意祁王と袁祁王19.清寧天皇
19-1.意祁王と袁祁王


雄略天皇の子・白髪大倭根子命(しらかのおおやまとねこのみこと)が即位して、清寧天皇です。伊波礼の甕栗宮(いわれのみかくりのみや=奈良県橿原市東池尻町の御厨子神社)で天下を治めていました。

清寧天皇には皇后もなく、子もありませんでした。だから亡くなった時、天下を統べるべき王がいない状態となってしまいました。

そこで皇位を継ぐ者を探したところ、市辺押歯王(いちのべおしはのみこ=イチノベオシハ)の妹でイイトヨノイラツメ(アオミノイラツメ)という方が葛城におりましたので、暫定で天下の統治をお願いしました。

イチノベノオシハは、清寧天皇の父・雄略天皇が一緒に狩りに行った時、天皇に無礼であったとして、雄略天皇にソッコー殺られちゃった人です。

山部連小楯(やまべのむらじおだて)という人が、播磨国(現 兵庫県)の地方長官だった時、ある家の新築祝いに呼ばれ、出かけて行きました。宴もたけなわ、酒が十分に回った時、そこにいるもので順番に舞をすることになりました。

その時、竈のそばに二人の少年がいたので、舞を舞わせることにしました。

少年A「まずはに~ちゃんから、どぞ」
少年B「いやいや、弟から先に」

お互い譲り合ったのですが、それを見た宴の出席者も大爆笑。それでとうとう兄が先に舞って、それが終わった後、弟の番となりました。その時、弟が歌った歌は。

武人であるわが君が~
腰に着けている剣の柄には
赤い色で絵が描かれている~
その紐は赤い布で織ってあり~
赤い幡を立てて遠くを見、
隠れている山の峰の、
竹の根元を切り、
末をなびかすように~
また多くの弦のある琴を鳴らすように~
天下をお納めになった履中天皇、
その皇子の市辺押歯王~
その子どもなんだぞ、
オレたちは~

この歌を聞いた山部連小楯は驚いて、床から落ち転んで、その部屋の人々を追い出し、二人の御子を左右の膝に抱き寄せ、泣き悲しみました。

意祁王(おおけのみこ=兄)と袁祁王(をけのみこ=弟)だったのです。二人の父イチノベノオシハが狩場で雄略天皇に殺された時、急いで逃げ出していた兄弟です。

山部連小楯は早速二人のために仮宮を造って、住んでもらった。そして、使者を大和に派遣し、二人の御子のことを報告しました。

暫定で天下を統べていたイイトヨノイラツメも、二人の甥の生存を聞いて喜び、早速二人を召し出し、大権を二人に返還しようとしました。

※画像は、「意祁王と袁祁王」Google画像検索結果のキャプチャー

【関連キャラ】
顕宗天皇 - 父の復讐に燃え、雄略陵破壊を目論む激情家 
雄略天皇 - 古事記後半の主役は、傍若無人な暴君
仁賢天皇 - 引っ込み思案も冷静な頭脳で弟の汚名を救う

【古事記の神・人辞典】
雄略天皇
清寧天皇

山部連小楯
シジム

イイトヨノイラツメ
イチノベノオシハ
・意祁王(後の第二十四代仁賢天皇
・袁祁王(後の第二十三代顕宗天皇

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