神産巣日神(かみむすひのかみ)

『古事記』に記載のある神で、造化の三神の一柱。また、別天神(ことあまつかみ、別天津神とも)の一柱。

『日本書紀』では神皇産霊尊、『出雲国風土記』では神魂命。「産霊(むすひ)」は生産・生成を意味する言葉で、高御産巣日神(たかみむすひのかみ=タカミムスヒノカミ)とともに「創造」を神格化した神とされる。

性別はない独神(ひとりがみ)とされるが、造化の三神の中でこの神だけが女神とされる。ということは、その他の造化の三神の二柱、アメノミナカヌシノカミタカミムスヒノカミは男神となる。そうすると、独神という概念そのものが無意味と化すような。

別天津神は全部で五柱であり、造化の三神の三柱の他は、ウマシアシカビヒコヂノカミアメノトコタチノカミ

スサノヲが高天原から追放された際、食物を出してくれたオオゲツヒメを惨殺(ケツとかから食べ物を出したため、スサノヲが激怒)した際、オオゲツヒメの死体から穀物の種などが生じ、それを摘み取ったのがこのカミムスヒノカミ。

オオクニヌシが八十神の迫害で死亡した際、オオクニヌシ母のサシクニワカヒメの依頼により、キサガヒヒメ・ウムギヒメを遣わし、オオクニヌシを蘇生させる。

また、スクナビコナの親。

国譲り後のオオクニヌシの隠居場所、つまり現在の出雲大社において、タケミカヅチに指名された料理長クシヤタマノカミの言葉に、「私の炊き上げる火は、カミムスヒノカミの御殿高く~」と出てくる。本来はオオクニヌシの御殿のはずであり、オオクニヌシ=カミムスヒノカミ、あるいはオオクニヌシを顕彰するようにして、カミムスヒノカミに仮託している形を取っている。

別天津神に次いで生まれるのが、神世七代の十二柱の神々。

なお、『延喜式』巻9・10神名帳 宮中京中 宮中坐神 神祇官西院坐御巫等祭神「御巫等祭神八座(大社、月次新嘗)」の1柱である。

造化の三神
アメノミナカヌシノカミ
タカミムスヒノカミ
・カミムスヒノカミ

別天津神
アメノミナカヌシノカミ
タカミムスヒノカミ
・カミムスヒノカミ
ウマシアシカビヒコヂノカミ
アメノトコタチノカミ

【主な登場場面】
天地開闢 「造化の三神」と「神世七代」 イザナギとイザナミの誕生
追放されるスサノヲ、料理を出してくれた女神を惨殺 そしたら…
殺されるオオクニヌシ パネェ兄ちゃんたちからのいびりに耐えかねて
国譲りの前の国造り オオクニヌシ、スクナビコナと協力してまじめに働く

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【カミムスヒノカミを祀る神社】
三峯神社 - 奇祭「ごもっともさま」で有名、狼信仰がある、ヤマトタケルゆかりの古社
東京大神宮 - 伊勢の内宮と外宮、造化の三神、神宮立役者を祀る縁結びパワースポット
箱根神社 - 7月31日、九頭龍伝説が今に残る、芦ノ湖畔にある源頼朝ゆかりの古社
三尾神社 - 「うさぎ」で有名な卯年生まれの守護神、境内には朝瓜祭の日御前神社も鎮座
天神神社(瑞穂市) - 古い祭祀形態を示す御祭神、元伊勢「伊久良河宮」の伝承地

泉井上神社 - 和泉国名の発祥の地・和泉国総社、秀吉が茶の湯で愛用した和泉清水
御穂神社 - 三保の松原の「羽衣の松」、三保大明神・大己貴命夫婦を祀る夫婦和合の社
總社 - 現代まで姿を維持する全国的に珍しい備中国総社、境内社に式内「野俣神社」も
唐松神社 - 「女一代守神」女性の一生に関わる守護神で、全国から女性の参拝がある社
住三吉神社 - 北海道函館、鎌倉時代の創祀と伝わる古社、江戸中期以降に再建、崇敬得る

