円野比売10.垂仁天皇
10-3.円野比売


さて、垂仁天皇が愛妻・沙本毘売命(さおびめ=サオビメ)との遺児・本牟智和気王(ほむちわけのみこ=ホムチワケ)が一応しゃべり始めたところで、垂仁天皇の次の課題はサオビメの後任、嫁取りです。

一応古事記ではその順番にはなっていますが、息子の病回復譚と、新しい女を見つけるのとは同時進行だったかもしれません。

垂仁天皇縦480pxサオビメに指名させたように、垂仁天皇は丹波国(現 京都府)の比古多多須美智能宇斯王(ひこたたすみちのうしのみこ)のところの、兄比売(えひめ)・弟比売(おとひめ)。それを含めて、

・比婆須比売命(ひばすひめのみこと=ヒバスヒメ)…サオビメ死後の次の皇后
・弟比売命(おとひめのみこと)
・歌凝比売命(うたごりひめのみこと)
・円野比売命(まとのひめのみこと=マトノヒメ)

以上の四人を宮中に召します。兄比売(えひめ)はヒバスヒメのことだったのでしょう。

このうち、歌凝比売命と円野比売命はブサイクだったので、故郷の丹波に返してしまいました。面食いもいいけど、度量的にどうなの…

邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)と石長比売(いわながひめ=イワナガ)との逸話のリメイクかもしれませんが、ニニギはそれで失敗して、天皇家の寿命を縮めることになったのに、その子孫たちはどうして二の鉄踏む?

円野比売命(まとのひめのみこと=マトノヒメ)縦480pxしかし、垂仁天皇の面食い譚は、ニニギの時のような呪詛付きではなく、地名由来譚になっています。

“ブサイク”と名指しされたマトノちゃんは大変傷つき、恥ずかしさのあまり、丹波への帰途で自殺を図ります。木の枝に首をかけて死のうとしたので、その地が懸木(さがりき)と呼ばれるようになり、現在では相楽、つまり京都府相楽郡(さがらぐん)一帯です。

自殺はできずに、その後進んでいくと、結局深い淵に落ちて亡くなってしまいました。そのため、その地を堕国(おちくに)と呼ばれるようになり、弟国(おとくに)となり、現在の京都府乙訓郡(おとぐにぐん)一帯です。

あからさまな呪詛はありませんが、次で垂仁天皇は自分は登場せずに、常世の国に人を派遣して、その使者が戻ってくると亡くなっていた、というオチがついています。

※画像は、「円野比売」Google画像検索結果のキャプチャー。

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相楽神社(木津川市) - ブサイクとして垂仁天皇に追い返された姫が首を吊った地、八幡宮

【関連キャラ】
マトノ - 垂仁天皇にブサイクと言われ自殺未遂
垂仁天皇 - 皇后をNTRされ、救われない姫を誕生させる

【古事記の神・人辞典】
垂仁天皇
ヒバスヒメ
オトヒメ
ウタゴリヒメ
マトノヒメ


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