海幸彦と山幸彦7.海幸彦と山幸彦
7-1.兄にいじめられる山幸彦


邇邇芸命(ににぎのみこと=ニニギ)と木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ=サクヤ)の、疑惑の晴れた子どもたちの中で、長男・火照命(ほでりのみこと)は海でたくさん魚を捕るから海幸彦(うみさちひこ)と呼ばれ、三男・火遠理命(ほおりのみこと)は山でたくさん獣を捕るから山幸彦(やまさちひこ)と呼ばれました。

次男・火須勢理命(ほすせりのみこと)は、登場しません。

ある日、弟の山幸彦は、兄の海幸彦に曰く。

山幸彦「ねえ、にいちゃん。僕たちの獲物を捕まえる道具を取り替えっこしようよ」。
海幸彦「ヤダ」
山幸彦「……」

火遠理命(ほおりのみこと=山幸彦(やまさちひこ))縦480pxそれでも山幸彦はあきらめず何度も頼んだところ、やっと一つだけ道具の交換に成功しました。喜んだ山幸彦は、さっそく借りた釣り竿を使って海で魚釣りを始めます。しかし一匹も釣れません。それどころか、釣り針を海の中に落としてしまったのです。

山幸彦「兄ちゃん、ごめん。釣り針落としちゃった」
海幸彦「ダメ、絶対あの釣り針を返せ」
山幸彦「……」

そこで山幸彦は自分の剣を折って、500本の釣り針を作り、それを兄・海幸彦に返そうとしましたが、兄はどうしても受け取りません。そこで、今度は1000本の釣り針を作り、兄に渡そうとしましたが、やはり兄は受け取りません。

海幸彦「お前が失くしたあの釣り針じゃなきゃ、ダメ」
山幸彦「……」

火照命(ほでりのみこと=海幸彦(うみさちひこ))縦480px山幸彦は途方に暮れて泣きながら海辺にいたところ、塩椎神(しおつちのかみ)がやってきて山幸彦に訊ねました。

塩椎神「どったの?」
山幸彦「かくかくしかじか、にいちゃんが許してくれないよ~泣」
塩椎神「私がいい方法を考えてあげました」

そう言うと塩椎神は、竹で編んだかごの船を作って、それに山幸彦を乗せました。

塩椎神「今からこの船押し流すけど、流れに乗っていれば、そのうち道が見えてくるよ。その道を進んでいくと、魚のうろこのように作られた宮殿があるよ。その宮殿は、綿津見神(わたつみのかみ=ワタツミ)のお家だよ」

綿津見神(わたつみのかみ=ワタツミ)縦480px続けて言います。

塩椎神「その宮殿の門の近くに、井戸があって、そこに神聖な桂の木があるから、その木の上に座ってなよ。そうすると、ワタツミの娘がそれを見て、何か良いこと考えてくれるはずだよ」
山幸彦「……」

と、それはそれは懇切丁寧に教えてくれました。出木杉~ もっ、もちろん、あの昔話(浦島太郎)の元ネタなんでしょうね。

天皇家の系譜の話なのに、いきなり浦島太郎ばりの、海幸彦と山幸彦の話が出てくるので、「どんなつながり?」と最初は思いましたが、これもしっかりとした天皇家の系譜でしたね。古事記にも明記されていますが、これは山幸彦・ヤマトが海幸彦・隼人を屈服させるお話にもなっています。

※画像は、「海幸彦と山幸彦」Google画像検索結果のキャプチャー。

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山幸彦 - 神武の祖父は竜宮城に行く、浦島太郎?
海幸彦 - 弟と竜宮城勢力に、屈服させられる隼人
ワタツミ - 竜宮城の王で山幸彦のドラえもん的存在

【古事記の神・人辞典】
海幸彦
山幸彦 
ツオツチノカミ
オオワタツミ - 神産みで生まれた、ワタツミと同体とされる神

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