宮主矢河枝比売13.応神天皇
13-3.大山守命と大雀命


応神天皇は、皇子の大山守命(おおやまもりのみこと)と大雀命(おおさざきのみこと)に、「お前たちは子どものうちで、兄と弟、どちらがかわいいと思うか?」と聞きました。

応神天皇縦480px大山守命「兄の方が可愛い(オレもそうだし~) キリッ」
大雀命「……(父上の御心は?っと)……兄の方はもう大きくなっていますから心配いりませんが、弟の方はまだ大きくなっていないので、余計に可愛く思います」
大山守命「……(なっにを~)……」
応神天皇「弟の大雀命の言葉がワシの考えと一緒っ。大山守命、ダメ~」
大山守命「……(がーんー)……」となって、命じます。

仁徳天皇縦480px応神天皇「大山守命はdmdmだから、山と海の狩漁のことを司っておいて。大雀命は正解だったから、ワシが治めている国の政治を取り計らいな。それと、もっと弟の宇遅能和紀郎子(うじのわきのいらつこ=和紀郎子)を皇太子にすっから」

こうして、応神天皇の後の体制を決め、以来、大雀命は応神天皇により忠実になりましたが、皇太子となった和紀郎子の誕生には、応神天皇の一つの恋愛譚がありました。

ある時、応神天皇は、近江国(現 滋賀県)へ行こうとして、宇治の野のほとりに立っていました。そこから葛野の方をはるかに望んで詠んだ歌は。

葛野の方を見ると、ホントたくさん、
家々が見渡せる、豊かな国だな~
(さすがオレの国~、オレ様エライ~)

宮主矢河枝比売(みやぬしやかわえひめ=ヤカワエヒメ)縦480pxそうして、木幡村(こはたのむら)に着いた時、分かれ道で美しい少女に出会いました。

応神天皇「誰の子?」
美少女「丸邇(わに)の比布礼能意富美(ひふれのおほみ)の娘で、名は宮主矢河枝比売(みやぬしやかわえひめ=ヤカワエヒメ)です」
応神天皇「明日、都に帰る時、お前んち寄るから、よろ」

ヤカワエは家に帰って、その様子を詳しく父に語ったところ、その父は、「その方は間違いなく、天皇だ。畏れ多いが、わが子よ、天皇にお仕えするがよい」と言い、自分の家を一生懸命立派に飾り、翌朝を迎えました。

応神天皇がやってくると、ご馳走を差し上げ、ヤカワエに盃を持たせ、天皇に差し上げました。天皇は盃を持たせたまま歌います。

この蟹はどこの蟹だ?
遠い遠い角鹿(つのが)の蟹だ。
横に歩くとどこへ行く~
すくすくとオレっちが進むと、
木幡の道でであった乙女~
その後ろ姿が小さな楯のようにすらりとしてたまらない~
歯並びも実に綺麗だね~
こういう女が是非欲しいと常々思っていた女に、
この宴で、このように向かい合って、チョーハッピー~

そうして、この娘を娶って生ませた子が和紀郎子です。

※画像は、「宮主矢河枝比売」Google画像検索結果のキャプチャー。

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【関連キャラ】
応神天皇 - 自身の登場シーンがあまり多くない天皇
ヤカワエ - 日本で初めてスタイルを激賞された美女
仁徳天皇 - 古事記中盤の主役はやはり女好きの御仁
大山守命 - 徹底的に貶められる仁徳の兄 裏ありソス
和紀郎子 - 応神皇太子は、貴公子然として朗らかな皇子

【古事記の神・人辞典】
応神天皇
大山守命
仁徳天皇(大雀命)

ヒフレノオオミ
ヤカワエヒメ
和紀郎子

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