御岩神社 - 『常陸国風土記』に記載がある奥宮と式内社の中宮、徳川光圀の崇敬と三本杉
高牟神社 - 尾張物部氏の武器庫に由来する社号、長寿・良縁の霊験ある「古井の清水」
白髭神社(墨田区東向島) - 3年に一度の「ほんまつり」で本社神輿「拾参番」が巡行
松原神社(鹿児島市) - 島津貴久を祀る、相殿の家臣平田純貞は歯の神、例祭に神舞五番
泉神社(宇佐市) - 飛鳥朝創建、霊泉・酒井泉、豊前国の女神が八幡神に酒を奉仕した地

永尾神社 - 「エイ」の尾の剣に鎮座する海神・胃腸病の神、不知火出現の日と同じ八朔祭
名草神社(養父市) - 但馬妙見、出雲大社から譲られた三重塔や、江戸期の社殿が重文
能義神社 - 出雲の四大大神の一つ、弥生期からの住居跡遺跡や円墳などがある風土記記載社
御祖神社(北九州市) - 道鏡の追手に重傷を負わされた和気清麻呂を癒した足立山妙見宮
四山神社 - 古墳に虚空蔵菩薩が降臨、大祭では福銭五円を借りて、次回お礼参りでは倍返し

高知八幡宮 - 南北朝期に創建、山内一豊や歴代土佐藩主の崇敬、明治期から町の氏神に
朝山神社 - 『出雲国風土記』所載の宇比多伎山、大国主命が朝ごとに通った美人姫を奉斎
安達太良神社 - 安達太良山と大名倉山の神々を勧請した明神様、10月秋祭りは太鼓台と神輿
山王神社(長崎市) - 島原の乱とキリシタン改宗、被爆建造物「一本柱鳥居」と被爆楠
淵神社 - 日本・世界の三大夜景・稲佐山山麓に鎮座、宗像三女神を奉斎、福山雅治ゆかり

顕幽神社 - 旧郷社台北稲荷神社、易・五行陰陽を取り入れた教義、北海道むかわ町鎮座
大庭神社(藤沢市) - 近世には天神社・天満天神宮と呼ばれた、式内論社「大庭大明神」
安福河伯神社 - 阿武隈川の神、陸奥亘理郡の四式内社の一つ、本殿は江戸後期の建立
出雲大社山口分院 - 明治期に山口藩士だった末田真穂が大宮司に心酔して御分霊を奉斎
出雲大社新十津川分院 - 入植者が全て教徒、明治末期に創建、道内の「縁結びのお社」

岡田宮 - 神武天皇が東遷途上で逗留した地、北九州黒崎の鎮守、7月に黒崎祇園山笠奉納
葛城神社妙見宮 - 福岡旧椎田町、平安期に妙見三神が降臨、岩丸神楽、ツツジの名所
下立松原神社(白浜町) - 安房に逃れた頼朝が宿泊した小鷹明神、式内社を合祀した式内社
高来神社 - 神武天皇期に創建された高麗社、4月に山神輿、2年に1度の7月に「御船祭」
高岩神社(能代市) - 悲劇と勧善懲悪、清水寺に似た「舞台造り」、小正月に裸参り

蛟蝄神社(利根町) - 水と土の神を奉斎、「立木」の地名は日本武尊の故事にちなむ
伊努神社(出雲市) - 式内四社を合祀、『出雲国風土記』に7社記載の伊農・伊努両郷の神
曾枳能夜神社 - 『古事記』記載社か、境内社含め風土記にも記載される式内の名社
御巫等祭神八座 いわゆる八神殿 - 天皇の健康を祈願する、出雲系などの神々
穴沢天神社(あきる野市) - 創建や由緒は不詳、深沢村鎮守の棚澤天神、式内論社

皇産靈神社(九十九里町) - 平安期の創建、もとの第六天神宮、1月13日の祭礼では関漫才
高見神社 - 北九州市、神功皇后が創祀、明治の官営八幡製鐵所ゆかり「ものづくりの神」
側高神社(香取市) - 香取神宮の第一摂社、御祭神は神秘、1月第2日曜日に髭撫祭
羽束師坐高御産日神社 - 『延喜式神名帳』筆頭、雄略朝創建、鎌足が再建、道真も参拝
人見神社 - 平安中期に鎌倉から勧請、7月22日に神馬奉納、眺望や夜景に定評

