因幡の白兎4.オオクニヌシ
4-1.因幡の白兎


大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)にははじめ、たくさんの兄弟がおり(八十神)、それらに家来同然として扱われているほどだったので、出雲の支配者には程遠く、その可能性も最初は極めて小さいものでした。

そうした中で、オオクニヌシにとって出世の端緒となったのが、有名な「因幡の白兎」という説話です。オオクニヌシは時々名前が変わって登場する場合もある(オオクニヌシの名付け親は、スサノヲ。また今度紹介予定)のですが、面ド…ではなくて、混乱を招かぬよう、オオクニヌシで統一していきます。

因幡(鳥取県東部)に八上比売(やがみひめ=ヤガミ)という美しい女神が住んでおり、近隣の男神のあこがれの的で、誰もが結婚したいNO.1女神という存在の方でした。

オオクニヌシの兄弟連中もご多分に漏れず、たくさんの兄弟連れ添って、ヤガミに求婚に行くことにしました。オオクニヌシを従者のようにして。

八上比売(やがみひめ=ヤガミ)縦480pxやがて、一行(と言ってもオオクニヌシはたくさんの荷物を持たされ、だいぶ遅れていたのでこの時おらず、兄弟連中だけ)は気多の岬(けたのみさき=鳥取県気多郡の日本海に突き出た岬)に着きましたが、そこに毛の全くない裸のウサギがふせって泣いていました。

兄弟連中(一応、神様だが)「そこのウサギ! 体が痛いのなら海の水を浴びてから、風に吹かれて、高い山の上で寝ていると治りやすいぞ」

と、平気の平左で嘘を教えました。

愚直なウサギはその通りすると、傷は悪化するばかり。さらに痛がっていると、今度は遅れてきたオオクニヌシが通りかかります。

オオクニヌシ「どったの?」
ウサギ「隠岐の島からここまで、ワニたちを騙して海、渡って来たけんども、最後に騙したことがワニたちにばれて、ワニ怒らせて、身ぐるみはがされちゃった。テヘッ」
オオクニヌシ「……(自業自得じゃん……)」
ウサギ「ここで痛がっていたら、神様方が治し方教えてくれて、その通りしたんだけんども、なんか治んないどころか、さらに痛くなって……」
オオクニヌシ「(教わったという治療方法を聞いて)……(でたらめじゃん。兄者たちもむごいな~)……」

大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)縦480px見かねたオオクニヌシが本当の治療法を教えて曰く「あそこの河に行って、真水で体を洗いなさい。それからそこに生えている蒲(がま)の花を取ってきて、黄色い花粉をまき散らして、その上をごろごろしていなさい。そうすれば治るよ」

ウサギが言われた通りにすると、傷は見る見るうちに治っていきました。資料に現れている、日本初の医療行為はオオクニヌシ! 医療の神様でもあるんですね。

感謝したウサギ曰く「さっきの神様たち、嘘ついていたんだ。奴らはヤガミと結婚なんかできないと思うよ。見た目家来みたいだけど、あんさんがヤガミと結婚することになると思うよ」

さてさて、結果はどうなることやら。

簡単に結果を言ってしまうと、そう簡単な話ではなかったが、オオクニヌシはヤガミをゲットすることになります。予言が当たった、ということで、このウサギ、やはり神様として、今でも祭られているとさ。

※画像は、「因幡の白兎」Google画像検索結果のキャプチャー。

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【古事記の神・人辞典】
オオクニヌシ
ヤソガミ
ヤガミ
因幡の白兎

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