファンは嵐神社
島穴神社 - ヤマトタケルがオトタチバナの遺志を継いで創祀、清い風が常に吹く風の神
新屋坐天照御魂神社(西福井) - 崇神朝の創建、藤原鎌足も参詣した歴史ある名神大社

住三吉神社 - 北海道函館、鎌倉時代の創祀と伝わる古社、江戸中期以降に再建、崇敬得る
中津大神宮 - 中津城址に鎮座する「豊前国のお伊勢様」、明治期に伊勢の御分霊を奉斎
南豪神社 - 北海道帯広、売買川に面した地、九州から移住した竹中祥晃が大正時代に創建
売豆紀神社 - 子宝・安産・病気平癒の婦女の守護神、風土記記載かつ式内の古社
安楽山宮神社 - 奈良期創祀の山口六社大明神、近世は大隅随一の規模、2月に春祭と市渡祭

泊神社(加古川市) - 天岩戸の鏡の一つが泊まった地、宮本伊織が寄進した社殿や灯篭
神明大一社 - 伊勢神領、平安後期に伊勢を勧請、戦国期に炎上、岩倉の中本町山車
細草神社(平瀬町) - 戦国時代に勧請・鎮座、元禄再建の本殿、正一位細草大明神
磯部稲村神社 - 光圀も愛でた天然記念物のサクラ、多くの女神で安産の神
男乃宇刀神社 - 兄と弟の宮、ゆかりの五十瓊敷入彦命を合祀、近世は牛頭天王

長倉神社 - 久留部谷の産土神八幡宮、天武帝ゆかりの祠や式内論社を合祀
片山神社(亀山市) - 鈴鹿御前と坂上田村麻呂、交通要衝を守護する鈴鹿大明神
関神社(亀山市) - 鈴鹿山麓七郷総社の笛吹大神社、熊野神社、「関の山」夏祭り
廣幡神社(菰野町) - 菰野藩主が子の全快で勧請した正八幡宮、江田社などを合祀
阿豆良神社 - しゃべらない垂仁皇子、出雲の神を奉斎して創祀、吾蔓大明神とも

元伊勢
元伊勢「弥和乃御室嶺上宮」(みわのみむろのみねのうえのみや) - 大和国三輪山の高宮神社
元伊勢「宇多秋宮」(うだあきのみや) - 大和国、元伊勢の第七、ヤマトヒメの第一歩
元伊勢「佐佐波多宮」(ささはたのみや) - 大和国、元伊勢の第八、ヤマトヒメの片腕の童女
元伊勢「隠市守宮」(なばりいちもりのみや) - 大和国を離れ伊賀国へ、元伊勢の第九
元伊勢「穴穂宮」(あなほのみや) - 伊賀国の二つ目、元伊勢の第十 伊賀国造の献上

元伊勢「敢都美恵宮」(あえとみえのみや) - 伊賀国の三つ目及び最後の地、元伊勢の第十一
元伊勢「甲可日雲宮」(こうかひくものみや) - 伊賀から甲賀へ近江国、元伊勢の第十二
元伊勢「坂田宮」(さかたのみや) - 近江国二つ目で最後の地・米原市、元伊勢の第十三
元伊勢「伊久良河宮」(いくらがわのみや) - 美濃国、瑞穂市や安八町、元伊勢の第十四
元伊勢「中島宮」(なかしまのみや) - 唯一の尾張国、元伊勢の第十五、この後伊勢国へ

元伊勢「桑名野代宮」(くわなののしろのみや) - 元伊勢の第十六、約束の地・伊勢国の最初
元伊勢「奈其波志忍山宮」(なごわしのあしのやまのみや) - 伊勢国、元伊勢の第十七
元伊勢「草蔭阿野国」(くさふかあのくに) - 元伊勢の第十八、唯一の不詳だが実は「関東」?
元伊勢「阿佐加藤方片樋宮」(あさかのふじかたのかたひのみや) - 戦闘も、父娘の絆
元伊勢「飯野高宮」(いいのたかみや) - 伊勢国、元伊勢の第二十、神社・地名譚説話へ

元伊勢「佐佐牟江宮」(ささむえのみや) - 元伊勢の第二十一、伊勢国は「神風と常世の国」
元伊勢「伊蘓宮」(いそのみや) - 元伊勢の第二十二、内宮摂末社の由来譚が多くなる
元伊勢「大河之滝原之国」(おおかわのたきはらのくに) - 瀧原宮、無言の抵抗示した姫は?
元伊勢「矢田宮」(やだのみや) - 元伊勢の第二十四、リアルタイムの聖地「神宮神田」付近
元伊勢「家田々上宮」(やたのたのうえのみや) - 元伊勢の第二十五、内宮摂社の大土御祖神社

元伊勢「奈尾之根宮」(なおしねのみや) - 元伊勢の第二十六にして最後の地、那自賣神社

【関連キャラ】
ヤマトヒメ - 慈愛溢れるヤマトタケルの叔母は初代斎宮
倭姫(ヤマトヒメ) - 歴史人 2013年 06月号 [雑誌]