阿須須岐神社(綾部市) - 室町期からの大弓神事、志賀七不思議「ミョウガさん」は2月3日
高鉾神社(吉野町) - もとは竜門岳山頂に鎮座、今は旧村社吉野山口神社の境内、旧郷社
登弥神社 - 神武天皇が祭祀、登美連が祖を奉斎、春日を勧請、粥占いで知られる
足立神社(西区) - 孝霊天皇の時代に創祀、合祀されて、氷川社が式内社名に改称
天満神社(橿原市) - 目原川と真目原という禁足地、式内「目原坐高御魂神社」の論社

加治神社 - 河越夜戦で中山氏を救った天神、中山氏の崇敬と地名、中山氏の隆盛
墨坂神社(宇陀市) - 『日本書紀』記載かつ頻出する神、神武東遷の墨坂の地、波動水
墨坂神社(八幡) - 飛鳥朝創建、平安期に八幡を合祀、武田信玄や藩主堀家の崇敬
墨坂神社(芝宮) - 古墳期の宝物が発掘、藩中行事の一環、夏の風物詩・須坂祇園祭
胸形神社(鹿沼市) - 六つの奇跡の井戸を奉斎、女体権現とも、式内「村桧神社」論社

神須牟地神社 - 酒造で知られる住道神、摂津三の宮とも、宮司家からプロ野球選手
國領神社 - 第六天神社と神明社が合併、御神木「千年乃藤」見頃は5月上旬
神垣神社 - 古来より高木村の産土、明治に合祀、昭和に復社、式内石田社とも
葉生田神社 - もとは土田村の産土神「日天八王子社」、合祀して一旦は漕代神社に
菅原神社(上越市) - 境内には古墳群や縄文遺跡、飛鳥朝創建の菅原天神、延喜式内

旦椋神社 - 栗隈の地に祀られた天神、戦国期に焼失・合祀・復興、その際の本殿
泉殿宮 - 平安期の雨乞い所作伝える神楽獅子、日本初のビール工場、大塩平八郎
隅田稲荷神社 - 善左衛門稲荷、八人の僧に助けられた八僧稲荷、万燈神輿の発祥地
サムハラ神社 - 大人気の指輪お守りなどパワースポット、厄や弾を除けられる社
古千谷天祖神社 - 氷川社とともに開村以来の鎮守、明治に村社氷川社の摂社に

杉山神社(桜井市) - もとは山の中腹に鎮座、近年参拝の便向上で遷宮、山の神
天照山神社分祠 - 奥湯河原に鎮座する本社の分祠、教派十三派の神道大成教の本部
大御食神社 - 日本武尊と御蔭杉、妃にちなんだ美女ヶ森、9月に大規模な獅子練り
天佐自能和気神社 - 第7代孝霊天皇の皇子と母を祀る、洪水を治める神「光徳寺さん」
羽鳥御霊神社 - 香取神宮寺に奉納された南北朝末期の銅鐘、江戸前期の庚申塔

神道大教院 - 旧大教院を前身とし、教派神道十三派、神社本庁、國學院大學の母体
天諸羽神社(佐護恵古) - 熊野権現・佐護権現と呼ばれ、佐護唯一の観音堂があった社
高越神社 - 阿波富士とも呼ばれる霊山、忌部氏・役小角・空海より前から?
天野八幡宮 - もとは天野神社、鹿田庄12ヶ村の総鎮守、大正期に八幡宮を合祀
當島八幡神社 - 平安期に宇佐を勧請、南北朝期に式内・多理比理神社を合祀

大江神社(八頭町) - 平安期から続く大江氏の崇敬、因幡二宮とも、式内三座
八所神社(胎内市) - 式内・市川神社の論社、宮中八神殿の神を祀る、江戸初期宮殿
川添神社 - 式内・相鹿牟山神社、「ごみかけの宮」2月に奇祭・五身懸祭
太部神社 - 桃山期の木額、江戸前期造営、旧地に田中神社、昭和まで太梵天王宮

【主な御神徳(ご利益)】
農耕守護、五穀豊穣、縁結び学業・受験合格

【関連キャラ】
カミムスヒノカミ - 国つ神を影から支える神の中の神