大前小前よ~、
家の門の陰に、
ちょっと寄って来いよ~
雨の止むのを待とうよ~

歌い手:穴穂命(あなほのみこと)
出 典:同母兄妹、禁断の情事 皇位を追われ、伊予に流されて心中する兄妹ふたり
章立て:16.允恭天皇

允恭天皇の皇太子・木梨之軽王(きなしのかるのみこ=カルミコ)が、同母妹の軽大郎女(かるのおおいらつめ=カルノ)と禁断のタブー、同母兄妹による合体に走ってしまったために、それが人の口に上り始め、人心を失っていくカルミコ。皇太子として失格となってきたところに、対抗馬としてあらわれたのが穴穂御子。

穴穂御子もカルミコ、カルノの同母兄弟です。二人の禁断の情事について、穴穂はどう考えていたんでしょうか? 後年即位して安康天皇となる穴穂。女を奪うためにいとこを殺害していますので、男とすれば、やはりカルノの美しさには興味があったかもしれませんが。。

ともかく、宮廷に居場所がなくなったカルミコは大前小前宿禰大臣(おおまえこまえのすくねのおおおみ)の家に逃げ入って、兵を整え、戦に備えました。

穴穂御子もこれに応じて、兵を起こし、大前小前の邸を囲みます。その時に歌った歌となります。

文意はどうってことはないものではありますが、軽ーい恫喝。大前小前、縮み上がってしまいます。その大前小前の歌が次の歌

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

大前小前宿禰の家の門のかげに
お立ち寄りなさい。
雨をやませて行きましよう。

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カルミコ - 禁断の近親相姦に走る日本最古の歌人

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